第3話 一緒に帰宅
「だから言ったでしょ! のり君は走る才能が有ると」
陸上部の練習が終わり、靖典と飛鳥は並んで帰路に就く。
驚愕の記録を叩き出した靖典は強制的に練習に参加をさせられた。
走り方の基礎は未熟なため、陸上部の先輩から丁寧に1から教えを受けた。
教育がメインの3時間ほどの練習が終わり、靖典の身体は疲弊していた。
「明日も練習に来いって先輩たちに言われてたね」
「そうなんだよ。何だか凄い圧を感じたよ」
「のり君。明日も練習に参加するよね? 」
隣を歩きながら徐々に接近する飛鳥。
「拒否権は無さそうだから参加するよ」
「だよね~~。良かった~~。活躍する、のり君を再び目に出来るのは今後も楽しみだよ!! 」
嬉しそうに胸の前で両拳を握る飛鳥。
「これから一緒に頑張ろうね!! そして陸上で大活躍してバスケ部を見返してやろうよ!! 」
背中の後ろで手を組み、飛鳥は歩きながら靖典の顔を上目遣いで見つめる。
(距離近いな。近くで見ると、かわ。いや、ダメダメ)
飛鳥の上目遣いと可愛さに心を揺られながらも、靖典はその感情を強引に消去する。
「期待に応えられるかは分からないけど。頑張るよ。俺もバスケ部の奴らを見返したいから」
同時刻。体育館付近にて。
「彩乃。今日、一緒に帰らないか? 」
女子生徒の名前は畑中彩乃。高谷の彼女であり、黒髪の美人系の女子生徒である。
靖典の弟である康人に1対1で完膚なきまで敗北した高谷は、その後の練習に全く身が入らなかった。普段の実力の半分以上も発揮できなかった。そのため、珍しく顧問に何度も説教を受けた。チームのエースである高谷は滅多に顧問から説教を受けることは無かった。多くのわがままも通っていた。
しかし、本日の高谷のプレーがあまりにも目に余るものであった。
「う~~ん。ごめんね大和。今日は用事が有って無理かな」
スマートフォンを触りながら、畑中は素っ気なく答える。目線は完全にスマートフォンに向く。
「そ、そうか。前も一緒に帰れなくなかった? その時も用事とか言ってなかったか? 」
「そうだったけ? とにかく最近忙しいから。ごめんね」
スマートフォンの電源を一時的に落とし、畑中は帰路に就くために踵を返す。
「用事が有るかもしれないけど。途中までは一緒に帰れないか? 」
遠くに進む畑中の背中に呼び掛ける高谷。
「今日はそういう気分じゃないから。無理。ごめんね」
あっさり拒否する畑中。
気を遣うように振り返りもせず、無言で正門に進む。
「あっ…」
高谷はただ畑中の背中を凝視することしか出来なかった。彼の背中には深い哀愁が漂っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます