【十秒見続ければ僕の勝ち】〜魔術が使えない僕はユニークスキルだけでダンジョンを攻略します〜
죽고싶다
第1話
「く、くそっ!!」
僕は洞窟内を全力で駆け抜けていた。背後からは不気味な音が響き渡る。まるで地響きのように、重い何かが接近してくる音だ。
振り返ると、巨大な蛇のような魔物がその黒い体をくねらせながら、壁を擦り潰して迫ってきていた。魔術が使えない僕にとって、この状況は絶望的だ。手に汗が滲み、心臓が爆発しそうなほど高鳴る。
「はあ、はあ...!」
息が切れてきた。足が鉛のように重い。魔物の鋭い牙がチラリと見えた瞬間、全身に冷や汗が流れた。
「どこか、どこかに身を隠せるような場所は...!?」
その時、前方に大きな岩が見えた。それを盾にできれば、何とか一息つけるかもしれない。僕はその岩を目指して、最後の力を振り絞った。
「っ!」
滑り込むようにして岩陰に隠れた。すぐに、岩に激突する音と共に、強烈な衝撃が背中に伝わった。僅かでもタイミングがずれていたら、僕の体は今頃粉々にされていただろう。
「なんて力だよ...!」
僕は心の中で震えながら、呼吸を整えた。しかし、油断は禁物だ。このままではいずれ捕まる。僕に残された唯一の希望、それはユニークスキルの【デスカウントダウン】だ。
『10…9…8…』
僕は岩陰からそっと顔を出し、魔物を睨みつけた。スキルを発動させるには、十秒間、敵を見つめ続けなければならない。魔物はすでに僕の気配を察知しており、鋭い眼光でこちらを捉えている。
『6…5…』
魔物は鋭い爪で岩を粉砕しながら、ゆっくりと接近してくる。僕はその動きをじっと見つめながら、スキルが発動する瞬間を待った。心臓が早鐘を打つように鳴り響く。手汗が滴り落ち、呼吸が乱れる。
『4…3…』
魔物の牙が煌めき、僕に襲いかかろうとする。恐怖が全身を支配するが、ここで目を逸らしたら全てが終わる。僕は覚悟を決め、瞳を凝視し続けた。
『2…1…』
その瞬間、魔物が突進してきた。洞窟が揺れ、足元が崩れ落ちそうになる。だが、僕は目を逸らさず、最後のカウントを待った。
『0』
「――!」
スキルが発動した瞬間、時間が止まったかのように静寂が訪れた。次の瞬間、魔物の巨大な体が内部から爆発するように砕け散り、無数の破片が四方八方に飛び散った。鮮血が洞窟内を染め上げ、重い残響が響き渡った。
僕はその場に崩れ落ち、息を整えた。全身が痺れるような感覚に包まれ、しばらく立ち上がることができなかった。
「助かった...」
僕は安堵のあまり、その場に倒れ込む。魔物から漂う魔力が僕の傷を癒し、痛みが和らいでいく。
このダンジョンの宝は、最初魔物に木っ端微塵にされてしまったから、散らばった魔物の素材でも回収して帰ろう...。
それから一時間後。
僕はダンジョンから無事に帰還し、ギルドの受付へと向かった。素材の鑑定を依頼しつつ、心の底から言いたいことを告げた。
「ダンジョン攻略が、もう辛いです。冒険者として稼ぐの、もう嫌だ」
僕は死にかけのカピパラのような表情を浮かべながら言った。
「えぇ!?白石くん、一体どうしたの!?」
僕が告げた相手は、ギルドの受付の少女、神崎綾華だ。彼女は高校の同級生で、密かに想いを寄せている相手でもある。
「実は、僕は妹と自分の生活費や学費を稼ぐために冒険者として活動しているんだ」
「うん、君が一生懸命頑張っているのは知ってるよ。毎日欠かさずギルドに来て、ダンジョンに挑んでいるもんね」
「でも、それもこれで二年目なんだ。難易度Ⅳから本格的に稼げるって言われているのに、僕はまだ難易度Ⅲで行き詰まっていて...正直、限界を感じているよ」
「うーん。なるほどね〜...」
神崎さんは少し考えた後、何かを思いついたように目を輝かせた。
「あっ、そうだ! 戦力が必要なら、一緒にダンジョンを攻略してくれる冒険者仲間を作ってみたら?」
「え...冒険者仲間?」
それは僕が一番避けてきた道だ。魔術を使えない僕のことなんて、誰も戦力として見てくれないと思っていたから。
「いい提案だけど、僕は魔術が使えないから、誰も仲間になってくれないと思うよ」
我ながら、悲しい理由だと思う。
「ふふっ、何言ってるの? 魔術がなくても、白石くんのユニークスキルはすごく強力だよ。一人よりも仲間がいれば、大分違ってくると思うけどな〜」
「まあ、それはそうかもしれないけど...」
確かに僕のスキルは強力だ。でも、魔術を使える仲間にとっては、僕が足手まといになるかもしれないし...。
「目線だけで敵を倒せるなんて、カッコよくて尊敬しちゃうよ!」
《かっこ…いい?》
「そ、そうかな…」
スキルを褒められているということは分かっているが、彼女の言葉に心が軽く締め付けられるような感覚を覚えた。
「それに白石くんは、こんなところで挫けちゃうような器じゃないでしょ?」
僕は彼女に小声で囁かれた。
なんだろう。今なら難易度ⅣだろうがⅤだろうが、楽々と攻略できるような気がするよ。
「もう、神崎さん! お友達と話してないで、仕事を手伝って!ほら、あの素材の鑑定も!」
同僚に急かされた神崎さんは、奥の部屋に連れて行かれそうになりながらも、僕に笑顔で手を振った。
「ごめんね、白石くん! また明日、学校で話そうね!」
「うん、分かった...」
神崎さんが奥の部屋に引き込まれるのを見送りながら、僕は感謝の気持ちで胸が温かくなった。
「やっぱり、神崎さんは天使だな」
そんな僕に、ゴツい体格の受付のおじさんが鋭い目を向けてきた。
「お若い冒険者様、まだ何か御用ですか?」
「え、いや、特に…」
「それでしたら、他の冒険者様の邪魔になりますので、お帰りいただいては?」
「え?」
背後を振り返ると、苛立った顔の冒険者たちが僕の後ろに並んでいた。その光景を見て、急に恥ずかしさと申し訳なさが込み上げてきた。
「す、すみませんでした!」
僕はそう謝罪し、慌ててギルドから出た。
「くそっ、早く稼げるようになりたい...」
そう思いながら、泣きそうになりつつ家へと向かった。
【十秒見続ければ僕の勝ち】〜魔術が使えない僕はユニークスキルだけでダンジョンを攻略します〜 죽고싶다 @shinitai
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