魔剣転生

此花

第1話 新たな世界へようこそ

トゥルルルル…ガチャ


「お電話ありがとうございます!桜ノ宮工務店です!見積もりのご依頼でしょうか?」


俺の名前は兎本吉成うもとよしなり地元の工務店で今日も働いている。


「…ああ?」


「…?ご用件はなんでしょうか…?」


「佐藤ですけど…。あのねぇ…私の耳かきが見つからんくてねぇ…。」


「佐藤さん…今週4回目ですよ!?うちはそう言った仕事はやってないんですよ!」


「でもねぇ…。」


「息子さんか娘さんに見つけてもらって下さい!」


ガチャ!


「たくっ…。」


俺の地元は田舎で若い奴らはみんな都会に出て行っちゃってるからうちみたいな零細企業にはしょっちゅうこう言う電話がお年寄りからかかってくる。


トゥルルル…トゥルルル…


またお年寄りじゃないだろうな…。しかし仕事は仕事だ。


ガチャ


「はい…桜ノ宮工務店ですけど−−−」


俺が受話器を耳に当て要件を尋ねようとすると受話器から放たれた光で辺りが包み込まれた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「父上っ!召喚が成功しました…。」


「まさか!本当にやってのけるとは…。スーザンは…?」


「姿は何処にも見当たりません。おそらく…。」


「そうか…。ガイルとセナを呼んできなさい。」


くそっ…光で目が!誰かうちの会社に勝手に入ってきてんのか!?ぼんやりと見えてきたぞーっと。


「はぁ!?」


俺が驚いたのも仕方がない。何故なら俺の目に飛び込んできたのはバカ広い部屋で王冠を被ったおっさんとドレスを着た女の子。それに俺のように状況を把握出来ていない様子の3人だったからだ。


「なに!?ここどこ!?あんたら誰!?」


「うるせえぞ!おっさん!ギャーギャー喚くな。おいコスプレじじい!ここはどこなんだ!」


俺があたふた騒いでいると隣に居た前髪を後ろに流したみるからに不良な奴が怒鳴り始めた。


「突然のことで申し訳が無い…。君たちはこの世界を厄災から救って貰う為に私達が召喚した最後の希望だ。」


「突然のことで僕達も困惑しています。詳しい説明を求めます。」


「これは誘拐行為ですよ?」


召喚?されたであろう白髪のイケメンくんが問いかけると立て続けに金髪美少女も口を開いた。

いやぁー絵になるねぇ…。


「この世界はサタン・ルシファー・マモン・リヴァイアサン・ベルゼブブ・アスモデウスそしてベルフェゴール。この7体の悪魔によって支配されている。国や文明は次々と滅んでいき、今やこの世界に生きる人間はこの国に収まっている。」


「そこで異世界から僕達を召喚したと言うわけですか…?」


「その通りだ。時々…他の世界から迷い込んでくる人間はいるが勇者として召喚されたのは君たちが初めてだよ。」


「私達は普通の人間です。悪魔と戦う力なんて持っていません。」


ふっ…。脳みそが女の子だぜ。俺たちは異世界転生者だぜ?俺が今まで読んできた漫画や小説では転生者はなんらかのスキルってやつを貰えるんだぜ…。


それはそうと1話から話が詰め込まれすぎてないか?1話にしてもう完結目指してるのか?


「人間に残された最後の希望は古くから継承されてきた書物に記されている武器にある。」


「ならそれ使って倒せば良いじゃねえか!わざわざ俺たちを呼ぶ必要あんのかぁ!?」


「その武器は所有者を選ぶ。選ばれない人間では扱うどころか持つことすら出来やしない。その武器は勇者と認めた者の前に忽然と姿を現すとされている。」


「そういう展開かあ!!」


思わず興奮して大きな声を出してしまった。


「…ん?4人?武器は全てで3つ。我々が呼んだのも3人のはずだが…。」


「え?」


と言うことはこいつら3人の中に1人間違えて連れてこられた可哀想な奴がいるってこと!?


「あ!?なんだこれ!」


急に不良の目の前が光だし棍棒のようなものが現れたと思えば他の2人の前でも同様の現象が起こった。嫌な予感…。


「素晴らしい…!やはり3人とも選ばれたか。」


「これは…!」


「その武器の名は−−−」


「いいえ…わかります。この剣が僕に語りかけてくるんです。名はエクスカリバー!」


「私のはグングニルと言うのね。」


「アルケイデス…良いじゃねえか!おもしれえ!」


「えっとぉ…。」


「そなたはおそらく…心苦しいが偶然同じタイミングで迷い込んでしまった者だろうな。」


「うっそおおお!」


俺の思い描いていたファンタジーライフは訪れないようだ。


「…とにかくだ。君たち3人にはその武器を使ってこの世界を救って欲しい。どうか頼む。」


「僕の力で人々を助けることが出来るのであれば…!」


「王様に頭下げられちゃったら手伝うしかないじゃない。」


「そんなこと知ったことか!俺はこいつで喧嘩が強いやつをぶっ飛ばしてやる!」


うわぁ、悲しいかな。俺もそういうかっこいい台詞考えてたのに。おかしいなぁ…。


キラキラしたこいつらに目を向けることすら出来ないくらい俺は落ち込んでいた。いや待てよ。しかしながらこれは俺が可哀想すぎではないか?こんなことなら元の世界に帰った方がましだ。帰り方を聞こう。


「あのっ!」


俺は顔を上げて王様に問いかけようとした。


ん?なんか目の前にすんごく危なそうな剣があるぅうう!!


顔を上げた俺の目に映ったのは禍々しい光…いや闇を放つ剣だった。剣というよりかは刀と呼んだ方がしっかりはくるかも?


「いやいやいや!これなにぃ!?!?」


これは俺がこの世界を変える物語。


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魔剣転生 此花 @kirin1224

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