海から何かでてきた

かいとおる

       海から何かでてきた

     


                       かい とおる


『毎日を生きよ、あなたの人生が始まった時のように』 

                     ゲーテ・・・らしい



 研修所の門を出て、とりあえず近くの海岸の方へ歩き出した。うちの班の全員がほとんど固まって俺の後をついてくる。あれほど、あとは自分たちでやれ、と言っておいたのに。

 少し遅れてアヤノさん率いる女子の班がこれもまた羊のように肩を寄せ合って所在なげに歩いて来る。なんでこんなことを引き受けたんだろう、と今更ながら後悔した。



 会社の新人研修に今回集められたのは高校を出たての初々しくて騒々しい連中ばかりだ。たまに俺のような20代も半ばの男がいると有無を言わさず班長ということになる。40人程のクラスが6人ずつの班に分かれて、二段ベッドと机が詰め込まれた窮屈な部屋で寝起きする。夕飯を食って風呂に入り自習時間が過ぎるとあとはすることがなかった。お互いの顔や尻を眺めて過ごすしかない。


「ねえ、先輩・・」タケオが話しかけてきた。こいつだけは二十歳で、世間を少しは知ってます、という薄い膜を顔に貼り付けている。

「先輩じゃないよ、言ったろ?」

「じゃ班長・・」

「・・・なに?」

「ここ、昔刑務所だったって噂本当ですか?」

「さあ、どうだろね」

「オレ、似たようなとこ知ってるんですけど、風呂場がそっくりなんですよ」

「う~ん、合宿所なんてこんなもんじゃない?」

「ぼくら囚人なんだぁ!」と、他の奴らが騒ぎ出す。

「おれは似たようなトコも知らんけど、確かに普通の銭湯とは雰囲気違うよな」

 面白いから俺も乗っかることにした。薄汚れたコンクリートの3階建て、出入り口は狭く、どこが玄関なのかもよくわからない、比較的新しい食堂や女子寮は明るく開放的だが、全体的に狭苦しくて圧迫感がある。教室は高校のそれとほとんど変わらない。だが、当然のこと雰囲気が違う。指導教官の愛想の良さが不自然に感じてしまうのはその目つきの所為だろう。かれらの手元には番号と名前とそれぞれの所属先が載ったファイルがあり、頻繁に何かが書き込まれる。俺たちはお互いに出所の同じ給料を貰う社会人だ。だけど、彼らにとって俺らはまだトイレの躾もできていない子犬のようなもの。組織の成り立ちやルール、【良識】や【常識】といった雰囲気作りが授業の大半を占める。【有能】さを競うレースはもう始まっているのだろう。

 ようするにしっかり管理されている気がする。門限が厳しいのはガチだが、起床から就寝に至るまで所内アナウンスとそれっぽい白々しい音楽で即される。いや、朝は中間管理職候補生たちの威勢のいい掛け声で目を覚ますこともある。彼らは自主的に起床時間前に早起きをしてきちんと整列したまま運動場をぐるぐると走るのだ。おれらが眠い目をこすりながらぞろぞろグラウンドに集まってくる頃には、朝礼を指揮するために高揚した声で指示を出す。彼らの紅潮した頬をぼんやりと眺めながら体操をする俺の手足は何処か遠くにあるようで、おもわず電信柱の上の鴉を捜す。これは現実なのだと確認するために。鴉にとっての現実のなかにおれは生きていたい。


「そうスよね、牛か馬の洗い場みたいスよね!」

 タケオが嬉しそうに言う。

「牛か馬の洗い場も知らんけど、屠殺場に急かされてる気はするなあ」

 広く頑丈そうな風呂場を思い浮かべながら俺は言った。ざらついたコンクリートの床は滑らなくていいが、いかにも寒々としている。真ん中に据えられた大きな浴槽は階段状になっていて、降りてゆくとかなり深い。そこからまた向こう側に上る階段が続く。浴槽の両側の壁側には小さな鏡と洗い場がずらりと並んでいる。

「ぼくは好きですよ、ゆったりしてて」

 サクマが眼鏡を拭きながら誰に言うともなく呟く。

「えェー、市営プール並みに混んでるぜ?」

「空いてる時間にいくんですよ」

 サクマはひょろりとした身体を二段ベッドの上から覗かせて、

「ところで班長、こないだの店もう一回行きません?」

「おっ、いいね」タケオがすぐに反応する。

「ぼかぁいいです・・」

 コンドーは一人机に向かっている。別に勉強しているわけではなく、単にそこが落ち着くらしい。

「あれェ、なんでよぉ・・でもぼくももういいかなぁ、なんか・・その・・どうしようもないっていうか」

 モリモトが窓の外を眺めながら言う。背の高い木々の向こうの夜はまだ浅く、街の灯りも瑞々しい。

「オレはもういっかい挑戦したいかな・・」

 ベッドの上に胡坐をかいたヤギが目をつむったまま言う。高校球児だった彼は中途半端に伸びた坊主頭が落ち着かないらしく、いつも髪をさわっている。

「挑戦ってお前・・・」

 タケオが呆れ顔で嘆く。ベッドに腰掛けている彼は枕を抱いている。枕を抱いたまま眠る。


 数日前、近くの商店街にあるノーパン喫茶へみんなで行った。そんなものがまだあるんだ、と驚いたが、見つけてきたタケオに言わせると、じつに(まっとう)な店らしい。彼は一人で入る勇気がなかったらしいが、厚いガラス戸越しにしっかり確かめたという。そこで、

