第7話
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隣で転げ回りながら青春の痛みとやらを謳歌している彰彦を横目にしながら、僕は考えていた。
そのひとは、弱いようで強い。
そのひとは、人を差別しない、区別もしない、裏表もない。
誰かのありのままを受け入れることができて、みずからもありのままであろうとしている。
つらいことがあっても、逃げないで耐えることができる。
でも、そのひとは不器用だから。
だから、、、
いつか、神田が彰彦に向かって語っていたという言葉だった。僕の想像の中の中学時代の神田が、僕に向かって再び語ってくれていた。
僕は、そんな大それた人間じゃないよ。
君がいなかったら、きっと友達すらできなかったにちがいない。
今でも、相変わらず、だらしのない生活で、夏休みは退屈を持て余し、体育の授業じゃボールが激突しまくる始末だ。
弱くて、不器用で、どうしようもなくて、、、
でも、でも、
こんな僕でも、見てくれている人がいたんだ。
ありがとう。
ありがとう。
僕も、君を、、、
放課後。
「あれから考えたんだけどさ、神田さんに手紙を書こうと思うんだ」
「はあ?またアナログだなあ。LINEとか、まあ、おれも知らんから、誰かに聞くとかすればいいんじゃないのか」
「そこは神田さんのキャラ的に、直筆の手紙が合うと思うんだよ。宛先は、まあ、とりあえず書いてから考えよう」
「おまえにしてはやけに積極的だなあ。ま、いい事だと思うぜ。ポジティブなのは」
「うん、僕も神田さんの事を好きになったんだ」
「今になって! おまえ、本当に鈍感だな、そんなんだから神田も何も言わずに転校していくんだよ」
「モテないやつはモテなさすぎて、そういうのに鈍感になるんだよ! 仕方ないだろ?」
「はあ、まあ、頑張れよ」
「だって、このまま一生会えなくなって、永遠のせつなさとやらに悶え苦しむのなんて嫌だろう?」
「それも、そうだな、ファイトだ、友よ、ってな、ははっ」
ふたり、笑いながら、歩いていた。
拝啓。
神田さん、元気ですか?
女の子に手紙なんて書いた事ないから、なにを書けばいいのか、正直検討がつかないけど、そこは目を瞑ってやってください。
まずは、ありがとうと言わせてください。
君のおかげで、僕は今もこうやって元気に学校生活を送れているよ。僕の側には、いつも彰彦がいて、毎日楽しくやってるよ。
彰彦は、僕の友達だ。
今なら、堂々と言える気がするんだ。
彰彦は、僕の大事な大事な友達で、、、
心の底から親友といえる、いいやつなんだよ。
ここまで、書いて、後は何を書けばいいのか、僕にはさっぱりわからなくなってしまった。
でも、神田さんはまだ生きていて、僕には頼りになる親友もいる。夜が明けたら、明日が来て、人生はまだまだ続いていく。手紙はじっくり書けばいい。最高に感動させる手紙を書いて、神田さんを泣かせてやるんだ。そう思いながら、僕は一旦筆を置いた。
了
9月1日、アイスクリーム、彼女は転校した 眞水清輝 @mamizu77
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