クロノ
(嘗て出会った黒い
『アレにはどんな
『アレは
『出会ったら決して顔を見せるな、息を潜めてやり過ごすのだ……』
ガウェインは見渡す限りの荒野の上で、馬車を走らせている。
捕らえたアクロを奴隷商人に引き渡す為に、
ガウェインは、先日セレンとの戦いの中で目撃したナニカの事を考えながら、若き日、まだ己が
(あの頃、俺はまだ前回の戦場で初陣を果たしたばかりの若者だった……)
「おいおい……なんだこの状況は……皆……死んでるぞ……」
当時、
「こっちだ! コイツはまだ息があるぞ!」
「おい! 大丈夫か……? 何があった!?」
若い頃から地元では負け知らず、自分の力には絶対的な自信があった……。
「ハッキリ言え! 何を言って……? なんだ……? おい……!? ……馬鹿野郎っ………………! ……駄目だ……死んだ…………」
「待て! 静かにしろ……何か……聞こえる……」
それに……今もだが……当時から俺には大金が必要な理由があったからだ……。
「足音だ! 近づいて来るぞ! 警戒しろっ!」
濃い霧の中、仲間達の
「いったい……この気配は……? ………………おいおい……なんなんだ……コイツは……」
俺も最初は奴に何度かダメージを与えたが、奴は倒れなかった……。
「クソッ! 化け物がっ!」
仲間達は次々にその命を落とし、最後に残った俺は……
「ガァッ……た……たすけ………………家族が……守りたい……俺に……いる……ゆる……てくれ…………死にたくない……たのむ………………」
わずか二度目の
目を覚ました時……戦場では俺だけが生き残っていた……。
奴に生かされ、俺の戦士としての誇りはそこで失われた……。
「ただいま……」
職を失なった俺には
「すまない……お父さんのせいだ……」
最悪のタイミングで職を失した俺には、
結局は…………妻を救うことも出来なかった……。
「黒い
その後の俺は、奴の正体を知るため、仕事の最中に世界中を調査して回った……。
俺は十数年かかって当時、世界最悪の
「
その学者は他とは違う独自の
世界の一部の
かつて我が祖は
言葉を発さず
二足を持たず
地に
天を
世界の
神はクロノカクノミを
それは
選ばれた者達に新たな知恵と肉体を授けた
そのクロノを
今はもう忘れ去られた理由。
それは彼らの中に
俺達の
皆それは知っている……。
だが、
数十年の時が流れ……娘もまた妻と同じ病にかかり、同じ若さで亡くなった……。
俺には金がいる……俺には娘が残した二人の幼子がいる……。
医者いわく、この子供達にもまた妻と娘と同じ病の
もう……家族を失いたくなかった……。
アクロ……この少女にはすまないと思っている……。
今回の仕事で手に入った金で、孫達は救われるだろう、後は
そしてもう一度……。
失われた戦士の誇りを取り戻すために……。
「おお! ガウェインの旦那、助かりましたぜ! これで貴族様との契約も無事、果たせますわ! これから俺達はこの女を貴族様の元へ連れていきますんで、旦那はここいらでお休みになってお待ち下さい、金が手に入ったら戻って来ますんで、またここいらで分け合いましょう……」
「いや、俺も付いて行こう、その貴族の所まで……」
ガウェインには、金以外の新しい目的が出来ている……。
「何だっ……!? 旦那は俺達が、全部持ち逃げするとでも思ってんのか?
その為にガウェインには一つ、知って置かなければいけない情報があった……。
「あぁ、お前達の事は信用してる……。ただ……一度……その貴族の奴の顔を見てみたくなったんでな……。ただの興味本位でな……。代わりに
それならば……と
(金さえ
「なぁ……セレン」
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