第36話 【不死教団】死霊騎士との戦い1
アルフレッドはガストンと名乗る大男と睨み合いながら剣を構える。
「さて、覚悟は決まったかな?」
「決まってなかったら待ってくれるんですか?」
ガストンの問いに軽口で応じながらアルフレッドは状況を整理する。
まず目の前の敵の強さは———
「〖鑑定〗」
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<名前> :ガストン・オーズ
<種族> :デス・ナイト
<ジョブ>:死霊騎士Lv23/60
<状態> :通常
<HP> :350/350
<MP> :167/170
<攻撃力>:160+30
<防御力>:115+80
<魔法力>:100
<素早さ>:121
<装備> :鋼の剣、鋼の盾、隠密の指輪、鋼の鎧、鋼の兜
<特性スキル>:
〖アンデッド〗:Lv―
<技能スキル>
〖剣術〗 :Lv8
〖盾術〗 :Lv2
〖格闘術〗 :Lv4
〖闇魔法〗 :Lv4
〖気配察知〗:Lv4
〖危険察知〗:Lv3
〖魔力探知〗:Lv3
〖魔力制御〗:Lv2
〖連携〗 :Lv7
〖統率〗 :Lv4
〖暗視〗 :Lv9
〖隠密〗 :Lv6
〖回避〗 :Lv3
<耐性スキル>:
〖物理耐性〗 :Lv2
〖闇耐性〗 :Lv3
〖状態異常無効〗:Lv―
<称号> :〖堕ちた騎士〗
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———普通に強かった。
装備に【隠密の指輪】があり、これを使ってアルフレッドの〖気配察知〗スキルを掻い潜ったらしい。
(鑑定成功したけど……スケルトン・ナイトの上位種でCランクか……絶対に勝てないとまでは言わないが正直1人じゃきついな)
「はは、若いのに大した余裕だな!」
ガストンはそう言うと素早く距離を詰めて斬りかかってくる。
振るわれるガストンの剣に、アルフレッドは自分の剣を合わせるようにしていなす。
一度いなされてもガストンの剣は止まらず、今度は横殴りの剣撃が来る。
風切り音と共に襲ってくるそれを、頭を下げて躱し、さらに来る追撃を左腕に着けた小盾で受け流す。
アルフレッドも時折隙を見て反撃するが、ガストンの鎧に跳ね返されてしまう。
ガストンの鎧は全身を覆う、いわゆるフルプレートアーマーと呼ばれるタイプの鎧であり生半可な攻撃は通用しないのである。
(考えろ俺! 焦ったら負けだ!)
剣の応酬を繰り広げながらアルフレッドは〖思考加速〗スキルを発動させながら打開策を考える。
(まともに戦って不利なのは分かった。ステータスで完全に負けてるのが痛い)
「良く粘るではないかっ! 褒めてやる!」
「そりゃ、どうも!」
なおも繰り出されるガストンの攻撃を凌ぎながらアルフレッドは思考を続ける。
(あの鎧も地味に厄介だな……普通の攻撃じゃ跳ね返される。〖鎧通し〗や〖鉄斬り〗ならいけるか?)
物は試しだとばかりにアルフレッドは反撃の隙を見極める。
そして———
「〖鉄斬り〗!」
———ガストンの剣筋を見切り、繰り出される剣撃にカウンターを入れることに成功。
ガストンの鎧の籠手部分を切り裂く。
「ふむ。一撃もらってしまったか」
ガストンは一歩引いて感想を漏らす。
どこか楽し気であり、それほどダメージはないらしい。
「〖鑑定〗」
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・
・
・
<HP> :342/350
<MP> :167/170
・
・
・
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(……まあ、当たったのは腕だしこんなもんか。それよりもダメージが通るってのは朗報だな)
ガストンは積極的に攻撃を仕掛けていた先ほどとは違い、こちらの様子を伺っている。
反撃を受けたことで慎重になったらしい。
その隙にアルフレッドは作戦を練る。
(一撃入れたとはいえ、勝ち目が薄いのは相変わらず……アンデッドの弱点とか突けねえかな……)
アンデッドの弱点として一般的に知られているのは———
【聖水】:
教会で作られているアイテム。
アンデッドや悪魔系の魔物に特効。
質にもよるが弱いアンデッドなら撃退可能。
強いアンデッドでも多少怯ませることくらいなら可能。
ただしアルフレッドは持っていない。
〖ターンアンデッド〗:
〖光魔法〗スキルの中の魔法の1つ。
アンデッド系の魔物に特効。
〖光魔法〗のLv7で習得可能。
ただしアルフレッドは使えない。
———この場で使えないものばかりだった……
(確か、昨日の夜にリリヴィアがアンデッド拘束用の縄を用意していたけど……)
他に使えそうなものとしては【不死教団】捕縛用として、リリヴィアが強化した縄があったりする。
昨日の盗賊の捕縛に使った縄に耐久力を強化する魔法や縛った者から魔力を吸い取って弱らせる魔法を付与してあるのだが……
(その縄、奴の後ろにある馬車の中なんだよな……)
奇襲を受けた際、アルフレッドはガストンの攻撃を躱すために馬車を放棄してしまった。
