洞窟
園内晴子
洞窟
暗い洞窟で、ずっと探しものをしていた
小さなスコップを持って、ずっとひとりで探しものをしていた
その探しものがなにかは、知らない
どうしてここまで頑張っているのかも、分からない
それでも手を止めず、必死に土を掘り返していた
何ヶ月も、何ヶ月も
土からは、時々石が出てきた
初めの頃に出た緑色の石は特に綺麗で、しばらく大切にしていた
けど、それももう土の中に返してしまった
私の探しもので鼻息がして
そのうち掘るのも大変になってきて、やめようと思った
諦めて、あの緑の石を探し直そうと思った
掘り返した土の山にスコップをさし、どけてゆく
すると、その土に行き着く前に、隙間から光が零れているのに気づいた
掘り進めると、土にまみれた別の石を見つけた
一般的な卵くらいの大きさで、私はつまむようにそれを持った
緑のような、赤のような、見たことの無い光をうっすら放っていた
石自体もたくさんの色でできているようで、磨けば美しく輝きそうな気がした
ひとつ瞬きをする
あなたは誰、と思うより先に、どこにいたの、と声が漏れた
こんな真っ暗な土の中に、こんな小さな光を持つ石がいたなんて
しかも、一度は掘り起こした土の中に、だ
疲弊した心が、緩やかに解れてゆく
掘り返したままの土からスコップを抜き、石を手に包みながら洞窟をあとにした
外からは、眩い光が差し込んでいた
洞窟 園内晴子 @always_enjoy
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