「ねえ班長、連れてってくださいよぅ」

と、なった。俺だって未知の領域だったけど、そこは見栄を張ることにした。

「しょうがねぇなぁ」

 5人引き連れて、夕食後の自由時間に外出許可を得た。班員の親睦を図るため・・嘘じゃないだろう。

 地下鉄の駅前から続く細長いアーケードは思いのほか混みあっていた。夕方ということもあって、仕事帰りのサラリーマンや近くの私立大学の学生らしいのが総菜屋や定食屋や居酒屋の前をうろうろしている。郊外の商店街らしく店の人も客たちもどこか脱力していて、居心地は悪くない。

 そんな中にぽつんと例の店はあった。厚いどっしりした木枠のドアに暗めのステンドグラスで描かれたギリシャ風の女性と花々、店の前に控えめに置かれたぼんやりしたスタンドには『Flowers』という紅い文字、なるほど。

 そこだけが通りの雰囲気に対して慇懃ながらもしたたかに背を向けている。圧倒的な日常性のなか、何か比重の違う非日常が漏れ出していた。おそらく夜が更けるにしたがってさらにその存在感は重みを増すのだろう。通りを行き来する人々も、無関心を装いながら意味ありげに横目でちらりと視線を向ける。彼らの含み笑いは店の前で戸惑っているみすぼらしい若者たちにも向けられている。きっと見慣れた光景なのだ。4人はジャージ姿だし、俺は染みの浮き出たジーンズにトレーナーだった。タケオだけがそこそこ小綺麗なシャツ、デッキシューズまで履いている。だぶついた棉パンはご愛嬌というもの、彼は偉い、尊敬に値する。

「入ります?」サクマが怖気づいて言う。

「あたりまえだろ!」タケオは俺を見る。

「・・うん、まあ、そうだな」

 ドアは拍子抜けするほど滑らかに内側に開き、照明を落としたその店のなかは意外なほど広かった。


 一瞬まだ開店前なのかと思ったほど、人の気配がない。隙間風のように細く漂うジャズピアノが一音一音粒だって聞こえる。かつては落ち着いた雰囲気のクラシックな喫茶店かバーだったのかもしれない。板張りのフロア、壁際に四つ並んだボックス席はすべて濃い茶色の革張りだった。光源のはっきりしない間接照明は低い位置にあって、ぼんやりした天井は、なにか入り組んだ木組みと配管で遠近感を狂わせる。

 頑丈そうな木のカウンターが、入口に立ち竦む俺の目の前で湾曲し、暗い質感を湛えながら奥へとまっすぐに伸びていた。そこの紅い暗がりにいた人影に気付いたとき、俺は動けなくなったのだ。少女が一人、こちらを向いて座っていた。長い髪を胸まで垂らした彼女は、上半身に細いチョーカー以外何もつけていない。前髪を目の上で切り揃えた少女の表情はよく判らなかったが、およそ愛想というものは伝わってこない。


 と、突然照明が少し明るくなると、カウンターの内から炭をこすり合わせたような掠れた声がした。

「あらぁ、いらっしゃい、ほら、エミちゃんご挨拶は?」

 咄嗟に思い浮かんだのはジャニス・ジョップリンだった。枯れ葉色の縮れっ毛が腰まで伸びて、捉えどころのない身体をゆったりとしたエスニック風な布や、なにかじゃらじゃらしたガラクタで包んでいる。いまにもーあなたのママになってあげるーと目を細めて挑発してきそうだ。だけどジャニスの瞳ほどにはその表情に繊細さがない、よく見ればその顔や手に、しゃがれた声と同じように傷跡めいた皺が刻まれている。

 『エミちゃん』は椅子からすべり降りてぺこりと頭を下げた。ベルト付きのぴっちりした超ミニから伸びる黒いストッキングの脚、エナメルの赤い靴の紐が細い足首に巻き付いている。

