第20話 【オーク討伐】集団戦
「「「うおーー!!!」」」
「「「オォーー!!!」」」
拠点の入り口で、冒険者とオークの群れが雄たけびを上げながらぶつかり合う。
「〖シールドバッシュ〗!」
襲い掛かってくるオーク達に対し、物見台から飛び降りたエルガーは素早く正面に立ち、持っている大楯を構えて押し出した。
彼の<ジョブ>は【盾士】であり、大楯と全身鎧に身を固めて敵の攻撃を防ぐ盾役なのである。
エルガーの大楯スキルで撥ね飛ばされたオーク数体が地面に転がる。
「敵の攻撃は俺が抑える! お前らは1体ずつ仕留めろ!」
「「「はい!」」」
オークの突撃をエルガーが受け止め、動きが止まったところを魔法使いや弓士が土塁の上から攻撃してかき乱し、敵が崩れたところを入り口の冒険者達が仕留める。
逃げ込んできたガイル班も傷が浅いものはエルガー班に合流して戦いに参加する。
(……すげえ。めちゃくちゃ戦いやすい! エルガーさんが敵の攻撃を受け止めてくれるおかげで、向こうは勢いが止まって、俺達が一方的に攻撃できるようになっている)
向かってくるオークの群れは総数約80体、対する冒険者はエルガー班とガイル班のうち死傷者と怪我人の救護役を除いた合計20人余りと、数にはおよそ4倍の差があるのだが、土塁とエルガー個人の防御力で見事に戦力差を埋めていた。
もちろんオーク達も決して無抵抗ではない。
「土塁に登られた! 援護してくれ! ハイオークだ!」
群れの中に弓兵がいて、土塁の上に陣取っていた冒険者達を攻撃し、怯んだところにオークの上位種であるハイオークが登ったのである。
入り口の戦闘では冒険者側が優勢だったが、土塁の上ではハイオークが奮戦し、2人の冒険者を戦闘不能に追い込む。
さらに後続のオークが数体登り、土塁の一画を制圧する。
(……優勢だと思ったが、やっぱり数の差はデカいな。1人だけ強い人がいても戦場全体はカバーできない……)
「アル、土塁の上に行ってオーク共を蹴散らせ!」
「っ! 了解しました!」
戦況について考えていたアルフレッドにエルガーから指示が出る。
そしてアルフレッドは指示に従い、〖跳躍〗スキルで土塁の上に飛び乗り、〖瞬動〗スキルでスピードを上げ、全速力でオークのもとに向かう。
アルフレッドが向かった時、土塁の上にはオークおよびハイオークが合わせて5体いて冒険者達と戦っていた。
「〖思考加速〗! 〖鉄斬り〗! 〖強撃〗!」
アルフレッドは一番近くにいるオークに向かって攻撃する。
もともと手負いだったそのオークはアルフレッドの連撃を受けて倒れる。
「「「ウオォーー!」」」
オーク3体が一斉にアルフレッドに襲い掛かる。
ちなみに残る1体のハイオークは別の冒険者と戦っている。
「風魔法〖ワールウィンド〗!」
アルフレッドが放った風魔法はオークの1体に直撃するが、そのオークはそのまま向かってくる。
「「「オォーー!」」」
「〖一閃〗!」
「「俺たちもいるぞー! くらえ!」」
3体のオークがアルフレッドを攻撃し、アルフレッドは躱し様にカウンターの斬撃を放つ。
そして、少し離れたところにいる冒険者達が弓矢で援護する。
「ギッ!?」
「〖衝撃波〗!」
「ギァッ!?」
顔に矢を受けたオークが怯み、その瞬間にアルフレッドは斬撃を飛ばす剣術スキル〖衝撃波〗を放って1体のオークを仕留めた。
「「オォーー!」」
「何の! 〖パリイ〗、〖鎧通し〗!」
「ガァーッ!」
「〖一閃〗! 〖強撃〗!」
2体のオークが反撃してくるが、アルフレッドは上手く捌いて、倒すことに成功する。
「ウォー!」
「うおっ!?」
そこにハイオークが襲来、アルフレッドはギリギリでかわす。
「〖一閃〗! くっ! 斬れないだと!?」
