第30話 誘い

 あぁ、なんて……なんて美しいんだ




 僕は、そう思った。アムダ君の【極マル】が放ったアクティブスキル。彼は【一番】と言っていたから何のスキルかわからない。



 恐らく、アクティブスキルの名前は僕は知っている。だが、元のスキルから著しく離れた圧倒的な威力が刀に宿っている。



 だからこそ、分からない。あの【極マル】が使えばどんなスキルも超常的な威力となってしまうのだろうから。




「……君は最高の研究対象だよ。アムダ君」




 天才と言われた僕にも彼は理解できない。





「……こ、ここまで強いテイマーが存在すると言うの……」




【ハンティングギルド】の女テイマーもビビりすぎて自信喪失しちゃってるね。まぁ、無理も無い。



グレンよりも数段上のテイマーだろうし、とんでもない差が見えたんだね



あの、改造エレモンはきっと本来よりも、ステータスが引き出されるようになっていたはずだろうけど、そんなのは本物の強者には通じないんだろうねぇ。





「ら、らご」




【ラゴラゴン】もアムダ君の実力の高さにビビっちゃってるよ。Gランクもビビらせるのは流石としか言いようがない。


それに僕も感覚が麻痺しているのが、Gランクエレモンを見てもさほど驚かなくなってしまった。




「こ、これほどとはね……」




 カツタマ博士も言葉を失っているようだ。色んな【極マル】を見てきただろうけど、ダントツの上積みだろうし。


 研究者としてはこれ以上ないほどに気になるだろうね





 その後、女テイマーは膝をつき立ち上がることはなかった。




──女テイマーは警察に連れて行かれた




 残ったのは【ラゴラゴン】と僕達三人。






「それじゃ、このエレモンどうする? 僕は研究したいけど、捕獲の資格ないと思うんだよねぇー。アム、じゃなかったイヴはどうする?」

「お、俺は別に……捕獲はいいかなと」

「カツタマ博士は捕獲する?」

「そうだね。捕獲の資格はイヴ君しかないだろう」




 確かにアムダ君しか捕獲の資格はない。でも、彼はそこまで欲しくはないようだ。テラゴラム二体も持ってる人からすれば当然。それに、彼ならそもそも保有しているのだろう。




「ら、らご……」




 アムダ君が気になっているようだけど、本人はそこまでの感じでもないようだし。逃がしてあげるのがいいのだろう




「え、えと、今度は捕まらないようにね……こ、これ、あげる」




 そう言うと彼は【一つのお守り】を手渡した。見たことのない道具だが、きっと【装備】なのだろう。しかも強力な……これ以上捕まらないようにする為の措置かな。




「あ、あの、他にも良いテイマー居ると思うし……こ、この島にも原石は居ると思う、俺ほどじゃないけど」




 相変わらず、一言多いんだよね。まぁ、本当のことだから咎めはしないけれども。【ラゴラゴン】はこちらをチラチラ見ながら、飛んで行った。




「さて、どうしようか? 僕とイヴ君はそろそろ帰るけど」

「その前に少し良いかい? お茶をしながら話をしたいんだけど」




 え、帰りたいけど……、まぁ、良いかな? アムダ君次第だけど。多分、彼は帰りたいだろうな




「少しで良いんだ、お願い」

「うーん、どうするー?」

「え、えと、少し、だけ、なら」





 大分嫌そうな顔してるけども、僕達三人は島の喫茶店に入った。カツタマ博士はお茶とケーキ、僕は紅茶とクッキー、アムダ君は紅茶とケーキを頼んだ。





「うん、イヴ君。【和ノ国】のゴッドリーグを見たことあるかい?」

「え、えと、はい」

「そうかい。【和ノ国】のゴッドリーグは正直言えば、【地ノ国】のゴッドリーグより活発ではないんだ」




 あー、確かにね。言われた見ればそうかもしれない。グレンが圧倒的に人気っていうのもあるけど。


 グレンが現れてから一瞬でリーグ全体のレベルが上がったとはよく言われる。彼がダントツの力でリーグを引っ張ったらしい。



「そ、そうですか」

「単刀直入に言うと……君に【和ノ国】のゴッドリーグで活躍をして欲しい」

「え、ええ……」




……なるほどね。グレンが【地ノ国】を引っ張ったように、アムダ君に【和ノ国】を引っ張るゴッドリーグテイマーになって欲しいわけね。