「あらまあ、すみませんねぇまだ慣れてなくて・・それで何人様?」

 それほどスマナソウには見えなかった。気が付くと俺の後ろから5人がそわそわして覗いている。だいたいどんな顔つきをしているか想像がついた。

「・・6人」

「どうぞ入ってらして、お好きな席へ・・まだだぁれもいないしね、女の子ももうすぐみんな揃いますよ」

 年老いたジャニスに導かれて、おれらはぞろぞろとそのお菓子の家に踏み込んだ。できるだけ通りから遠ざかるように一番奥のボックス席まで逃げ込んでいた。


 少女が銀色のトレイに六つの小さなグラスとメニューをのせて持ってきたとき、誰もまともに顔を上げて彼女を見ることが出来なかった。フロア側の端に座っていた俺でさえ目の前で幼さに震える乳房をあっけにとられて眺めるだけで、その表情を窺う余裕はなかった。照明の所為で薄赤く染まる上半身にあっても、そのふたつの丸い隆起には白々ときめ細やかな地肌が浮かび上がっている。まるで内側に白色電球でも埋めているかのように、なにかしら苦痛に似た青白いものが滲んでいる。       

 無言のまま毅然と真っすぐに歩き去る彼女をおれらは惚けて見送った。そのほっそりとした冷ややかな背中には、どうしても抑えきれない泡立つ嫌悪感があった。

 目の前に半透明のグラスが置かれている。微妙に歪んだ厚いガラス製で、なかの水と共にゆっくりと揺れているような錯覚を起こさせた。掌に包み込んで口にあてるとぬらりと唇を押してくる。次の瞬間、刺すような冷たさに目を覚まされ、からりと氷が鳴った。


「・・ちょっと班長、これまじスカ・ ・」

 メニューを眺めていたモリモトが入ってきたドアを名残惜しそうに振り返りながら、俺に厚い皮の冊子を差し出してきた。

「なんか、適当な値段ですよね」とため息をつく。

 それほど品数があるわけじゃなかった。観念して唯一注文できそうなものを選ぶ。メニューを掲げて女の子を呼んだ。

「おい、おまえら、顔を上げろ」


 一杯二千五百円のコーヒーを目の前にしておれらはむしろ開き直った気分になっていた。大柄の花をあしらったコテコテのカップに対しての反発もなんとなくあったかもしれない。ようやく余裕をもって周りを見渡せるようになった。まだ開店して間もないらしく、あちこちにラッピングされたランの鉢が置かれている。魔女のばあさんはカウンターのなかだ。眉をひそめてなにやら真剣に自分の手元を見ている。今夜の獲物の調理レシピでもメモしているのか。少女は先ほど腰掛けていた椅子の傍らで所在投げに髪をいじっている。目が慣れてくれば普通の喫茶店とさほど変わりはない。ただ少女の白い背中が、バカ高いコーヒーを甘くする場所なのだと思い知らされる。それがタブーででもあるかのように、誰も銀色のシュガーポットや陶器製で淡いピンクのミルクピッチャーに触ろうとしなかった。

 冷め始めたコーヒーをちびちび飲んでいると、どこからともなく華やかな笑い声が聞こえてきて、奥の暗がりから数人の女の子たちが縺れ合うようにして現れた。ボッチチェルリの春を思わせるといったら言い過ぎだろうとは思う。だけど、こんなにいっぺんに女性の裸の肩や胸や腕を見せつけられると、虚構と現実が入り混じって感覚がおかしくなる。いったい何処に迷い込んだものだろう。予想に反して皆、少女ほどではないにしろ若くてスタイルもいい。あきらかに自分の容姿に自信をもっている。   ストッキングと短いスカートだけの姿なのは一緒だが、色も形もそれぞれに工夫しているらしい。髪型も髪の色もそれこそ花のように様々だ。急に珈琲の苦さが喉を刺激してきて、思わずコップの水に手を伸ばすと、他の連中も同じように不安な渇きに襲われているらしく、間抜けな顔を見合わせながら込み上げる痛い笑いを抑えている。

 春の妖精たちはこちらの動揺を見透かしたようにくすくすと口元に手をやり、お互いの髪や肩に触り合っている。

「さあさあ、みんなパーティータイムよ!」

 ジャニスが手をたたきながら叫んだ。途端にひらひらと浮遊感のあるユーロビートが店内に溢れる。床を這うビートに煽られて女たちが天を仰ぐようにして踊りだした。ミラーボールが回りだし、色彩のドロップが彼女たちのなめらかな肢体を流れてゆく。

「お客さんたちも、さあ立って立って踊って!」

 ジャニスに悪意はないのだろうが、おれたちにそんな勇気はあるはずもなかった。コーヒーに手を伸ばすことさえ憚られて、四人の揺れ乱れる姿を大人しく眺めることしかできないでいた。

