第4話 帰宅後の連絡
ブッブッ。
自宅前で飛鳥と別れて、自身の部屋で寛ぐ中、靖典のスマートフォンが小刻みに振動する。
ベッドから起き上がり、靖典は勉強机に有るスマートフォンの通知を確認する。
『今日は陸上の練習お疲れ様!! 初めての練習で疲れたと思うから今日はゆっくり休んでね!!! 』
連絡ツールのラインを媒介して飛鳥から労いの言葉と一緒に可愛らしい猫のスタンプが送られる
「別に必要ないのに」
嬉しさから思わず笑みを溢しながら、靖典は返信のメッセージを入力する。
『うん! そうするよ!! わざわざ労いの言葉ありがとね!! 』
送信の完了を確認し、靖典はスマートフォンを再び勉強机の上に置く。
ブッブッ。
再び通知を知らせるスマートフォンの振動音が静かに靖典の部屋に響く。
送り主は容易に想像できた。
『いえいえ!! それにしても、今日の練習での、のり君は本当にすごかったね!! 陸上部の先輩達が全く歯が立たなかったよ!! 先輩達も速いんだけど、のり君はそれ以上だったね。私の想像を超える速さだったよ!! 』
称賛の詰まった文章であった。
バスケ部の練習では決して享受できなかった高評価。
飛鳥のラインの文面を無意識に目に留めてしまう。喜びと高揚を抑えるので必死だ。
『たくさん褒めてくれてありがとう!! 嬉しいよ!! 今日はたまたまだったと思うよ』
ブッブッ。
『謙虚だね。決してそんなこと無いと思うのに。のり君の才能と実力だと思うのに』
靖典の返信後、瞬時に飛鳥からメッセージが届く。異常な速さであった。
ブッブッ。
立て続けに通知が届く。
『いきなりだけど。今から電話できないかな? もっと、のり君と積極的にお喋りしたいから!! 』
『そ、それは構わないけど』
テテテテン。テテテテン。
しばらくすると、ラインのメッセージに既読が付き、スマートフォンが高周波の電子音を鳴らす。
「…もしもし」
スマートフォンの画面に突如表示された着信ボタンをタップし、靖典は電話に応答する。
『もしもし!! 声は聞こえてる? 』
普段と変わらない明るい飛鳥の声がスマートフォンを通して靖典の耳に伝わる。
「うん。聞こえてるよ」
『えへへっ。こうやって電話するのって小学生以来だね。何か懐かしい気分』
『今なにしてるの? 』
『お~~い』
自身の部屋で勉強机に座りながらスマートフォンを操作する高谷。
現在、彼女の畑中にラインを送るが、1時間以上も既読が付かない形だ。
「反応が無いから仕方ない。可能性として携帯をチェックしていないことも大いに有るし」
ライン電話を起動し、高谷は畑中に電話を掛ける。
テテテテン。テテテテン。
スマートフォンからリズム良く高周波の電子音が流れる。その音が鳴る間、高谷は無言でスマートフォンを右耳に軽く当てる。
しかし、2分以上電話を掛け続けても反応は皆無であった。自動的にライン電話が落ちてしまう。
「ダメか。それなら———」
次なる手段としてラインではなく電話アプリに切り替え、畑中の電話番号を入力する。
プルルルルッ。プルルルルッ。
ラインとは異なる電子音が高谷の耳に伝わる。
『呼び出しましたが、お出になりません』
スマートフォンから機械的なボイスの説明が流れる。
「クソ! どうして出ないんだよ!! いつも携帯ばかり触ってるじゃないか!! 何で反応が無い! 」
連絡が繋がらない上、本日体験練習で参加した康人に1対1で完璧な敗北を喫したストレスから怒りを露にする。
発散するように高谷は自身のベッドに力強くスマートフォンを投げ付けた。そのまま当たり散らかすように、雑に勉強机のイスも蹴り上げた。
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