アルフレッドはさらに攻撃してくるハイオークに反撃し、その腕を斬りつけるが、思った以上に固く、上手く刃が通らない。
ハイオークは元々頑丈なうえに防御力を高めるバフスキルを持っているのだ。
アルフレッドは数歩下がって若干距離をとる。
「火魔法〖ファイアボール〗!」
「〖狙い撃ち〗!」
そこに後ろにいる冒険者達から魔法や弓矢の援護攻撃が来るが、矢は剣で弾かれ、魔法は直撃するも大して聞いている様子はない。
「〖鑑定〗」
---------------------------------------------------------------------------------
<名前> :
<種族> :ハイオーク
<ジョブ>:豚鬼兵Lv37/40
<状態> :防御力上昇(大)
<HP> :252/395
<MP> : 62/110
<攻撃力>:168 +20
<防御力>:287(205)+ 5
<魔法力>:110
<素早さ>:100
<装備> :鉄の剣、狼の毛皮服
<特性スキル>:
〖オーク〗 :Lv―
〖食再生〗 :Lv4
<技能スキル>
〖剣術〗 :Lv2
〖格闘術〗 :Lv2
〖気配察知〗:Lv3
〖危険察知〗:Lv4
〖過食〗 :Lv6
〖跳躍〗 :Lv3
<耐性スキル>:
〖物理耐性〗:Lv4
〖飢餓耐性〗:Lv2
<称号> :〖暴れ豚〗
---------------------------------------------------------------------------------
(げっ、こいつレベル高いぞ……進化する手前じゃねえか。鑑定成功したのは良かったが、<HP>はヒュドラより上で、<防御力>も高い上にバフがかかりまくってる。 ……バフは〖オーク〗の特性スキルか? 〖食再生〗ってのは確か食事で<HP>が回復するスキルだったよな?)
アルフレッドはハイオークの強さを調べるために鑑定を行ったが、思った以上に強敵だったことが判明する。
ちなみに魔物の場合、<ジョブ>のレベルが最大になるとより上位の種族に進化することが分かっている。
ガキン!
「うわっ!? ……くっ!」
ハイオークと睨み合ったままどうするかを考えていると、脇腹に矢が命中する。
拠点の外側にいるオークの弓兵から狙撃されたのである。
幸い矢は鎧に弾かれて刺さることはなかったが、矢の衝撃でわずかに怯んだところに目前のハイオークが攻撃、それをアルフレッドは慌てて躱す。
(あぶねえ……目の前にばかり注意がいってて、他が疎かになってた)
アルフレッドは矢に注意しつつ、ハイオークの攻撃を躱し、反撃の隙を伺う。
「……〖ナイフ投げ〗!」
「ギィッ!?」
アルフレッドはハイオークの攻撃を躱しつつ左手にナイフを持ち、短剣術スキルの〖ナイフ投げ〗でハイオークの右目を攻撃する。
「〖鉄斬り〗!」
「……アァーッ!!」
右目にナイフが命中し、怯んだところに剣術スキルで追撃する。
ハイオークはナイフを引き抜きつつ、剣を振り回して牽制し、距離を取る。
(やっぱ固いな……〖鉄斬り〗は格上にもダメージが通りやすいスキルなのに……俺の<攻撃力>とあいつの<防御力>とは装備やバフ効果を考慮すると3倍近い差があって、そのせいで大したダメージが通らない。 ……でも右目は潰したし、このまま何度も斬り付ければ……うん?)
ハイオークはアルフレッドを警戒しつつ腰に下げた袋から拳大の大きさの【骨付き肉】を取り出した。
それをそのままバリバリと骨ごと食べる。
食べ終わると、なんとハイオークの右目が再生していた。
(何で……って〖食再生〗か!? 回復するだけじゃなく欠損も治るのかよ!)