 ふと視線を感じて目をやると、エミと呼ばれていたどうみても高校生くらいの少女が、カウンターの椅子に腰かけたままこちらを向いている。相変わらず表情は読み取れなかったが、できれば敵意のないことを願うばかりだった。そして、唐突に悟った。おそらく自分たちは彼女にとって存在しないも同然で、六つの顔は乱暴に塗り潰されて背景に紛れているはずだ。


*


「ぼくはもっとなんというか、普通のことがしたい・・と、思うんですけど・・・」

 モリモトが窓のカーテンを閉めて振り返る。

「ふつうねえ・・」と、タケオ。

「ここは普通の研修所だと思うけど・・」と、サクマ。

「ここが普通だと思わせるための施設なんですよ」

 モリモトが妙に拘っている。

「班長は大学行ったんですよね」

 コンドーが突然聞いてきた。

「ああ・・いったね・・」どうしても俺は口ごもる。

「楽しかったですか」

 楽しいことなんか何もなかった、なんてここで言うべきじゃないのはわかっていた。

「まあ、たまにはね、でも・・」

「学園祭なんか盛り上がるんでしょ」と、サクマ。

「サークル、なんかやってたんですか」と、モリモト。

「へへ、夢のキャンパスライフってね・・」

 何処までも古臭いタケオはからかう気満々だ。

「あの・・学園祭のあとって、近所の産婦人科が賑わうって本当ですか・・・」

 ヤギが真面目な顔で話にのってくる。

「あのなあ、おまえら・・」と、俺は言いかけたが、彼らに真のキャンパスライフを語れるほどそれについて知らないのが本当のところだ。実際、ほとんど敷地にすら入らなかった。門の前を素通りしてふらふらと何処かへ行ってしまう。それでもなんとか卒業できたのは、ようするにそうゆう学校だったのだろう。そうゆうかたちで社会に押し出されてきた俺に何かを否定したり肯定したりする資格があるだろうか。

「班長、七班の班長と親しいですよね」

 モリモトが突然話題を変えてきた。七班は唯一の女子だけの班で、男子禁制の女子寮からささやかな虹彩を纏って現れる。

「別に親しくないよ・・」

「こないだ廊下で話してたじゃないですか」

「ああ、ちょっと問題が・・」

「へーどんな問題ですか?」

 タケオ以外みんな興味津々のようだ。

「あのね、たいして・・面白い話じゃない・・」

 今回の新人研修にはもうひとつ内容の違う別のクラスがあって、先日、合同で懇親会が開かれた。幹事の要領を身に着けるのも研修の一環だそうで、週末ごとに何らかのイベントを持ち回りで企画するのがここの伝統らしい。いいかげんアルコールの回ったタケオが他のクラスの男をからかった。

「○○の人間は女に手を出すのが早いなぁ」

 出身地を出したのがまずかった。差別だということで向こうは一丸となった。班長達に招集がかかり良く事情も判らないまま抗議を聞いていたが、俺以外はみんな早々に事態を把握して対応を考えだした。

「ちょっ、ちょっとまってくれよ」

俺も相当酔っていた。酔うと周りの人間がみんなぬいぐるみに見えてくる。

「なんで、これ、クラス対クラスの話になってんの?」

「はあ?」みんな呆れて俺を見る。

「いや、ぼくたちはみんな彼のことを尊敬してて、そんな彼が侮辱されたことに我慢がならないんです」

 顔を紅潮させて俺を睨んでくるあちらの代表者は、ただ酔っているだけじゃなさそうだ。

「誰がバカなことをいったか知らないが、少なくともおれは侮辱する気なんてないからな、って侮辱だって?そんなたいそうな・・・」

「差別ですよ!彼は傷ついてるんですよ」

「うーん、いや、それは悪かった、じゃそいつに謝りにいかせろよ、きっと羨ましかったんだろ・・・」

「あなたの班の子じゃない?悪いけど」

 その時、初めてアヤノさんが口を開いた。女子班の班長だ。長い髪を頭の後ろでくるくると纏めて竹の棒だかかんざしだかで留めている。落ち着いた低い声。

「うちの班のコにしつこく話しかけてた男になんか言ってたもの、そうね、羨ましかったのかも」

 アヤノさんは澄ましている。糾弾者は一瞬気色ばんだが、次の言葉がでてこない。

「ああ、たぶんあいつだ・・うん、おれが連れてって謝らせるよ、それでいいよね、もう解散しよう」

 俺はそう言って立ちあがった。床が傾いで足がふらつく。翌日の授業は頭痛と吐き気との勝ち目のない戦いになるのを覚悟した。

 その後、タケオを引っ張っていって当事者同士話をさせた。タケオにどの程度偏見があるのか判らないが、きちんと頭をさげて自分の無礼を詫びている。地名を挙げてからかったのは、ただの勢いだったと酔いのすっかり醒めた目を瞬きながら釈明した。高揚した面持ちで取り囲む若い研修生たちもなんとなく納得いかないながら、それ以上どうしようもない。行くあてのなくなった彼らの義憤の矛先は頭上で壁に反射し、互いに縺れている。これでよかったんだろうかと俺も思った。だけど、少なくとも自分たちは同じ境遇にいる者同士なのだから、争う意味など何もない。

