「夢を持つことを強制されている」この時代に

「未来の自分」「進路希望」「一人で悩まないで」
大人が簡単にポイポイと持ってくるお題。
もしかするとそれらは、若い人には「聞こえがいいことばかり言わないで」と思われているのかもしれません。
未来は可能性に満ちている、という言葉は未来は何も決まっていないという言葉の裏返し。
それをしっかりと見つめることは、とてつもない不安と空虚な感覚を味わうことなのでしょう。
作品では主人公はそのために死ぬことさえ考えてしまうほどです。
この切ないほどの不安が作品には描かれているだけでなく、それに対する一つの答えも描かれています。
ありきたりな言葉ではなく「未来泥棒」という素敵な言葉で。
未来が白紙ではなくなったこと、それ自体に意味がある。
そんな素敵な短編でした。