巨乳は男女区別なく魅了する

「マジで伊織?」

「おうマジマジ」

「学校が仕掛けたドッキリではなく?」

「それ学校がしたら大問題じゃね?」


 同級生がTS化したという驚きの事実を確認しようと生徒たちが声を上げようとしたのを、授業始まるということで担任のタマちゃんが強制終了させた。

 そのことを知らない一時間目の授業の教師は、やけに覇気に満ちた生徒たちに少しビビリながらも何とか授業をこなす羽目になった。


 そして授業が終わるないなや、話題の中心人物伊織の周囲にはクラスメイトの殆どが集まり質問攻めの嵐となったのである。


「いや、テレビでTS化現象ざ起きてるとか言ってたけど、自分の近くで起きると思わなかったわ」

「俺も自分がなるまでTS何て漫画の中の話と思ってたわ」

「マジで伊織?」

「何度聞くんだよ。鼎伊織十七歳、元イケメン現在超美少女になりました」

「自分をイケメンとのたまう自信馬鹿、伊織か」

「おい! どこで判断してやがる!」


 まずクラスメイトの中でも友達と呼ばれる男子たちが伊織本人か確認する。情報としてTS化現象を知っていても、目の前に現れても信じられないのだ。


「ならお前が勧めたアダルト動画のタイトルを言ってやろうか」

「うん伊織だ。伊織本人だ」


 後の高校生活が崩壊しそうな証明の仕方をする伊織を止めて本人だと証明する友人。

 しかし、周囲には集まった女子もいるので軽めのアウトだった。


「ねえTS化ってどんな風に変化していくの? ほら、ね?」


 女子の一人がちょっと言葉には出来ないことを聞いてくる。最初に何でも聞けやー! と伊織が言ったので勇気を振り絞っての発言であった。


「あー、TS化な。最初、喉がイガイガすんなと思ったらクラクラっと立ち眩みがしてぶっ倒れたんだわ。それから昏睡状態らしかったけど時々意識がぼんやり戻って、何か身体を捏ねくりまわされている感じ?」

「身体が女性に変化してたのをそう感じたの?」

「たぶんそうだな。痛みは無かったけど、親から聞いた話だとゆっくり変化していっているのが、早送りで花が咲いていくの見ているみたいだったって言ってた」

「「「うわー」」」


 こんな風にと指をゆっくりウネウネさせる伊織に、引くクラスメイト。自分の身体がグネグネ動いて変化するのを想像したのだろう。


「ちゃんと目が覚めたら親が号泣しててさ」

「「「…………」」」

「かなりドン引きしたわ」

「「「ガクッ!」」」


 息子が訳の分からない病気で心配した両親に思いを馳せたクラスメイトの心をずっこけさせた伊織。


「非道くない? 親御さんは意識が戻って嬉しかったんだよ」

「いやいや、状況がわからない内にどアップの涙鼻水涎塗れの親が縋りついているんだぜ」

「……お父さんだったら気持ち悪いかも」

「確かにキツい光景だな」

「こんなの親が聞いてたら泣いちゃうよぉ」


 大多数が伊織寄りに、ごく少数が両親を想い悲しんだ。


「それで伊織君………。その、それ本物なの?」


 場がしんみりした中、ある女子が伊織のある部分を指さし聞いてきた。


「あ、これ?」


 それは男を魅了するもの。


「マジの本物」


 それはある一定以上の大きさになると、女の視線も釘付けにする。

 伊織は聞かれたモノを顔を下げて見てニヤリと笑った。 

 そして手をお腹の方から差し入れそれをすくい上げる。ズシリと音はしないのに、指の沈み込み具合で伊織の周りにいるクラスメイトたちには聞こえた。


「この大きさだと重量感があるなと思ってたけど、実際は予想の遥か上だった」


 ゆっさゆっさ上下に揺らされるそれに、集めた視線も上下に動いて謎の優越感が伊織の背中をゾクゾクさせた。


 伊織は男である。許可無しにそれに触れることも揉むことも出来ない。しかし、今は身体はTS化して自分のそれを自由に揉みしだくことも出来るのである!