 翌日、アヤノさんと少し話をした。モリモトが言ってるのはその時のことだろう。彼女はすでに指導員ともこの問題について話し合ったらしい。

「まあ、クラス全体でこの『差別』について話し合ってもよかったんじゃないか、ですって・・」

「ふーん」

「ふーんって、どう思うの?」

「どうって?」

「だから、いい機会なんじゃないかって」

「おれは嫌だな、それにもうそのてのビデオは観せられたじゃないか、今さら・・」

「身近な問題だから意識を共有できるんじゃない」

「意識の共有なんて簡単に言うなよ・・とにかく、タケオにとっちゃ身近過ぎるだろ」

「・・うーん、そうねぇ・・・」

と、いうことでその話はそれっきりになった。



 モリモトが言いたいのは、俺が女子班にコンタクトできるということらしい。要するに合コンがしたいのだ。ここにいる研修生たちは『今どきの高校生』だったんじゃないのかい?と、突っ込みたいところだったが、何が『いまどき』なのかもよく判らない。各部屋を回覧板のように回って来るエロ本もありきたりだし。

「女の子と仲良くしたかったら、自分でなんとかしろよ、と諭すのがおれの役目だと思いたい」

「そんなこと言わないで一肌脱いでよ、先輩」

 タケオはまたいちいち古臭い。

「あのなあ・・」

 俺は合コンなんて一度もやったことがない。


 しかし、結局、アヤノさんに話をつけにいった。アヤノさんは笑って、「でも、うちの娘、みんなお酒飲めないよ」と、首を傾げる。彼女は大学院で設計を学んだ、専門職入社の人だ。他にも大卒資格で入社した男が何人かいてみんな班長になっている。俺は高校生と同じ試験を受けてそこにいた。

「一緒に散歩でもしようか・・」

 何か思いついたらしく、アヤノさんはそう言った。


 

 そんなわけで、おれらは日曜の夕方、早めに夕食を済まして、ぞろぞろと研修所から出てきたのだった。みんなが揃う時間がそこしかなかったのと、アヤノさんが近くの海岸にあるらしい元寇時代の防塁を見に行きたい、と言ったからだ。

「もうすぐ、見れなくなるらしいのよ、海岸線がずっと沖になるの、つまり、埋め立てられてね」

 元寇がどんなものかぐらいは、みんな教科書程度の知識は持っていたが、たいして興味も湧かず、そもそもそれどころではない。休日の夕方、どことなく疲れた住宅街を縫うように一行は歩いた。小さな子供のいる家庭の芝生に転がる玩具、老夫婦の住む家の玄関先には枯れかけた鉢植えが並び、共同らしい家庭菜園は不揃いの竹竿ばかりが目立って適度に荒れていた。道路を横切る猫はわざとらしくゆっくりと歩く。それを首を回して見送る鎖に繋がれた犬には表情がない。無造作に投げ出されたような街だった。

 相変わらず二つのグループの距離は埋まらないので、おれは立ち止まってアヤノさんを待つことにした。

「この方向でいいんかな・・」

「いいと思う、海の匂いがするし・・」

 たしかに埃っぽい空気が少し湿り気を帯びている。そのままアヤノさんと並んで歩いた。今日は髪をポニーテールにして風に梳かせている。化粧っ気のない顔は少し青白いが、いつもよりリラックスしてみえた。背筋をすうっと伸ばして歩く彼女との間には、それでも人を寄せ付けない透明な壁がある。ポニーというよりは休暇をもらった儀仗用の馬というところか。猫背で歩く俺と背はあまりかわらない。

「けっこう面白いものね」アヤノさんが言う。

 何のことかと周りを見渡すと、後ろの方でようやく男女が混ざり合い、会話もぽつぽつ出始めている。あとはタケオがうまくやるだろう、と俺もほっとした。となると自分も何かしなければならない。

「フビライハンって義経だったって話あるよね」

「それは、チンギス・ハーンでしょ、どっちにしても妄想の産物よ、あたしは石垣が見たいだけなの」

「それをみて妄想するんでしょ」

 アヤノさんはちらりとこちらをみる。

「そうね、昔の人の気持ちとか想像するの、石を積み上げるって作業にはなにか人の息づかいを感じるわ・・それこそ沢山のひとの・・」

「案外、現場は楽しかったんじゃないかな、ほら、台風が来る前ってけっこう気分上がるでしょ」

「・・本気で言ってる?」

「・・いや、ごめん」

「いつも、そうやって適当よね、あなた」

「そんなこと、ない、と思うけど・・」

「まあ、いいわ、職場はどう?」

「えっああ、そうだな、人の名前が覚えられない」

「・・他人に興味がないだけよ」

「ひどいな・・そっちはどうなのよ?」

「ふつうよ、だめ、嫌ないい方ね、上司はどちらかというと・・わかりやすい人ばかり、大学の研究室よりシンプルだし、あたしは可愛がられてるし、でも、あたしが主人公のドラマだったら、あいつらみんな悪役かな・・いつかうんと困らせてやるつもり、どうやったら・・」

