第7話 帝国兵との戦闘





 バァァン!!!!


 メルティ少尉が宿屋から飛び出す。


 その後をアルブラン軍曹がついて行き、私も彼らを追う。


 宿屋の前には2人の帝国兵がいた。


「かくまっているのはわかっている。 今すぐ引き渡すのが懸命な判断だぞ」


 と私たちが飛び出す前に、帝国兵が村人を脅迫していた。


 その帝国兵を狙ってアルブラン軍曹がマスケット銃を構える。


 メルティ少尉は、姿勢を低くして突撃していく。


 私はというとメルティ少尉とアルブラン軍曹の間に取り残されていた。


 何をしたらいいのかわからなかったのである。


 シュューッバァン。


 それはアルブラン軍曹の持つマスケット銃から鳴った射撃音であった。


 帝国兵の1人が、血を流しながら倒れる。


 瞬時にメルティ少尉がもう1人の帝国兵に斬り掛かった。


 彼のひと振りをマスケット銃で受け流す帝国兵。


 しかし、次の一手はサーベルでなく拳であった。


 腹にパンチを受けた帝国兵が、体勢を崩し隙を見せる。


 そして、メルティ少尉のサーベルによる追撃を受けその場に倒れ込んだ。


 あっという間に終わってしまった戦闘は、ただ見ていただけであった。


 終わってしまったのか…………


 と思いきや、銃声を聞いた帝国兵の集団がこちらに向かってきた。


「あいつらだ!! かかれー!!」


 サーベルを持った上官らしき兵士がマスケット銃を持った兵士を引き連れてくる。


「くそっ、新手か。ここはまずい。一旦引くぞ」


 宿屋が接していたメインストリートから離れた私たちは、森の一部を憩いの場にしているランバロの広場まで走った。





 広場の門が見えるよう木の裏に隠れ帝国兵を待ち伏せすることになった。


 しばらくすると、帝国兵たちが門から広場へ入ろうとしてきた。


「出てくるんだ!! 」


 マスケット銃を構えながら、ゆっくりとこちらへ向かってくる。


 隠れている場所を悟られないよう帝国兵の位置を確認する。


 ……5、6人が広場の門をくぐっただろうか。


 アルブラン軍曹がマスケット銃の撃鉄を起こす。


 それを見てメルティ少尉が素早く木の間を移動して、帝国兵の集団の横に回り込む。


 すると、


「ぉぉおおおりゃァァ!! 」


 広場を囲う石壁を乗り越えて、帝国兵に飛びかかる人たちと石壁から射撃する人。


 突然の出来事で帝国兵たちは驚き戸惑っている様子であった。


 すぐに撃てるよう姿勢を整えていたアルブラン軍曹が、自分たちの目の前で起こっている戦闘に参加するよう私に合図した。


 すでにメルティ少尉は、帝国兵の集団に突撃している。


 少尉から渡された短剣を見る。


 長年使われてきたはずなのに、その短剣は劣化しているようには見えなかった。柄にある紋章は、ついさっき刻まれたかのよう。


 私は、この短剣が戦場で生き残るお守りのように感じた。


 どうか……私にご加護を。


 そう心の中で祈った。


 そしてメルティ少尉に農具や武器を持って戦う人たちと元へ向かった。


 だいたい30メートル程であっただろうか。


 集団のところにたどり着くまでに後方から2回、射撃音がした。


 白兵戦中の集団にマスケット銃で撃つことは、命中率の悪さから嫌厭されていたのだが、アルブラン軍曹の腕にかかれば関係ないようだ。


 一方の白兵戦では、メルティ少尉が帝国兵2人を相手にして善戦している。


 だが、助けに来てくれた人たちは、マスケット銃で突き飛ばされそのまま突き殺されていた。


 私が白兵戦に参加した時には、4人が地面に倒れ動かなくなっていた。


 皆、2対1または1対1で戦闘をしている。


 目を血ばらして地面に敵を押し付ける帝国兵、豪快なひと振りと強烈な1発を帝国兵に喰らわすメルティ少尉。


 規模は小さいながらもこの戦闘の場に圧倒されてしまった。


「レイア!! こいつをやるんだ!! 」


 声の方を振り返ると、メルティ少尉が帝国兵の両脇を掴み格闘をしていた。


 メルティ少尉と帝国兵は互角である。


 だが、帝国兵には隙が多かった。


 短剣を握りしめ、走り出す。


 迷う前に足が動いたのである。


 メルティ少尉がかろうじて帝国兵の動きを止めてくれた。


 暴れる帝国兵の腹部目掛けてひと突きした。


 短剣が刺さる腹部からは血が流れて出る。


 眉間にシワを寄せ、私の腕を力強く掴んできた。


 彼から唸り声が発せられる。


 私は勢いよく短剣を腹部から抜いた。


 帝国兵の唸り声は絶叫に変わり地面に倒れ込む。


 血の出る腹部を抑えながらもがき苦しむその姿に、私は目も当てられなくなった。





 ……………………もう逃げ出したいと、そう思った。



















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髭面とマスケット銃 英田クニハル @Eikoku_winter

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