第34話 カタツムリはポーカーを楽しむ
※ポーカー回です。素人がルールをYoutubeで2時間勉強しただけですので間違いがあるかもしれません。雰囲気だけです
———————————————————————————————
「貝被じゃん」
僕の友人の、魚類系日本人のスズキと8本足のザトウがプレイヤーのようだ。
「こんなとこでスズキとザトウに会うとは思わなかったね」
「そうだな、予想外だよ、ところでその、手を繋いでる人が彼女?」
ザトウが、僕の横のカリンさんを見ながら聞いてくる。
「違うよ、彼女はこっちの2年のマイさん。僕が手を繋いでいるのが3年のカリンさん」
「なんで貝被は彼女をほっぽって彼女でもない人と仲良さそうに手を繋いでるの?」
スズキが最もなことを聞いてくる。僕もそう思う。
「深い事情があるんだ、聞かないでくれ」
「お、おう、まあいいや、ポーカーやるんだろ、貝被がやるのか?」
「そうなるね」
「こっちは俺が代表だ。負けないぞ、身ぐるみ剥がしてやる」
「お互いに全力で裸にし合おうね」
ザトウと軽口を叩いていると、目の前に光が集まって、またもや見知った人が現れた。
「マイちゃんだー」
「あ、ほんとだ、マイちゃんがいる」
「テケちゃんとココちゃん、2人もポーカーしにきたの?」
現れたのは身長50センチくらいの黒光りする不定形のテケ先輩と、もう1人は見たことないけど、マイさんの友達だろう。ココちゃんというらしい。
「私がやりたくてー、来ちゃったの」
テケ先輩が答える。この人が相手だと全く表情が分からなくて手強そうだ。
例によって、モヤは見えるから多分僕が有利だけど。
「うちは見てるだけでいいかな、そっちはマイちゃんがやるの?」
「ううん、私は見学、彼氏がやるよ」
「マイちゃん彼氏いるなんて聞いてないよ!」
「あー、この前教室に来てた子だ。1年生の。あれ、でもなんで……」
なんで僕は彼女を放って、別の女と手を繋いでいるんでしょうね。
「合コンコースの縛りで事情があって、今浮気中なの。興奮するよね」
「あーそういうのね、分かった、好きだもんね。でも彼氏くんが可哀想かも」
「マイちゃんだから仕方ないね。彼氏くんもそういうのが好きなのかな?」
クラスメイトにもそういう認識をされているんだね。マイさん。ていうか僕まで変な性癖持ちみたいに見られてるじゃん。事実無根の風評被害だ。
僕とマイさんの知り合いばかりで疎外感を感じているのだろうか、カリンさんが気まずそうにしている。励ますつもりで握る手に力を加えると、彼女も握り返してくれた。良かった。知らない人ばかりだと心細いだろうし、気にかけておかなきゃ。
『3組揃いましたので、代表者を決めてください。その後席決めを行います』
僕たちはそれぞれ代表者が前に出て、席決めを行った。
ポーカーのルールはテキサスホールデムだ。有名なルールなので僕もある程度は把握している。プレイするだけなら問題はないだろう。
席に着くと軽くルール説明がされて、まもなくゲームのスタートが告げられた。
◆◆◆
GAME1
SB:100
BB(ANTE):200(200)
a卓 SB ザトウ、スズキ 10000→9900
b卓 BB テケ、ココ 10000→9600
c卓 BTN 貝被、カリン、マイ 10000
POT500
(手札は♡7♠︎Qか)
「コールです」
チップを200場に出す。
「俺もコール」
ザトウが追加で100出す。
「チェックだよ」
テケ先輩は既に出しているのでそのままのようだ。
『フロップに移ります。コミュニティカードは♣︎5♣︎J♡4です』
「ベット、200」
賭けてはきたけれど、ザトウはあんまり良くなさそうだな、不安のモヤが出ている、心なしか、さっきより濃くなっているね。
「コールだよー200」
先輩は変わらずかな。