「よくしゃべる人だったんだな・・」

「・・悪かったわね、あたしの名前ぐらい憶えた?」

「憶えましたよ、長靴をはいたアヤノさん」

「なにそれ?」

「枕詞をつけると覚えられるんですよ」

「へー面白い、他には?」

「回り舞台の片柳さん、献血してあげたい遠藤さん」

「それ、あたしもやってみよう・・あっ、ここよ!」


 突然ビルの隙間から波の音が聞こえてきた。背の高い灰色のマンションを回り込むと、隣の古い民家との間に人一人通れるだけの小道があった。水溜りに割れ瓦が敷き詰めてある。湿った薄暗い路地をよろめきながら進んだ。民家の庭からフェンスをはみ出して伸びるアジサイ。視界を遮る旺盛な葉を手で避けながら抜けた先に海がひろがっていた。

「わあ、すごい!」

「すげえ、気持ちいいー」

と、なかなかの反応をみせる小さなぎこちない群れのお陰で俺も少し責任を果たせた気になった。でも正直、いうほどの眺めでもない。海に突き出したビルに挟まれて二軒の民家が窮屈そうに波から身を引いて蹲っている。その狭い裏庭からすぐに急角度で落ち込む例の防塁が黒い姿を見せていた。両側のコンクリートの防波堤に挟まれた僅か20メートル程のごつごつとした海岸、カキや海藻がしつこい記憶のようにこびり付いた忘却の場所、濃厚な生と死の匂いが足元から這い上がって来る彼岸の淵。

 アヤノさんは早速、防波堤に貼り付いた古い石段を伝って潮のひいた海岸に降りようとしている。後からみんな恐る恐る続いた。波と海風に嬲られた石段はいびつな形に歪み、我々のような上滑りした現実の侵入を拒否しているようだ。滑る足もとに気を取られながらもイソギンチャクやフナムシを見つけて騒ぐ集団から離れて、アヤノさんは一人防塁を見上げている。

「やたらと雑な石垣だなぁ、鎌倉人の恐怖の表れ?」

 近づいて声を掛ける。防塁自体の高さは3メートルあまりだろうか、様々な形の石がそのまま隙間を埋めるように積み重ねられていた。武士の無骨さより市井の人の飄々とした佇まいを想わせる。歳月と共に染みついた蒼く深い色彩。その一つ一つに険しくも落ち着いた表情があり、全体がひそひそと立ち上がっていた。その裾から岩だらけの砂浜がなだらかに海に向かって落ち込んでいる。

「意外と丈夫なのよ、これ」振り向きもしない。

「登りやすそうだ」

「鎌倉武士は迎え撃つ気満々だったの、二回目の時だけどね・・」

「歴史に興味あるの?」

 彼女は、こちらに向き直って俺を正面からみた。

「あたしはけっこうなんでも興味を持つの、だめ?」

「そんな、だめだなんて・・おれも興味ありますよ、源氏物語全巻読んだし、読みにくい与謝野晶子訳で、なんか退屈なところが癖になって・・・」

「・・あのね、つき合わせちゃってて悪いけど、もっとなんか楽しんだら?無理しないであたしのことはほっといて・・まあでも・・今日は「デート」なのよね、あなたのご趣味は?何か好きなものはあるの?」

 直球かな?変化球かな??

「あぁーと、そうだな、考えとくよ・・」

 一瞬、気まずい間があって、アヤノさんはまた石垣に向かう。怒らせてしまったかな、いつもならそのまま放っておくところだが・・

「えぇーと、今、オレは寮にすんでて、土曜の午後は必ずカレーなのよ、でっかい鍋になみなみとカレーが作ってあって、みんな勝手に食べていいの、つまり、食べ放題なわけで、それが最初信じられなくて・・でも、毎週それが楽しみで、ガランとした食堂に誰よりも早く行くのって・・わかります?」

 自分でも何を言ってるのかわからない、そこらの石を持ち上げて蟹でも見つけようかと思った。

「カレーあたしも好きだけど、食べ放題かぁ・・」

 アヤノさんは潮と風雨にさらされて滑らかになった石の表面を愛おしそうに撫でている。たぶん、話の半分も聴いていない。

「いや、でかい鍋いっぱいのカレーを見るのが好きで・・もちろん美味いし・・天井の染み探すのもいい、けっこうなんかの形に見えてきたりして・・それから、蝉の抜け殻の匂いが、こう、気が遠くなるというか・・あと、音楽・・特に歪ませたギターの音が好きで、ギンヤンマの羽音もいいね、けっこうな迫力、二日酔い明けの冷たいウーロン茶・・小石のチョコレート・・ネコの鼻を触ると鳥肌たつほど気持ちいい・・」