しかも、グレンの【極マル】と彼の【極マル】。更に彼の方が強いからね。箔もあるしねー。



十分すぎる程の力もポテンシャルもある。もしかしたら、グレン以上の人気を獲得するかもしれないしね。



【和ノ国】は確か【カツタマ博士】の故郷だしね。自身の故郷をレベルを底上げしたい思惑は理解できる。





「あ、えと、お、俺は……」






さて、彼はどう答えを出すのだろう






◾️◾️






「す、すいません、俺には、ちょっと」

「そうかい……流石に荷が重かったかな」

「え、えと、荷は軽い……で、でも、単純に面倒っていうか」

「あ、なるほどね」




 うーむ、【カツタマ博士】にゴッドリーグに来ないかと誘われてしまった。でも、正直言えば面倒なのでやりたくない。



 確かに彼のいう通り、【和ノ国】のレベルは低い。



 確か、前世だと最初の【地ノ国】の人気が爆発したから、ユーザー層を広くする為、続編の【和ノ国】のレベルを下げたんだっけ?


 それに加えて単純にこの世界のグレン人気が高すぎる。【カツタマ博士】は【和ノ国】の出身だから地元を強くして欲しいんだろうけど。



 俺には関係ないし、そもそも島の発展があるし。





「えと、すい、ません」

「いやいや、こっちがいきなり言ってしまったことだよ。先ほどのバーサス感激した。あそこまでの実力があるテイマーが居たとはね。【地ノ国】に過剰戦力があるなと思ってしまってね」

「あ、そ、そう」

「もし、その気になればいつでも言ってくれ。君ならエレメンタルコードもすぐに集められそうだし。ゴッドリーグまでなら余裕だろう。手続きはこっちでやるからさ」

「は、はい」





 随分と熱いスカウトだけど、流石に受けるわけにいかない。最近、島も良くなってきている。



 木々も伸びて、森のようになってきた。そろそろ川だって作りたいし、他にも野菜とか果物とかも育てている。それを売ったり、他のエレモンに食わせたりしたいしやることがたくさんだ。






「ふむ、それではそろそろ行こうか。ここの代金は任せてくれ! それじゃあね、ラリラ博士、イヴ君」




 そう言ってカツタマ博士はお茶やケーキのお金を払って去っていった。そのタイミングで、『ピコン』とエレフォンが鳴った。





『チャンネル登録者が二人目になりました』




 あ、チャンネル登録者が二人になった。そう言えば最初の目的は登録者の様子を見たいだったな。


 まぁ、誰かもわからないのに様子を見るもないか。




──『ぴこん』




ん?





『エレモンのレベルが無事あがりました! こんな方法は初めてでびっくりしました! 知り合いもちょうど一緒だったのですが、彼女も気になってチャンネル登録するみたいです!!』




あーー!! い、居たのか。博士と話していたからちょうどそのタイミングでレベリングをしていたのだろうか!?



しかし、無事レベルが上がったのなら良かった。やはり、ゲームでの経験や知識はこの世界である程度使えることがわかった。



しかも、それは俺以外でも例外ではないらしい。




ふむ、今回はそれがわかっただけでも良しとしよう。ゴッドリーグに誘われた件は一生保留にするということになりそうだけど。




「ここの島はテレポートの場所として登録したし、帰ろ……ホーリーマジックモン。頼む」

「あ、僕も一緒に!」

「え、えと、は、はい」





 俺達は島に帰り、再び開拓を始める。
















─────


本作品はリメイクを考えておりまして、タイトルを変えて投稿を始めました!


急で申し訳ないのですが、ここまで読んでいただきありがとうございます!!


リメイクの方で応援できる方がいたらよろしくお願いします!!



それではまた!



リメイクリンク先↓


https://kakuyomu.jp/works/16818093085708362590

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最強モンスターたちとゲーム世界で『地図にない島』を勝手に開拓物語! 流石ユユシタ @yuyusikizitai3

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