第4話 作中最強敵キャラ現る〜

遥か昔に魔王を三英傑と共に討伐した勇者の血を引く主人公。

三英傑や勇者と同じようにスキルを数個所有しているのだが、そんな主人公を何度も負かせた作中最強と言われる敵キャラ「ルアーナ」


そんなキャラが俺の目の前で自分の首を斬ろうとしている.....いや、確かに作中では最強とはいえ、今のルアーナの立場は従者。


ゲームでプレイヤーから「凍死のルアーナ」と呼ばれたルアーナではないのだ。


ーーーちなみになぜ凍死かというと、このルアーナは三英傑の血を引く王子の利き腕をルアーナのスキル.....おそらく氷魔法の上位互換のスキルで壊死させたりしている。そこから凍死ーーーかと思いきや

その際に作中にて初めて笑みを浮かべたのだが、それで数多くのプレイヤーは尊死をしたからだとか......今、目の前にルアーナがいる俺からしたら笑いごとではない。



「ちょ、ちょっと待て!なんでそうなるの?!」


「あ、暗殺者が襲ってきた際に...私をアルス様が庇ったから....アルス様は....」


ということは転生....というより憑依した際に見えた少女はルアーナだったのか、つまり、直前までアルスはどうやらルアーナと一緒にいた様だが、そもそも暗殺者の標的はアルスだ。


「ーーールアーナは勘違いしているかも知れないが....暗殺者が狙ったのは俺...僕だーーーだからルアーナが責任を追う必要はない」


「で、ですが.....」


「とりあえずーーー短剣置こうか、ね?」


「は、はい....」


「......」


それにしてもなぜルアーナはこれほどにも焦っているのだろうか?


記憶を辿たどってみたが....これといった情報は思い出せなかった。


「ーーーごめん、記憶があまり思い出せなくて.....記憶によるとルアーナの髪色って茶髪だった気がするんだが.....」


正直、これの質問は全く関係ないが作中のルアーナを知っている身からすれば白髪だっけ?と疑問に思っていたので聞いてみる。


「ーーー私は元々孤児でしたが....アルス様に拾っていただいてこうして専属使用人となるためにアルス様の魔法で貴族に多い白髪にしたのですーーー」


孤児?ルアーナが孤児だったのは作中でも語られなかったし、初耳だ。


アルスの魔法に髪色を変えるのがあるのは初めて知ったーーーいや、知らなくて当然か。


とにかくこの世界はかなりの貴族社会だ、そのため公爵家と平民は全く立場が違う....そのため平民は通常使用人になることさえできないのだが、髪色を変えてでもアルスはルアーナを使用人にしたと....


「ーーーもしかして孤児院に矛先が向かうのを恐れて責任を取ろうと?」


貴族の死亡に何かしら関わっていたら最悪の場合、親族や友人まで処罰される可能性がある.....やばいなこの世界ーーーーが、これは主人公が第一王子と共に法自体を廃止した気がする。


「ーーっっ!ち、違います!」


今、明らかに動揺したな......ん?


「ーーー腕を見せて」


「えっ、そ、それは」


「いいから」


咄嗟に左腕を後ろに向けたので、無理やり見ると痛がりながら隠そうとした。


「怪我....まさか、罰を喰らったのか?!」


見るとムチか縄で叩かれたのかかなりれていた。


「あ、当たり前です、使用人が主人の命を庇わないでさらには」


「.....」


これは単に俺の両親が悪役貴族とかではないのだろうーーーー同じ人間とはいえ、この世界は階級社会ましてや血統主義。

こういう価値観なのだ、現代社会というある意味洗練された価値観を持ってる身からすればドン引きする。


「ーーーー俺...僕って魔法は使えたか?」


「え?えっと...アルス様は魔法の素質が極めてあるとお聞きしています」


「そうか...治癒?系の魔法の呪文はわかるか?」


魔法があるのなら治癒魔法かそれに似た魔法はあるはずだが、詠唱など知らない

ゲームの主人公たちは当たり前のように無詠唱だしね


「えぇっと...詠唱は人によって違うので....」


え、人によって違うの?

