第29話 ギルド

【ハンティングギルド】。ゲームではお馴染みだった敵組織の名前である。人のであろうと野生であろうと珍しいエレモンを奪っては売却をする組織だ。



そして、どこで売っているのか……それはエレモンを改造を目的とする組織である。そういう組織が高値で取引をするのだ。




「見つけたわ。ラゴラゴン……【ラジグル】、【メカドラゴン】」




話をする間もなく、彼女はエレモンを繰り出した。【ラジグル】、全身が金属の部品で構成されているように見える犬型のエレモンだ。


確か、改造エレモンだったな。ランクは一応【A】になる。



メカドラゴンも翼と腕と足が機械になっている。見た目はドラゴン、大きさは2メートルくらいだ。ランクは【A】。




これって、確か改造エレモンだった。【ハンティングギルド】が横流しをし、それによってとある組織が改造してエレモンを生み出す。


それをハンティングギルドにまた売る。エレモンを捕獲しやすいようにするために。



改造のエレモンは通常よりも遥かに強い性能になっているらしいけど。見た感じはそこまでの何かは感じないな。




「おおう、アム……イヴ君、どうしようか? このエレモンは」

「え、えと、俺が戦った方が?」

「そうだね。お願いしようかな」




 ラリラ博士は終始落ち着いている。時折俺の名前をアムダと言おうとするけども……そういえば気を利かせてイヴと呼ぶのだろう。さすが天才、気が回る。




「こ、このエレモンは見たことない……なんなんだ?!」




 カツタマ博士は逆に驚いているな。戦うなら俺の方が良いんだろう。流石にこのまま放置と言うのも目覚めが悪いしな。




「あら? カツタマ博士、それに行方不明中のラリラ博士もいるのね。博士相手だと油断できないわね」



 博士は基本的にエレモンに詳しい実力者ではないと成れない。だから油断をしないのか。


 

 相手の女テイマー、確か【ロザン】と言う名前だった。金髪ロールで片目に眼帯を巻いている。




「でも、私の相手は坊やなのかしら?」

「え、えとはい」

「ふーん、武者マルね。それで勝てると思ってるの?」

「勝てない勝負は、や、やらない主義なので……」

「言うじゃない。クソガキ」




 そ、そんな生意気なことを言った覚えはないんだけど……なんか怒ってる。




「二対一だけど、もう一体ださないのかしら?」

「ハンデ、あった方が、良いかなって……」

「クソガキ……いいわ、世間を舐め腐っているクソガキに、現実の厳しさを教えてあげる。私が勝ったら






──こいつは、今なんと言った……?





