僕にとって女の人は恐怖だったし憧れでもあった。
でも京香さんはそのどれでもないようだった。
妊娠したい僕と、生殖医療を研究する京香さん。
自分が自分であるために、自分を他者に差し出さなければ進めなかった二人。
「たまに空しくなるんだ」
「子供をたくさん作れたとしても、このままじゃ、ずっと誰かに消費されて、すりつぶされて、いつか消えてしまう」
自分らしく生きていくことがままならないこの社会で、生産性を期待され、消費されていく命。
人格を否定してまで産むことを期待されるのに、産むことを望むと人格が批判される社会。
はたして、命を「おもちゃ」にしているのは、どちらなのか。
胸を打つほど美しい青の描写と、透明にされる彼女たちの心情が、ひしひしと伝わる作品です。