つまり自分で決めろってことか

事前にある詠唱を唱えるなら羞恥心も薄れるが、自分で考えた詠唱を言えなんて


「あ、あのっ!本当に大丈夫ですから!!アルス様にお怪我をさせておきながら命がある時点でーー」


「ーーー主よ偉大なる汝に忠誠を誓い我の魔力を授け、かの者を癒したもう」


中学生時代に発病した際に考えた呪文を、思い切って唱えてみる。

今すぐ死にたいくらい恥ずかしいが、ルアーナのためだ。


「うぉっ」


思わず自分でも驚いてしまうほどの圧を感じた後、包み込まれるような優しさを感じると共に幾何学的な魔法陣が浮かび上がる。


「き、綺麗...」


ルアーナが呟く通り、かなり神秘的だ。

あの白金のマントを着ていた女性で見た魔法陣よりも心なしか複雑な気がする。


ルアーナの腕を見ると白い羽毛が見えたかと思ったら怪我が完璧に治っていた。


「ーーー痛くないか?」


「は、はい!私が悪いのにありがとうございます」


「...何度もいうが、暗殺者が狙ったのは俺だ....両親にもこういうことはやめてくれと言っておく」


「えっ、そ、そんな!元々、私が猫をお見せしたくて端に連れて行ったのですから」


猫?


「ーーーどちらにしろ記憶がないし、ルアーナは僕の使用人だ」


「で、ですが....」


「アルス・ローグレードはルアーナを処罰する気もさせる気もない、いいね?」


「ーーーっ!は、はい」


こういうと権力を誇示する悪役貴族みたいだがーーーーこうしないとルアーナは納得しないだろう。

そういえば、作中に悪役令嬢はいたが悪役子息はいなかったな....なるつもりは無論ないが


「ーーそういえば、記憶がないとのことでしたが....どうして私の名前を?」


「.....」


あ、思わずルアーナの名前を呼んでしまったのだが、確かに不自然だったな....怪しまれた?


「ち、治癒師によると親しい間柄の人の名前は覚えているそうだ...それで覚えていた」


「し、親しい間柄ですか....」


ーーー流石に記憶もないのに勝手に親しい間柄と言ったのは思い上がっていたのか、ルアーナは少し後退りした


「ご、ごめんーーーこんなこと勝手に言ってしまって」


「い、いえ大丈夫です......」


少し頬を赤くさせてルアーナはうなずいた。


「......」


「......」


「ーーールアーナに聞きたいことがあるんだけど.....大丈夫?」


気まずい雰囲気を紛らわす様に俺は聞いた。


「な、なんでしょうか?」


「ーーー前の俺ってどの様な性格だったのか気になって」


そう聞くとルアーナは申し訳なさそうな顔をした。


ーーーーもしかしてアルス君悪役子息だったり?だとしたらその時にルアーナに恨まれてたら利き腕壊死させられるのでは....?


「それは....なんというか口数が少なくーーーー高貴な方.....でした」


口数が少ない?


「それってつまりーーー」


「こ、高貴な方でした!!」


ルアーナは顔を赤くしてそう言った。


確かに前のアルスとはいえ、主人のことをそうはいえないよな....


「そ、そうか....とりあえずーーーー記憶が戻ったとしても、俺は前の様にならないと思うから....よろしく」


「はいーーーーその.....今の方が、かっこいーーーじゃなくて!」


「?」


「い、良いと思います!」


「あ、ありがとう....」


「はい........あ、そのことはティアラ様にも?」


「ーーーーーーーえ?」


「はい、ティアラ・マーガレッド、アルス様の婚約者です」


「えっと....ティアラとはいつ会う予定?」


「それがマーガレッド侯爵家御夫妻とティアラ様が共に、今回の件でこちらに向かっているとのことで....あと数日かと」


「.....」


ーーーー悲報 作中最強敵キャラの次は悪役令嬢と会うらしいーーーーーーこれ転生したばかりだよね?なんだろう、刺された傷が痛む。

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乙女ゲームに転生したモブは愛が重いヒロインたちと王国を滅ぼすようです 量産型勇者 @ninnjinn

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