第43話 エピローグ(二章)

 今回はマジで何事も無いのか?

 安心した所で落として来るんじゃないのか?


 俺はもう完全に疑心暗鬼になっている。


「おいあんまり見つめるなよ照れるだろ」


 全く照れていないアメリアがそう言う。


 ここはプラソディー町の病院の一室。

 その部屋に一つだけ置かれたベッドの上に、アメリアが横たわっていた。


 個室とは良い身分である。


「もう気分は大丈夫か?」


 俺は微笑んで、アメリアに声をかける。


「全然だめだあとひと月くらい休養が必要だ」


 可能ならもう一年くらい寝ててもらってもいいんだよ?


 コンコン。


 病室の扉が叩かれる音がする。


「とうぞ」


 俺はその音に返事を返す。


「失礼します。ヤマト団長、ベビシュテン伯爵より”結界通信”で書簡が届いています」


 このタイミングで領主から書簡とじは、嫌な予感がする。


 扉を開けて入って来たカレンテが、簡素な封印がされた手紙を差し出す。

 そして、なぜかその隣にはサイナリアの姿があった。


 俺は封印を切ると、その中身を確認する。


 そしてすぐに閉じる。


 よし! セーーーーフ!!


「ご機嫌伺いの手紙だった。無視だ無視!」


 俺はそう言うと、その手紙を速攻で燃やした。


「そうですか、明日から本格的な捜査がはじまるので、その辺の事も明るみに出るかもしれませんね」


 そう言うカレンテは、なんだか妙に落ち着きがないように見える。

 手紙を渡したら直ぐに出ていくと思ったのに、どうにも様子がおかしい。


「あの、ヤマト団長はすぐに戻られるのですか?」


 カレンテはソワソワしながら俺の予定を尋ねる。


 おっと、これはまさか。


「いや、明日まではここに滞在しようと思う。お前もそっちの方が都合がいいだろう?」


 俺は微笑みながらそう返答した。


「そうでしたか。ヤマト団長、今日はおつかれでしょう?」


 よし来た! この流れは確定演出だ!


「いや、疲れたというほどの事でもないよ」


「いえいえ、本日はしっかりお休みください。アメリアさんは自分が付き添いますので」


 あれ? なんだか思っていた反応と違うぞ?


「いや、いいよいいよ。俺は普通に宿屋で休むし、コイツは別に放っておいても大丈夫だから。お前も明日から忙しいんなら今のうちに休んどけ」


 俺はそう言って追い返そうとするが、


「とんでもない! 自分は今日、何もやっておりませんので、せめてこれくらいは!」


 謎の剣幕に、俺はおもわずたじろいでしまう。

 なんでこんな事で必死に食い下がって来るんだ?


「あたしは一人で大丈夫だから。むしろ一人の方が――」


「いけませんアメリアさん!」


 その声の勢いのままに、カレンテがアメリアの左腕を取る。


「うおお!?」


 驚いたアメリアが身をよじって声を上げる。


「あれほどの大けがです。それに血が足りないと伺っています」


 カレンテは覆いかぶさるようにして、アメリアの首筋に触れる。


「やめろぉ!! 放っ……うっ」


 逃れようと身を起こしたアメリアが、めまいを起こしたのかぐったりとする。


「ほらアメリアさん! 安静にしてなきゃいけませんよ」


 そう言ってカレンテはアメリアを布団に寝かせなおすと、彼女は愛おしそうにアメリアの手を取り、腕を摩った。


 俺はふと目線に気づいて、サイナリアの方を見る。


 目が合ったサイナリアが、にまぁ~~と邪悪に微笑んだ。


 なるほど! そっちか!!


「うんそうだな! 確かにちょっと疲れた気がする! それに、こんな状態のアメリアを一人にするのは心配だ! カレンテのお言葉に甘えるとしようかな!」


 俺は立ち上がると、足早に病室の出口に向かう。


「はい! お任せください!」


 後ろから嬉々とした声が聞こえる。


「ちょっ……ヤマトっ……ぐうっ吐き気が……」


 続いて振り絞るようなアメリアの声が聞こえる。


「アメリアさん! 気持ち悪いならこの自分の手に吐いてもらって大丈夫ですよ!」


「病院では静かにな」


 俺は病室を後にして、病院の廊下を歩く。


 俺はようやく静寂を取り戻し、ポケットから丸まった紙切れを取り出す。


 そこには宿の名前と部屋番号が書かれていた。


 時期に暗くなる。


 晩飯を食ったら、もう一汗流すとするか!


**********


あとがき

https://kakuyomu.jp/users/tenta-kurai/news/16818093085250851373

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