第27話 マイマイカブリは怒られる

「さて、説明してもらえますか、お嬢様」


 人目を忍びながら彼を家に連れ帰ると、玄関でカリンちゃんに座った目で睨まれた。ひとまず中へ入れてくださいと嘆願して、今はリビングで彼を抱きながらカリンちゃんと話している。


「事情は話せないけど、1晩この子を泊めさせてください。もしかしたら1晩で済まないかもしれないけれど」


『マイさん、このおねーさんはだれ?』


「先ほどは、事情を説明するから彼氏を泊めさせてくれ、と電話を受けたのですが」


「事情というのはいつの時も、話せない事が多いよね。言えない率8割くらいだよね」


『マイさん、いい匂いがするから好き、大好き』


「では、前提が変わったということでよろしいですね、約束と違うのですから私も約束を守る必要が無くなりました。助かります。男の方とひとつ屋根の下というのは緊張するので嫌だったんです。早く追い出して下さい」


「彼はまだ分化してないから問題ないよ」


『マイさん、ぼくお腹すいた、マイさんのこと食べてもいい?』


「では彼氏というのも虚偽だったという事ですね、ますます約束と違いますね」


「真実を知るといろんな人が傷つくよ」


『マイさん好き、ちゅうしたい、ちゅうしよ?』


「私は傷つかないので構いません」


 さてそれはどうだろう。妹分の変態度合いについて来れるのだろうか。ショック死しないだろうか。


 でも話さないとテコでも動きそうにない。参りました。


「引かないでね」


 私は今日の痴態を自分の口で説明するのだった。




 ■■■




「正気ですか……」


 ほら、傷ついてる。言わない事ない。


「彼氏と目隠し食人プレイをしていたら、彼氏が幼児退行して元に戻らなくなったと?」


「まとめるとそうなるね」


「お嬢様が汚れてしまった……」


『マイさんは綺麗だよ』


 なんかさっきからヌルくんが副音声みたいになってる。


『おねーさんも綺麗だよ』


「ありがとうございます、君はお名前は?」


『かいかぶり ぬるみち、12歳です、好きなものはマイさん!」


「ご挨拶出来て偉いですね、私はシマカリンです。よろしくお願いします」


『カリンさんて呼んでもいい?』


「構いませんよ。マイお姉さんとは普段は何をして遊んでいるんですか?」


「ちょっと……」


「お嬢様は少し黙っていて下さい」


『マイさんはね、僕を飴玉だと思ってるの』


「具体的には?」


『僕の指を舐めるのが好きなの。僕はマイさんのものなの』


「なるほどです。他にはどういうことをされるんですか?」


『僕の腕を押さえて、動けないようにしてから、僕の体を舐めるの。マイさんはおへそが好きなんだよ』


「……」


『べたべたのぬるぬるになった僕をカメラでカシャカシャして言うの、思い出は撮っておこうねって』


「……」


『これがびふぉーっていうんだって。そしてその後に、ぼくのおへそを食べちゃうの、この時のマイさんはちょっとだけ怖いんだ』


「……」


『ぼくのおへそを食べ終わったあとに、あふたーって言って、またカメラでカシャカシャするの。すっごいうれしそうだから、ぼくもうれしくなる』


「よく分かりました、ご説明いただきありがとうございました」


『どーいたしまして、カリンさん』


「お嬢様」


「なんでしょうか」


「ギルティです」




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