スカイグレーのカレー皿

矢木羽研(やきうけん)

2つでひとつのカレー皿

 朝、庭の草に露が付いていた。うんざりするような酷暑は、台風とともに嘘のように去っていった。もちろん残暑にはまだまだ警戒しなくてはならないだろうが、今しばらくは穏やかな日々が続きそうである。


 朝食を済ませ後片付けをして、ふと戸棚を開く。亡き夫と買ったレトルトカレーがまだまだ詰まっている。帰省に来た子供たちに持たせようとしたが、荷物になるからと断られてしまった。


 夫はカレーが好きだった。若い頃は一緒にカレー屋を巡ったり、自分たちなりに工夫して作ってみたりした。子供ができてからは無難なカレールーばかりを使うようになり、子供が独立する頃にはレトルトカレーを買ってくるばかりになった。そしていつしか、1袋分のカレーを2人で食べるのがちょうどよくなっていった。


 そう、夫が亡くなってから私はレトルトカレーを食べていない。一人で食べるには少し量が多すぎるから。でも、昼と夜に分けて食べればいいか。今日は久しぶりにカレーが食べたくなった。


 いつかの旅行先で買った2つで一組のスカイグレーのカレー皿を、今日は1つだけ取り出す。これからは私が独り占めしちゃうけど、許してね。私は仏壇の笑顔にそっと微笑みを返した。

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