「なに言ってるの?」

「・・だから、好きなもの・・」

「なんか、映画であったなぁ・・」

「サウンド・オブ・ミュージック・・映画も好きです」

「きみ、今日はちょっと・・そんなキャラだっけ?」

 どんなキャラだったっけ・・

「もし、おれが宇宙人だとして・・いや未来人でもいいけど、たぶんその、居場所がなかったりして・・まあ、つまり・・この石垣の時代に生きてたらどうしてたかな?もっと昔で、たとえばアルタミラの洞窟、あの壁画を描いた奴は怪我で猟に出られなくなった男じゃないかという話もあるじゃない、こんなおれにも描ける絵があったら・・」

 その夕暮れ、絶望的な躁状態にあった俺は、やがてやって来る身の竦む閉塞感をむしろ懐かしく想った。

 笑ってくれるとよかったのだが辛くなるほど凪いだ沈黙に次の言葉がでてこない。俺は、たぶん、自分も毎日石を積んでいることを知ってほしかったのだろう。刻むように呼吸していることを・・彼女に惹かれるのは、その水のような冷静さの所為だ。

 はたして、彼女はゆっくりと防塁に背を向けて、焦点の定まらない目の前の景色に向き合った。しばらく、波打ち際で遊ぶ男女や遠くに重たくうねる暗い波を眺めていたと思う。もう、ずいぶん陽も傾いて牢に帰らなければいけない時刻が迫っていた。タルコフスキーの長回しのように、いつまでもこうしていていたい気もする。だけど俺は映画館の座席に座っているわけじゃない。アヤノさんは口を開いた。

「あんたなんかすぐ死んじゃうわよ、いや、ごめんなさい、案外、一所懸命に労働してるかも・・想像するとね、何度も何度も石を積み直してる感じ、ひとっこともしゃべらないでさ、意外だった?監視の役人がイライラしてて・・猫って鼻触られるの嫌がらない?」

「いや、あの・・そこは一方的に・・信頼関係というか・・」

「あたしね、昔、詩や小説書いてたことあるの、大変な黒歴史・・さっきは生意気なこと言っちゃったけど、あたし、できるだけ人のこと馬鹿にしないようにしてる、真面目な話、自分に跳ね返ってくるのが怖いから・・でも人間なんてみんなバカなんだから仕方ないじゃない、誠実に生きようったって足元からどんどん崩れていくし・・ってあら、あたし、本当に今日はよくしゃべるわ・・」

「・・なんで、その・・」

「えっ」

「いや、黒歴史・・そう思うのかなって・・」

「ああ、だって・・あたし・・死にたくなるの・・自惚れちゃって・・才能ないのよ、ホント!」

 彼女が十分変な人で、真に誠実であることだけはよくわかった。ただ、もの言わぬ遺跡の前で、俺たちの幼さが無防備に溢れ出している自覚もあった。そして、お互いの髪や肩や鼻先にくっついた卵の殻を掃い合うほどには親しくないことも。生身の人間を前に困惑するアヤノさんの横顔を盗み見る俺には、当惑と躊躇いの感情があった。人に興味を持つと途端に盲目の人のように手さぐりになる。自分が何もできない人間であることは、やはり隠さなければならない。

「理系女子の意外な告白を聞いて海が荒れているって話を今思いついたよ」

 口から出た言葉は、いつもあっという間によそよそしい他人の顔になる。

「カート・ヴォネガット読んだことある?」

「あの人の下ネタ、上品なのか下品なのかよくわかんないよね、どうして建築なんて興味持ったの?」

 質問には質問で返す、いい関係を壊したくない、深入りしたくないときの癖だ。

「・・あら、建築だってすごくエロいのよ」

 アヤノさんはやさしい。


「はんちょうー、もうそろそろ帰りましょう、なにボーっとしてるんですかぁー」

 モリモトが笑いながら手を振っている。みんなもう階段を昇りながら、幸福そうに足元を見つめたり海を振り返ったりしている。

「さあ、行こうか、日誌提出しなきゃでしょ、あと一週間の辛抱ね、今日は意外と面白かったな」

 急に輪郭のはっきりした彼女はさっさと岩場を跨いで帰りだした。

「もう少し、ここにいるよ」

「どうぞ、ご自由に、門限忘れないでね」

 見送った後ろ姿には、なんとなく年齢以上の疲れが見て取れた。滑る足場に気を取られながら老婆のように腰を屈め、両手で慎重にバランスをとっている。それでも階段の一番上で手を振ってきたアヤノさんは、夕陽の贈り物のようにラッピングされて美しかった。


