第6話 尾生の信 芥川龍之介

「 ・・・


夜半、月の光が一川(いっせん)の蘆と柳とに溢(あふ)れた時、川の水と微風とは静に囁(ささや)き交しながら、橋の下の尾生の死骸を、やさしく海の方へ運んで行った。

が、尾生の魂は、寂しい天心の月の光に、思い憧(こが)れたせいかも知れない。ひそかに死骸を抜け出すと、ほのかに明るんだ空の向うへ、まるで水の匂ひや藻(も)の匂ひが音もなく川から立ち昇るように、うらうらと高く昇ってしまった。

 …… 」

2024年9月4日

V.2.1

平栗雅人


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