第13話
「国王様、先ほど使いのものから知らせが届けられましたね。グレムリー伯爵のもとに、彼自身が作った偽金貨を届けることに成功したと」
「あぁ。奴自身が作ったものなのだから、我々が支払いに使ったって何の問題もなかろう。騙されたと口にするのなら、奴自身の行動こそが人をだますものなのだからな」
「おそらく今頃焦りを隠せていない事でしょう。自分がこれまで行ってきた悪事のすべてを、国王様に握られているも同然なのですから」
彼らの読み通り、グレムリー伯爵はその心の中で動揺を隠せないでいた。
自分の過去の行いのすべてが表になることを恐れるのももちろんであるが、そこから導かれるのはこれまで自分に付き従ってくれた者たちの自分からの離脱を意味する。
周囲の人間から崇め奉られることに快感を感じている伯爵にとって、それを失ってしまう事は何よりも恐れるところであった。
「そしてカレン、伯爵に天罰を与えたなら、聞き入れてもらいたい頼みがある」
「わ、私にですか??私にできることであれば、なんでも!」
やる気満々と言った雰囲気で言葉を返すカレン。
そんなカレンに対してクヴァルが口にしたのは、彼女にとって全く予想外の内容だった。
「うちの息子であるフォード、今は第一王子の座につかせているんだが、あいつと婚約してやってほしい」
「…え?………ええええぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」
無論、予想外の言葉をかけられたカレンはこのような反応を見せてしまう。
「君の人柄はすでにユークから聞いている。私の信頼するユークの推薦があるというのなら、私も安心して君にフォードの事を負かせられる。まだまだ荒い所も目立つ男だが、妃としてうまく支えてやってほしい」
「わ、私が……妃…?で、でもフォード様はどのようにお考えなのでしょう…?私は伯爵様に捨てられた身ですし、フォード様のようなお方にはもっとふさわしい方がおられるのでは…?」
「いやそれが、カレンの話をしたらフォード様すっごく食いついてくれているんだよ。剣術の稽古をしている私が娘同然に可愛がっていると言ったら、ぜひ話をしてみたいと」
「し、信じられない…」
2人から告げられた言葉を聞いて、驚きの表情を隠せないカレン。
伯爵夫人ではなくなった自分がまさか、それから全く日を空けずに第一王子夫人になるなど、夢にも思っていなかった。
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旦那様に勝手にがっかりされて隣国に追放された結果、なぜか死ぬほど溺愛されています 大舟 @Daisen0926
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