ここは押してみて、2人の反応を早めに確認しておこう。
「レイズします、800」
僕がレイズしたことによって、ザトウは降りると思う。先輩はどうだろう。一回くらいは見にくるかな。
「フォールド」
ザトウはやっぱり降りた。感情が見えるのはやっぱり有利だ。
「コールだよー800」
テケ先輩は不安が強そうだけど、表情は全く読めないね。不定形だし。
『ヘッズアップです、ターンに移ります。コミュニティカードは♣︎5♣︎J♡4♣︎Qです』
ザトウが降りたのでテケ先輩と僕の勝負になった。
カードが増えたことで、テケ先輩はどうくるかな。モヤは変わってないけど。
「チェックかなー」
様子見してくるか。であれば押します。
「ベット、2000です」
「フォールドだよー、もー無理」
大体分かった。相手のモヤを見ながら自信や不安の有無を判断して、レイズで押せば勝てる。カードに頼らないで、相手の手札を読んでブラフで攻めよう。
◆◆◆
GAME2
SB:100
BB(ANTE):200(200)
a卓 BTN ザトウ、スズキ 9600
b卓 SB テケ、ココ 8800→8700
c卓 BB 貝被、カリン、マイ 11600→11200
POT500
「フォールド」
配られた手札が悪かったんだろう、ザトウが降りた。降りた瞬間に不安の色が薄くなる。降りて安心したんだ。
「コールだよー100」
先輩はさっきよりは自信があるように見える。まあ僕もBBだから行くけど。
(配られた手札は♠︎3♢9、本来なら降りたいけどとりあえずはそのまま進めよう)
「チェックします」
『フロップに移ります、コミュニティカードは♡9♠︎K♡2です』
「ベット500だよー」
フロップに移ってカードが公開された途端に先輩の不安が減ってるから、コミュニティカードにいいのがあったのかな。だとすればKあたりが絡みそうだし、もう役ができてるんだろうな。
僕は9のペアはあるけど、テケ先輩のあの自信に勝てるかというと……。
「フォールドです」
今回は引きます。
◆◆◆
GAME3
SB:200
BB(ANTE):400(400)
a卓 BB ザトウ、スズキ 9600→8800
b卓 BTN テケ、ココ 9200
c卓 SB 貝被、カリン、マイ 11200→11000
POT1000
ポイント状況はほぼ変わらないし、早めに稼いでおきたいけれど……。
「コールだよ」
テケ先輩が400場に出す。そこそこ自信があるみたいだ。僕はというと……。
(手札は♠︎K♢Q、勝負しようかな)
「レイズ、1200です」
追加分の1000を場に出す。
「コール」
ザトウが800追加でベットする。ポーカーらしくなってきてヒヤヒヤするね。
「うーん、コール、だよ」
追加800。テケ先輩は嫌々な感じ。
「レイズします、2400」
追加1200を出す。プリフロップからみんな突っ張り過ぎだよ、降りろ降りろ。
「コー、ル」
ザトウが追加1200、やめてくれ。不安が増えてるだろ?
多分僕と似たような手なんだろうけど、僕にAが無いから僕も不安なんだよね。
先輩は降りるだろうなあ、だとしたら、ザトウとヘッズアップか、嫌だな。
「降りるよー、フォールド」
「チェックです」
「チェック」
ザトウがレイズじゃなくて良かった。
僕は♠︎K♢Q。ハイカードのままでもある程度有利だが……。
『フロップに移ります。♢K♡J♣︎3』
よっし!Kのワンペアは出来た。流石に僕の方が勝ってるだろ。もう一枚来てくれ。Aは来るな!
ザトウは役が出来たみたいだ、モヤから喜びが見て取れる。KかJが絡んでいそうだ。
「チェックです」
「チェック」
『ターンです♢K♡J♣︎3♡6』
ザトウの表情を伺うが、フロップで喜んでいたのに対して、ターンでは変化が無い。2ペア以上なら、もっと喜色が出てくるんじゃない?