 

 俺は今、この切り取られ、忘れ去られた海岸に一人座っている。腰掛けている尖った岩はびっしりとカキ殻に覆われ、蹲る獣に似ていた。見るともなしに海を眺める。目の前は大きな湾で、対岸の灯が次第に濡れたような輝きの針を伸ばしていく。行きかう大小の船はほとんど動かない。ただ、ふと気が付くと目の前の絵が変わっていることで時間の経過に気付くのだ。水音が耳をくすぐる。無数の舌が小瓶の底を舐めている。それは徐々に全身を圧して大きくなってくる。潮が満ちてきた。乾いて岩に貼り付いた海草や、身を伏せていた生き物たちが息を吹き返し、ブツブツと控えめに呟きだす。この小さな磯全体が何かを期待して膨らんでいる。海は穏やかに揺れ続けて淡いラピス・ラズリの皮膚を剥がすように色を失い、空の薄紫は掠れて夜が降りてくる。海と陸地の境がなくなった。

 波の騒めきに紛れて微かに背後の民家から茶碗の触れ合う音が聞こえてきて、リアルな人の温もりが一瞬懐かしさと共に甦る。『人が家の中に住んでいるのは、地上の悲しい風景である』それはあまりにも遠い出来事のようだった。

 いよいよ勢いを増す対岸の街灯りと船窓の瞬きの方が、どうしても魅力的で切実に胸を満たしてくる。手を伸ばせば届くところにそれはある。

 月も星もない、風のない夜だった。柔らかく湿った闇が首筋を撫で下ろしていく。思わず指先で払うと、ようやく幽霊のような海の表情を窺うことが出来るようになった。ほの白く滑らかなシルクのベールが上下している。ここが惑星ソラリスの波打ち際なら、海は俺に何を届けてくれるだろうか。こうしていると、殴られたり殴ったりした記憶が甦る。きっとおあいこだ・・。

 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。潮が足元に迫ってきている。なのに、どうしても立ち上がる気になれなかった。いろいろ考えても行きつくところはいつも同じ、

「くだらねぇなあ」

       

                 *

 

 海から何かでてきた。文字通り何かが出てきたのだ。ぼやけた白いベールが所々裂けて黒い裂け目が見えたと思ったら、押し分けるようにして異形の者たちが現れた。それは辛うじて人の形をしていたり、どちらかというと魚に近かったり・・だが、ほとんど は他の何にも例えようがないものだった。打ち寄せる波とともに次々と現れる何者かは、不思議と恐怖というべたつく感覚を運んでこない。それらは海風のように揺らぎながら脇を通り過ぎていく。彼らにとって俺は何の意味もないのか。踝を波で洗われながらいったい俺は何をしているのだろう。流れに逆らうことも身をゆだねることもできずに、結局ここに据わっている。

 ふと、肩に触れるものがある。右肩に柔らかい重みを感じて見上げると、背の高い異形のものが立っていた。朽ちかけた黒い板切れにしか見えないそいつは長い腕を伸ばして、俺の肩を掴んでいる。鋭く裂いたような目の端には紅い瞳が覗いていた。湿った大きな掌からは剣呑さより、思いがけず海の温かさが伝わってきて、次第に緊張が解けていくのが分かった。そして、一瞬ののち、彼はそっと背後へと立ち去っていった。

 その手の感触が消えるとともに、心と身体を束縛していた何かが弛んだ。溜まっていた澱が抜け落ちていくように俺は殻を脱いだ。

 ひたひたと押し寄せる流れから抜け出して、いつまでもここにいよう、ここに留まる、そして、たぶん、どこまでも逃げる、何も変わらないが何もかもが違う、新しい棲み処を捜すヤドカリのように、不安に震える下腹を抱いたまま考えを巡らせた。見上げると薄く伸び始めた雲の向こうに、ぼんやりと月あかりが拡がっている。

 振り返れば防塁がある。なんとか積み上げてきた日常の隙間に指を掛けてよじ登れば、もと居た場所に帰れるかもしれない。それとも、異形のものたちを追いかけて行こうか。

 でも、まだここに居たい、ひりつく新しい皮膚が乾くまで、滲んだ虹色の膜が全身を覆うまで、波に同調するゆったりとした鼓動を確かめ、そしてそれを飽きるまで聴いていたい、度々襲う恥辱の記憶を押し込める小さな部屋ができるのを待って。

 海はたぷたぷと満ちてきて、荒涼というものからは遠くにあった。

 夜が明けるまで・・・

たとえ朝が来なくとも。


                 

                   了


 







 

 

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海から何かでてきた かいとおる @kaitorupan

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