第4話【ドラゴン勇者の世界】
「教えてやる!勇者になるのは簡単だ!」
「「「お?」」」
私、コヨミちゃん、サトルくんの三人は、作品に入るや否や教室で授業を受けていた。
「どうした、その反応は?もう一度言ってやる!勇者になるのは簡単だ!!」
「あの・・・・・・。これは、どういう状況っすか?」
サトルくんが教卓の前に立つ男性に質問をした。
「俺の名前は『サクラガワ』。君達三人を、立派な勇者にする為に呼ばれた男だ」
「え・・・・・・?勇者にするって?」
「流石は『全国統一勇者模試』で『勇者偏差値30』以下なだけのことはあるな。馬鹿者・・・・・・!君達は三日後に控えた『クラス分けの儀』で勇者に選ばれたいんじゃなかったのか!?」
「あ〜・・・・・・、そういうことか。いや、そうでした、すいません」
伊達に何度も、私と一緒に異世界に来ていない。サトルくんも【三日後に職業を決める何かがある→そこで勇者になる為の予備校的な場所がココ→私達はそこに通う生徒】という状況を瞬時に理解したようだ。
『全国統一勇者模試』とか『勇者偏差値』などと、意味不明な用語が出ても全く動じなくなったサトルくんとコヨミちゃんを見て、私は心強いと思うと同時に、変な世界に染めちゃったなぁと、申し訳なく思った。
「センセー!勇者って、三日でなれるもんなんですかー?」
「コヨミくん・・・・・・。なれるか?じゃなくて、なるんだ!しかも、なるからには最難関・・・・・・東ゴルゴン大国の勇者、略して『東大勇者』だ!」
「と、東大勇者・・・・・・!?」
「そうだ、君たちなら必ずなれる!・・・・・・当然、滑り止めで、私立勇者も受けてもらうがな」
私立勇者とは?なんていう質問をしていたらキリがないので止めといた。
「早速だが、勇者に選ばれる為に必要な要素は何か分かるかな?サトルくん」
「勇気!」
「帰れ・・・・・・!一つ目は、基礎体力、剣術、魔術などを総称した【武勇】!二つ目は、何者にも屈しないという【意志】!三つ目は、生まれ持った資質・・・・・・、つまり【家柄】だ!」
少し残念そうな顔をしながらサクラガワ先生は続ける。
「だが、残念なことに、君たちはこれらの要素を何一つとして持ち合わせていない。・・・・・・しかし、安心しろ!君たちが目指すのは正攻法の勇者では無く、裏口勇者だ!」
「う、裏口勇者・・・・・・!?」
「そうだ、君たちなら必ずなれる!・・・・・・時にサトルくん。裏口勇者になる為に必要な要素は何か分かるかな?」
「金!」
「帰れ・・・・・・!必要なのは、圧倒的【思い込みの力】だ!」
私たち三人が、どういうことだろう?という顔をしていたのを察して、サクラガワ先生は解説を始めた。
「いいか?例えば、ヒマリくん。再び、現役の勇者でクラス分けの儀を行った場合どうなると思う?」
「勇者になる・・・・・・ですか?」
「正解だ。当然だろう、勇者そのものなんだからな。次に、自分は勇者だと勘違いしている馬鹿でクラス分けの儀を行った場合はどうなったと思う?サトルくん」
「勇者になった?」
「帰れ・・・・・・!その通り、ソイツは勇者に選ばれてしまった」
「????」
「我々が狙うのはソコだ・・・・・・!つまり、君たちには残り三日で、自分は生まれながらに勇者!そして、現役の勇者なのだから勇者に選ばれて当然だ!と、思い込むまでになってもらう」
「そんなことが・・・・・・」
「可能だ!その為に私が呼ばれたのだからな!もう一度言おう・・・・・・・!君たちは勇者に・・・・・・いや、東大に入れる!!」
私たちの熱い三日間が始まった。
【一日目】
過去の英雄の伝記を読んで、自分自身を主人公に投影しろとのことで、漫画をずっと読まされた。内容は、ダ◯の大冒険そのものだった。
コヨミちゃんは、ずっと寝ていた。
サトルくんは、感動して号泣していた。
【二日目】
サクラガワ先生が食あたりで欠席、一日自習になった。
コヨミちゃんは、ずっと寝ていた。
サトルくんは、◯イの大冒険を読み返していた。感動して号泣していた。
【三日目】
サクラガワ先生の食あたりが悪化。「勇者に必要なのは心だ!」などと、訳の分からない言葉を残して入院した。
私は、サクラガワ先生の塾のレビューにBAD評価を付けた。
コヨミちゃんは、街へ観光しに行った。
サトルくんは、ダイ◯大冒険、五周目に突入。感動して号泣していた。
【クラス分けの儀、当日】
「遂に来たな、この日が」
私たちは、クラス分けの儀が行われるという教会にやって来た。
「暇だったから私も来てみたけど、これからどうすればいいの?」
「アッチを見て、コヨミちゃん。丁度やるみたいだよ」
【ワタリちゃんMEMO】
・クラス分けの儀、3ステップ!