〖食再生〗スキルとは、食事をすることで食べた量に応じて、傷ついた体を回復する能力である。
能力の発動には食糧が必要なため、〖HP自動回復〗の下位互換と思われがちなのだが、〖HP自動回復〗と違って欠損部位の再生も可能なのである。
さらに、このハイオークは回復薬代わりに食糧を携帯していたのだった。
「下がれ!」
驚くアルフレッドに後ろから声がかけられる。
その声に従って下がると次の瞬間、
「「〖貫通矢〗!」」
「紅炎魔法〖ブレイズランス〗!」
「グォオォーッ!?」
貫通力の高い矢を放つ弓術スキル〖貫通矢〗が2本と火魔法の上位、紅炎魔法のスキルが放たれ、ハイオークに直撃する。
「「「怯んだぞ! やれえ!!」」」
さらに、別の冒険者達がハイオークに対して魔法と弓矢による集中砲火を浴びせる。
アルフレッドが周りを見ると、ほとんど戦いの大勢が決まっていた。
まだ数体のオークが入り口でエルガー達と戦っているが、次々と倒されており、外から弓矢で狙っていたオークの弓兵達はいつの間にか倒されていた。
アルフレッドがハイオークと戦っている間に、他の冒険者たちが弓矢と魔法で倒したらしい。
「やった! 一時はどうなるかと思ったが、後はあのハイオークだけだ!」
「グオーー!!」
アルフレッドはもう少しで勝てると喜んだが、ハイオークはまだ諦めていない。
ハイオークは冒険者達の攻撃を受けながらも突撃してくる。
鑑定すると<HP>は〖60/395〗となっている。
「とっておきで仕留めてやるよ! 〖鎧通し〗!」
アルフレッドは突撃してくるハイオークに剣を突き刺し、剣に魔力を流し込む
「魔剣能力発動!」
「グアーー!?」
アルフレッドが突き刺した剣から竜巻が発生して、ハイオークの体内を抉り、それが止めとなってハイオークは打ち取られた。
(やった! 錬金術で作った俺の魔剣が敵を倒した!!)
そのころには他のオークも全て倒されており、皆が勝利に沸き上がる中で、アルフレッドは自作の魔剣が活躍したことを喜んだのだった。
——イルドーアの森のダン班がいる地点にて————————————
アルフレッド達が臨時拠点で戦っているころ、ダン班は窮地に立たされていた。
「持ちこたえろ、回復を切らすな! 傷を負った奴は下がれ!」
その時、ダン班は探索中に洞窟を発見し、内部を探索していたのだが、中にオークはおらず、次のポイントに行こうとしたところで、約100体のオーク達に襲撃されたのだった。
洞窟を背に包囲される形で襲撃を受けたため、ダン班は洞窟内に押し込まれる形となり、脱出不可能な状況となったのである。
自力では脱出困難と見たダンは、狼煙をあげるアイテム【発煙筒】を洞窟内から外に向かって投げて、エルガーに知らせ、その後はひたすら防衛戦を行っていたのである。
ダンは最前線で槍をふるい、オーク達を近づけまいとしており、彼の隣や後ろにいる冒険者もそれぞれの武器や魔法で対抗するが、オーク達は数の暴力で押し込んでくる。
(10体くらいは倒したか? くそっ、全然減った気がしねえ!)
怪我をした者は後ろに下げて回復させ、別のものを前線に上げて戦い続けるが、少しずつ洞窟の奥に押し込まれる。
「ダンさん、これもうダメじゃ……」
「弱気になるな! 根性見せろ!」
弱音を吐いた冒険者をダンが叱咤したとき、
ドガァーン!!
大きな音と振動が響き渡った。
「何だ!?」
「グ、ガァ!?」
ダン達は何が起きたのかわからず動揺し、オーク達も同じように狼狽えだす。
そこへ多数のオークを蹴散らしつつ、救援が到着したのだった。
「ダンさん。無事かしら? エルガーさんの命令で救援に来たわ!」
その後、救援に駆け付けたリリヴィアによって残りのオーク達はあっという間に倒され、それを見ていたダン達はしばらく呆気に取られていたのだった。
ちなみに直前の大きな音と振動の正体は、言うまでもなくリリヴィアの範囲攻撃魔法である。
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物語世界の小ネタ:
火系統の魔法スキルは以下のように派生します。
リリヴィアがオークの掃討に使った範囲攻撃魔法は火系統の最上位、紅蓮魔法です。
下位のスキルがLv10になると一つ上のスキルが派生します。
火魔法 → 紅炎魔法 → 紅蓮魔法
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