エピローグ

 数日後、診療所から退院したレインたちは、長屋の修理代の請求書を持ってきた大家からこんな話を聞いた。


「お前らが暴れてた日にな、とうとう異世界から召喚された勇者様が魔王を倒したそうだ」


 四人は顔を見合わせた。グロンドが尋ねる。


「ほう、それで、その勇者はどうなったんだ?」


 彼は凱旋があるなら見に行きたいと言ったが、大家は肩をすくめた。


「戻ってきた彼のパーティが言うには、目的を果たした勇者様は光に包まれて消えちまったとさ。たぶん、元の世界に帰ったんだろう」


 レインは思わず長屋の天井を見上げた。あの本が消えた瞬間を思い出す。


「まさか……」


「君も気づいたか。あの本と、勇者の消失。恐らくタイミングが一致している」


 リアンドルが眉をひそめる。それに対してピップは首を傾げていた。


「えー? つまりあのエロ本が勇者様だったってこと?」


「いや違うだろ」


 レインは思わず吹き出す。


「召喚物はみんな魔王を倒すために呼ばれてる。だから、魔王が倒れ、目的が果たされたから、一緒に帰っていったってわけさ」


 そして、四人は沈黙した。

 しばらくして、グロンドは大きなため息をつく。


「結局、俺たちは何のために戦ったんだ?」


「さあな」


 レインは苦笑いしながら、仲間たちを見渡した。確かに、春画本を巡って本気で戦うなど、馬鹿な争いだったかもしれない。でも、この騒動を通じて、仲間たちの絆は少し深まったような気がした。

 いや、違う。そういうことにしておかないと、やってられないだけだ。


「さて。じゃあこの請求書、どう割り振るか考えるか」


「え?」


 三人が驚いた顔で振り返る。


「はっ。冗談だよ」レインは笑った。「次の依頼で稼ごう。今度はみんなで行くぞ」


 四人は顔を見合わせて頷き合う。

 彼らの冒険が、また始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界春画乱戦 Tes🐾 @testes

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