そのため、馬車の中に置いてある縄も結局使えない。
ガストンは馬車による逃走を警戒しているのか、アルフレッド達と馬車との間に陣取っている。
無理に突破しようとしたらそこを斬り殺されかねない。
(……いっそのこと逃げるべきか? ただ逃げても追い掛けられるだけだから、まず俺が奴を足止めしてメノアさんを近くの村に逃がせば、上手くいけばメノアさんに助けを呼んでもらえる……いや、危険だ。近くの村までけっこう距離があるし、そこまでの道に他の敵が潜んでいたらアウトだ)
メノアはアルフレッドが戦っている間、ずっと彼の数m後ろの位置にいる。
彼女がアルフレッドの側を離れないのは、下手に離れたらそこを別の敵に襲われる可能性があるためだ。
最初に出てきたスケルトン・ナイトを倒した時、これで終わりかと思ったら新手が出てきて奇襲を受けた。
いまはどこに敵が潜んでいるか分からない状況であり、下手に逃げ出すよりも戦える味方の側にいた方が安全なのである。
アルフレッドもそれが分かっているからこそ、敢えて逃げろとは言わないのだ。
「来ないのか? であればこちらから行くぞ。〖衝撃波〗!」
「っ! 〖パリイ〗!」
ガストンの〖衝撃波〗はアルフレッドだけでなくメノアまで巻き込む軌道で放たれたのだった。
それに気付いたアルフレッドは咄嗟に左腕の小盾で無理やり受け流す。
かろうじて軌道を逸らしてメノアを守ることに成功したものの、完全に受け流すことはできなかった。
小盾は破損し、左腕からは血が流れ出す。
「まだまだぁ! 〖強撃〗! 〖隼斬り〗!」
「ちいっ!」
「アル!」
好機と見たガストンが畳みかけるのをアルフレッドは間一髪で躱し続ける。
メノアが悲鳴を上げるようにアルフレッドの名前を呼ぶ。
「やられてたまるかっ! 光魔法〖ライト〗!」
「ぐぅ!?」
「〖鉄斬り〗!」
「ぬっ!?」
ガストンの猛攻の合間を縫ってアルフレッドは反撃に出る。
〖ライト〗はただ単に光を放つだけの魔法であり、攻撃力は皆無なのだが不意を突いて発動させることで文字通り目晦ましができるのだ。
そしてガストンが光の眩しさに怯んだ隙にアルフレッドはガストンの膝を斬りつけた。
足を切り落とすことこそできなかったが、それなりに深い傷を与えたのだった。
反撃を受けたガストンはさらに追撃が来ると読んで防御の構えを取るが、それ以上の追撃はなかった。
〖ライト〗の光で失った視力が戻った時、ガストンの目の前には誰もいなかった。
「逃げた? いや、隠れたのか。」
ガストンの言う通り、アルフレッドは反撃の後全速力でメノアを抱えて少し離れた林の茂みの中に隠れたのだった。
彼は茂みの中に身を伏せるようにして潜み、【ポーション】を飲みながら再び考え始める。
(危なかったが、どうにか凌いだ……とりあえず左腕の血は止まったけど、この後はどうするか……次にまたメノアさんごと狙われたら守り切れん。 ……というか次は俺も死ぬ……)
考え込むアルフレッドにメノアが小声で質問する。
「どうする? たぶんここじゃすぐに見つかると思うけど……」
「ええ。まともに戦ったら俺じゃ勝ち目が薄いです。ただ、戦ったことで分かったこともありました」
「何かしら?」
「少なくともこの近くには、奴以外の敵がいないこと。最初のスケルトン・ナイトの時と違って、さっき俺と奴が斬り合っている時やいま逃げ出した時に戦力を出し惜しみする理由はありません。今の状況になっても他に襲ってくる敵がいないということは、この場にいる敵はあのガストンというデス・ナイトだけだとみていいと思います」
「そうね。それなら彼を撒いて逃げればいいのかしら?」
「いえ、出来たらそうしたいですけど、ここにいるのは奴だけだとしても、村までの道中には別の敵が待ち伏せしている可能性があります。ガストンも追ってくるでしょうし、下手に逃げるのは却って危険です」
「確かに。でもこのままじゃ私も貴方も殺されるだけよ?」
話している間に足音が近づいてきた。
ガストンがここに向かってきているのである。
それに気付いたアルフレッドは同時に一つの作戦を思いつく。
「メノアさん、お願いがあるんですがいいですか?」
「もちろんよ。何でも言って!」
メノアは覚悟を決めて返事をし、アルフレッドは思いついた作戦を話すのだった。
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物語世界の小ネタ:
参考までに現時点でのアルフレッドの<ステータス>はこんな感じです。
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<名前> :アルフレッド・ガーナンド
<種族> :人間
<ジョブ>:斥候Lv27/50
<状態> :通常
<HP> : 96/96
<MP> : 41/41
<攻撃力>: 80+40
<防御力>: 37+60
<魔法力>: 72
<素早さ>:116
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