銀色
葉月士郎
プロローグ
プロローグ
その日は大雪が降っていた。
一歩外に出て見れば、広がるのは一面の銀世界ではなく、灰色に澱んだ雪景色のみ。いつもの目に沁みるような旭光は、この日に限っては顔を覗かせることはなかった。
行き交う人々は皆、寒そうに両の掌を擦り合わせている。通りすがりの老人は、気霜を吐きながら、マフラーを口元に寄せている。
点々と光る街あかりは、吹雪のせいか少し滲んだように見えた。
綺麗に間隔の取れた街灯が、屏風のように広がっている。
その街灯の一つに、黒くぼやけた何かが見えた。
人だった。
黒くぼやけたそれは、おそらく長い髪の毛。女性だろうか? その場から離れるような動きは、一切見えない。
もしやと思い、急いで駆け寄った。
「すみません、大丈夫ですか?」思いがけず口にした。
しかし、それは杞憂だった。
その人は、僕の存在に気づいたのか、ゆっくりと振り向いた。
黒く長い髪の毛は、光沢を放ちながら緩やかに靡かせ、雪景色に溶けるようにしてサラサラと宙に舞っている。僕の方を一瞥するその瞳の奥には、何知れぬ不安を纏っているように見えた。雪のように白い肌、長いまつ毛、つと目、身長は百五十センチぐらいだろうか、ちょうど僕の肩の位置にくる高さだ。そして、彼女は制服だった。全体的に儚さを感じさせるような人物。それが彼女に対する第一印象だった。
「―――ですか?」
「え」
「人が生きる意味ってなんですか?」
銀色 葉月士郎 @HazukiShirou963963
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