 あぁ巨乳……。

 貧乳性癖でもない限り男を魅了する魔性の存在。女性も何かムカつかせる嫉妬の存在。

 その巨乳がTSした伊織に整った顔と共にチートとして付いたのであった。


「いやーマジで重くて肩こるわ」


 優越感に調子にのった伊織はゆっさゆっさしながら困ってない顔でのたまう。

 それを聞いた貧なる女子がもげろもげろと呪詛を撒き散らしたのも聞こえていない。


「なあ、ちょっと揉ませくれよ」

「「「!?」」」


 一人、たった一人。エロ話ばかりしていて、女子からさいてーといつも言われている男子が禁句の一歩を踏み出した。

 男子は後でお願いしようと考えていて、最初の勇者に羨ましさと尊敬の念を抱き。伊織を囲むクラスメイトの半分の女子たちの彼への評価は地の底へと落ちた。


「え、やだよ」


 そして伊織は自分の巨乳を庇うように抱え込んであっさりと拒否した。


「なんで!? 中身は男だろ! 男同士ならいいじゃんか!」


 しかし、勇者は引かない。

 この後女子に軽蔑の眼差しで見られる高校生活を送ることになる。未来を捨てて巨乳を取る! 覚悟を決めた彼は退けないのであった。


「……猿江よ。よく聞け」


 そんな彼、猿江に伊織は優しく声をかける。


「俺もこれを授かって揉んでいるときに、お前ら男どもが揉ませてくれとお願いしてくると考えた。減るもんでもないし、一揉み千円で荒稼ぎしようとも考えた」

「「「考えたんだ」」」


 女子ドン引き。男子内心ウェーイッ! で財布の中身を必死に思い出そうとした。


「なっなら、その倍の二千円出すっ!」

「だがな俺の心は男なんだ。男に興奮されながら揉まれるのは精神が死ぬ」


 伊織は勇者猿江が財布を出そうとするのを、手で制して止めさせて拒否理由を話した。


「それにエロ猿に揉まれるのは気持ち悪いからマジ勘弁」


 追加の本音が勇者猿江を灰にする。中身は男でも清楚な美少女に引かれた顔で拒否されるのはキツかったらしい。


「じゃあ私は?」


 男がダメなら女はと女子クラスメイトが前に出てきた。


「女子はよしっ! むしろ触って欲しい!」


 満面の笑顔で両腕を広げてウェルカムする伊織。広げるときに手が軽く引っ掛かりブルンッと巨乳が揺れた。

 ゴクリと女子クラスメイト三保篠さんは唾を飲む。男子も女子も飲んだ。


「じゃ、じゃあ遠慮無く初めてを貰うね」


 男は女性に夢見ているが、男の前ではしないだけで女性たちも結構下世話な話をしている。

 三保篠さんはそこそこ貧で、羨ましくて友達のを揉みしだいていた。それがいつの間にか揉みしだくことに満足感を得てしまい。巨乳に魅了されし女子になってしまったのである。

 危うくエロ猿江に先を越されかけたのが、彼女に焦りと揉みに向かう勇気を与えてくれた。

 ありがとう猿江。そして滅びろ猿江。この巨乳は自分のものだ。三保篠さんは感謝と侮蔑と欲望を同時に思う。


 軽く胸を張るだけで一回り。否、二回りサイズがアップした伊織の巨乳に向けて両手を突き出す三保篠さん。その顔はグヘヘと男子には見せられない顔になっていた。男子は巨乳に魅せられて見ていなかったが。


「あ、初めてではないな」

「え?」


 三保篠さんの発言を訂正する伊織。

 降り積もった雪を最初に踏み散らす栄誉を得たと思っていた三保篠さんは揉む五センチで手を止める。


「え、もしかして意識が戻った時にお父さんに揉まれたの?」

「まずオヤジが出てくるのには引くわ。いや、揉まれてないけど触った奴はいるんだな」

「誰っ! 私の胸のこけら落としをしたのは誰なのっ!?」

「いや俺の胸だし」


 一番槍を取られた三保篠さんは狂乱状態になり、彼女の友人たちがドードーと落ち着かせようとした。


「まだこの身体を動かすのに慣れてなくてな。長い時間歩くのがしんどいから、くっついて支えてもらったんだよ。ほら、そこで自分は関係ありませんと机に突っ伏して寝たふりしている晴崇には」


 伊織が周りに集まったクラスメイトの壁の隙間を縫って指差す。


「ヒィッ」


 グルンッ! と伊織が指差した方向にクラスメイトたちは勢いよく首を回し。

 寝たふりしてもコソコソ見ていた晴崇は、ゾンビに見つかったみたいに恐怖で引き攣った声を出した。


「佐ヶ谷くぅ~ん。ちょっと私の胸を触った件について詳しく聞こうかぁ~」

「恐い恐すぎだよ三保篠さんっ!」


 群衆の中を特殊な歩法で抜け出した三保篠さんに詰め寄られて恐怖する晴崇。

 伊織は俺の巨乳だしとポヨンポヨンとつついた。

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異性との間に友情は成立するか(ただし相手はTS幼馴染み) @daikin1192

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