第7話 僕の知らなかった君


僕は楓の家に向かって無我夢中で走った。


電話は繋がったままだったが、楓の方から何も音がしなくなってしまった。




楓の家の玄関の鍵は空いていた。

ドアを開けると、玄関には楓の履いてるローファーらしきものが脱ぎ捨てたと言わんばかりに散らかっていた。



「楓ー?入るよーー」



僕はどこにいるのかも分からない楓に声をかけた。

リビングにはいない。1階を探したがどこにもいなかった。



楓の部屋は2階だ。きっと上にいる。



僕は階段を駆け上がった。


楓の部屋のドアは少しだけ空いていた。勝手に開けるのも悪いと思いつつ、今は緊急で仕方がない。


僕は勢いよくドアを開けた。




「楓!?」


ドアを開けると、ぐしゃぐしゃな楽譜らしき紙が数枚床の上に広がっており、部屋にある物が散乱していた。楽譜の残骸のすぐ横に、楓が倒れていた。


「楓っ!?!!!」


僕は楓に駆け寄り、息をしているか確認した。

楓は過呼吸を起こしていた。幼い頃何回か過呼吸を起こしていたことがあったので、僕は対処法を分かっていた。だが、今の楓は意識がない。救急車を呼ばないとまずいのか…


「楓っ…楓!僕だよ、分かる??」


僕は楓の肩を叩いて楓の意識が戻るように呼びかけた。しばらく声をかけ続けていると、楓はゆっくりと目を開けて

「か……おる…?」

と僕の方を見た。


僕はほっとして、楓をゆっくり抱き起こした。



「楓、どうした?何があったか話せる?」



僕が声をかけると楓は涙目になってただひたすら

「ごめんなさい」

と謝って泣き出してしまった。



一体何があったんだ。


僕は大丈夫だよ、と優しく頭を撫でながら楓が落ち着くまで声をかけた。

楓は泣き疲れてしまったのか、急にかくんっと体の力が抜けて僕の方に倒れ込んできた。

また意識がなくなってしまったのか心配になったが、すーすーと寝息が聞こえたので少し安心した。



この部屋の物が散乱しているのも、楽譜がぐしゃぐしゃなのも楓がやったのだろうか…

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ホントの君を知ってるのは がおがお @gaogao_05

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