1.水晶玉に手を当てる。
2.水晶玉の色が変わる。
3.占い師のお婆ちゃんから、剣士、魔法使いといった判別されたクラスを聞く。
簡単だね!
「へ〜!面白そう!早速、行ってくるね!」
「じゃあ、私も」
「ちょ・・・・・・!待てよ、お前ら!まだ、サクラガワ先生からの手紙を読んでないだろ!?」
止める間も無く、ヒマリとコヨミは離れて行った。
「・・・・・・ったく!仕方ない、俺だけで読むか」
手紙には、こう書いてあった。
『儀式の場に、一緒に行ってやれなくて本当にすまない。先生は依然として悪魔(腹痛)と闘っている。だが、教えてやれることは全て教えたつもりだ。では、三人が勇者に選ばれることを心より願って』
「くっ・・・・・・!任せて下さい・・・・・!俺、絶対勇者になりますから・・・・・・!」
・・・・・・・・・・・・
「お疲れー!ヒマリちゃん、見て見てー!私、パン屋さんだって!可愛い〜♡」
「お疲れ様、私は公務員。・・・・・・後はサトルくんだけだね」
「お。噂をすれば、アレがサトルくんじゃない?」
見てみると、正に今、水晶玉に手を置くところだった。
「フェッ、フェッ、フェッ・・・・・・。お前さんが、本日最後じゃえ」
「よ、よろしくお願いします!」
「ほ〜!見たことが無い色じゃ・・・・・・。どれどれ、最初の文字は『ゆ』・・・・・・、じゃな」
「ゆ・・・・・・!?(勇者きたか!?)」
「次は『う』じゃ・・・・・・。ゆう・・・・・・・・・ヒィィィッッ!!!」
「え・・・・・・!?」
突然、占い師のお婆さんが水晶玉を投げ飛ばした。
「ど、どうなされましたか・・・・・・!大婆様!」
ゾロゾロと儀式の関係者達が集まってくる。
「こ、此奴の占い結果が・・・・・・!耳を貸せぃ!」
「ええ、分かりました・・・・・・。ふむふむ・・・・・・・・・ゲッッ!!!?」
「なに!?なに!?なに!?」
占い師の言葉を聞いた男性の顔が、修羅の様に変わっていく。
「この男を摘み出せ・・・・・・!!」
「ハッ!」
屈強な警備の人達が、サトルくんを捕まえる。
「え!?ちょっ・・・!え!?」
「とボケた顔をしていて、何という恐ろしい奴だッ!去ね!」
「ねぇ!何だったの・・・・・・!?おーい!教えて!おーい!おーい!おーい・・・・・・」
そんな叫び声と共に、サトルくんは何処かへと連れて行かれた。
異世界トラベラーヒマリちゃん はるふく @harami1379
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