 売ると言ったのか。俺の武者マルを……許されない言葉だ。



 このとき、気づいた。



 ──俺は昔病院で一人だった。たった一人の自分を支えた、俺の仲間達、それと一緒に冒険をしたいと俺は思っていたことに。



 守りたいと思っていたことに。



 この現実の世界のエレモンも可愛いし、かっこいい。でも一番はあのとき、病院で一人だった俺を支えてくれたエレモンであることに。




──それに対する加害行為の予告






 こいつは許されない。




 ダメだ、こう言う世間を舐め腐っているテイマーは、心を折る。






「だ、大丈夫? 急に顔怖いけど」



 ラリラ博士が心配そうに俺を見つめている。



「いいえ、大丈夫ではないです。あいつは……存在してはいけないテイマーです」

「あ!? きゅ、急にキレてた!? 君も相手に結構なこと言ってたような……」

「あいつは……存在してはいけないテイマーです。二度と舐めたことを言えないように心を折り、容赦無く叩き潰します」

「あ、うん……」




 俺が出すのは……武者マル。だが、これで終わらない……相手を【倒す】のではなく【叩き潰す】のであれば。



 武者マルを【進化】させる。今の武者マルは極マルを【退化】させている姿なのだ。


 レベルアップで進化をする武者マル。だが、逆に退化をさせることが出来る。エレフォンの機能にて……




「……少し、本気を出そう【極マル】」

「むっしゃ!」




 エレフォンの機能を使って、再び進化する。進化をすることで進化ボーナスでステータスが80上がる。


 そして、【極マル】専用装備を渡す。基本的にエレモンバーサスにおいて、ランクの高さが強さに直結する。


 しかし、ゲームではそのランクの差を補うために、エレモン専用装備などが存在していた。しかも、やり方次第で高ランクでも倒せるほどになる。



「勝とう、俺達はこの世界で最も強いから」

「きわっ……」





【ステータス】

レベル120

「攻撃」711

「防御」701

「魔素」704

「俊敏」723

「生命」713

【隠しステータス】

・オール+99

・進化ボーナス+80

【奥義・極み剣士】

・【剣】と名前の入るアクティブスキル使用時、威力が2.5倍。全ステータス+250

【天下のにゃん宝刀・レベルMAX】

・極マル専用装備

・全ステータス1.5倍(装備のステータスなど全てを足した後に倍にする)

・火系統のアクティブスキル威力1.5倍






 うむ、これなら相手を叩ける。





「ふーん、極マル。グレンと同じなのね。でも、勝てるかしら? この【ラジグル】、【メカドラゴン】に!!」

「……攻撃」






 わざわざアクティブスキルを使用する必要性を感じない。【ラジグル】は俊敏性を上げるスキルを使用しているのだろうが、それは極マルの前では通用しない。




「すっげぇー! アム……イヴ君の極マルとんでもないエネルギーを感じるよ!! グレン以上だ!!!」

「……確かにラリラ博士の言うとおりだ。生きる生命力、活力の異常な高さを感じるよ……これは……グレン君を超えてるね……」




 ラリラ博士とカツタマ博士もバーサスに注目をしている。あまり目立ちたくない思惑もあったが、それよりも相手を倒すことのほうが重大だ。




「【ラジグル】!! な、なに!?」




 【ラジグル】は【ライトニング】と言う俊敏性を上げながら激突するアクティブスキルを使っていた。テイマーの指示を無しで自動で動くように仕込まれているんだろうか?



 まぁ、考えた所でどうでもいい。




 力で抑え込めば





「ただの、純粋なステータスで捕まえられた!?」




 極マルの握力で首を掴まれ地面に激突する。大地が微かに揺れるほどの衝撃により、相手の髪が揺れた。




「改造したエレモンなのに……ステータスが高まってるはずなのに……なんなの、その【極マル】は……」




 純粋なステータスが勝負を支配するのはよくわかった。これはゲームでは同じようなこともあった。




「【メカドラゴン】!!」

「……【攻撃】」





 互いの指示により動くエレモン。



「があが!!」

「きわ……」




 極マルは悠然と構え、差し出した片手によりメカドラゴンの体当たりを受け止める。そのまま、抑え込み、相手のテイマーの方に投げ返した。




「くっ……なんだ、その強さ……破格、無法にもほどあるでしょうッ……」

「改造とか小手先の実力じゃないから」

「言うじゃない……まだ、動けるでしょう!! 動きなさい!!」




 二体を強制的に動かせようとするけど……それではダメだ。




「……当てなくていい。【一番】」




 圧倒的なステータスが繰り出される【アクティブスキル】





【アクティブスキル】

「技名」【奥義・火の粉斬り】

「威力」300

「範囲」単体

「消費魔素」150

「追加効果」50%の確率で火傷にする

「命中率」100

「備考」

「系統」火

「覚えるレベル」1






 当てはしない。そうしたら、あのエレモンは焦土とかしてしまうから。だが、脅しはさせてもらう。





「きわッ……」





 装備させたもう一本の刀。それを抜き、その刀に炎が纏わる。それが辺りを異様に照らし、そのまま超攻撃的なステータスで刀が振り下ろされた。





──空気が蒸発するかのような衝撃





全員が言葉を失うのが、炸裂する前から容易に想像ができた。





「は……?」





相手のテイマーも呆けた声を上げるしかないほどに、俺達は強い。信じられないもの見たように、こちらを見て膝をついた。




首に手を当てて、自分が今生きているのか、彼女は確認をしていた。














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