「チェックです」
「チェック」
よし、A来るなA来るなA来るな。
『リバーです♢K♡J♣︎3♡6♢2』
僕は変わらず。ザトウは……変化無しかな。
Aペア以上じゃなければ、僕は負けないはずだ。フロップ以降でAは出ていないから、持っているとしたら手札がAのワンペアだった場合だけど、その場合はもっと押してくるんじゃないのか?
押すべきか、勝率はそれなりにありそうだ。チェックで弱気アピールで回して釣り上げるか。
「チェッ…クです」
乗ってこい。
「チェック」
くそ、でも自信がそこまで無いなら、それでも良い。
僕が先に手札を開ける、遅れて舌打ちしながらザトウが手札を開けた。
♢Aと♢Jだ。結果はJのワンペア。
やった!Kのワンペアでなんとか勝てた……。心臓に悪い。
これで僕が1つ抜けたことになる。
◆◆◆
GAME3の後は、ショーダウンまで行かずに割と早い展開で回が進んだ。
GAME7
SB:400
BB(ANTE):800(800)
a卓 SB ザトウ・スズキ 4000→3600
b卓 BB テケ、ココ 2000→400
c卓 BTN 貝被、カリン、マイ 24000
POT2000
さあここまで来た。
テケ先輩はもう後がないから、おそらくこの回で飛ぶ。ザトウも残り少ないから、僕と一騎打ちになる前に少しは稼ぎたいはずだ。もしかするとこの回で全がけしてくるかもしれない。
(手札は♣︎10♣︎Q、悪くない、フラッシュとストレートが狙えるし、ハイカードでも戦えるラインだ)
「コールです」
800出してエンド、さあザトウはどうする?
「コール」
追加400、自身6割、不安4割ってところかな。
「チェックー」
テケ先輩はまだ400残っているけど不安7割。フロップ次第かな。ほぼ次で勝負だろう。
『フロップに移ります。♢9♣︎8♠︎Kです』
全部僕好みのカードだ。残り2枚あるからフラッシュも消えていないしJと6と7の組み合わせ次第でストレートの目もある。できればQを重ねて落ち着きたかったけどしょうがない。
「オールイン、まずは取り返すぞ貝被」
ザトウがこの回で勝負を仕掛けてきた。場に残りの3200全てを出す。さっきより自信の割合が多いように見える。コミュニティカードの目が良かったのかな。なんにせよここは僕も引けないし。チップ差があるからここで負けても断然有利だ。押す。
「オールインしかないからー」
テケ先輩が残りチップ400を場に出す。もう無理そうだね、突っ張るしかないからそうしてる感じ。
「コールで。これで最後にしましょう」
僕は場に3200差し出す。
「まだ続くよー」
「勝手に終わらせんな」
ショーダウンだ。全員の手札が開示になる。
ザトウは♢K♡J
テケ先輩は♠︎2♠︎5
僕は♣︎10♣︎Q
フロップで♢9♣︎8♠︎K。
ザトウはKのワンペアが確定で、追加でKがくればスリーカード。Qと10がくればストレートだ。
先輩は酷い手だけどフラッシュだけは狙える。
僕はフラッシュの可能性があって、Jと6と7の組み合わせ次第でストレートの目もあるが現状はハイカードだから、ザトウに負けてる。残り2枚でフラッシュかストレートを作らないと不味い。
『ターンです♢9♣︎8♠︎K♠︎6』
テケ先輩がしぶとく生き残ってる。
ザトウはストレートの目が消えた。
僕はまだ役がない、フラッシュも消えた。でも6が来たから、Jか7がくればストレートが付く。
最後の一枚で♠︎が出ればテケ先輩がフラッシュで。
Jか7なら僕がストレートで。
それ以外ならザトウが勝つ。
ディーラーが最後の1枚に手をかけ、ゆっくりと捲る。
『リバーです♢9♣︎8♠︎K♠︎6♢7』
僕の勝ちだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます