第3話 カウンセリング

 悠人と交差点で別れた後少し歩いたところにカウンセリングを受けれる施設がある。病院とは少し違うが外見は病院に似ている。俺はその施設の中に入り診察を待っていた。


 「井上かなた君」

 先生が来たので俺は先生と一緒に診察室に入った。

 先生の名前は矢野なのは先生。25歳と結構若めな先生で他の患者から共感力が高く話しやすい人柄だと好評な先生らしい。確かに俺もそれには納得していた。おっとりとしているが言葉に説得力がある感じが俺はすごくこの人のことを尊敬するなと思った。


 「どう?学校とか家庭は楽しく過ごせてる?」

 「はい。特に変わりはなく悠人ともいつも通り楽しく過ごしてます」

 「そっか。かなた君が楽しそうに過ごせているという報告を聞けるだけでホッとするわ。先生はかなた君みたいに家族を事件で失うと言う経験はした事がないからかなた君の気持ちを全部理解することはできないと思うけれど、理解したいとは強く思っているからね」

 「矢野先生ありがとうございます。事件直後はもう全てどうでもいいって言いたくなるくらい絶望していましたが、矢野先生のカウンセリングを受けて少し気持ちが落ち着いたんです。だから矢野先生にはすごく感謝しています」

 「改めてそうやってお礼を言われると照れるな。でも気持ちが落ち着いたなら良かった。もちろんかなた君のご家族のような事件がなくなればいいのになって思う事が一番だけれどもしこのような事が起こってしまった場合、私は少しでも被害者の方の支えになれたらいいなって思ってこの職業を選んだの。だから自分がしたいって事ができて先生は嬉しいわ」

 「矢野先生はなんで事件にあった被害者の方の心を救おうって思ったの?何かそう思うきっかけがあったの」

 「うーん、どうだと思う?」

 「わからないから聞いてるんですけど、、」

 「あはは、そうだね。でも少し考えてみよう。先生はさっき家族が死ぬような事件にあったことはないって言ったよ」

 「‥先生は事件ではないけれど何らかのことが起きて家族を失った?」

 「ふふ、どうでしょうね。今はまだ答え合わせはしないかな」

 「何でですか」

 「秘密よ。でもかなた君覚えておいて。今ある幸せはいつまでも続くわけじゃない。どんな形であれ終わりは必ず来る。それは寿命かもしれない事件かもしれない。だから今ある幸せや楽しみを大切にしてね」

 「それは両親を亡くしてすごく思っていることです」


 俺はなぜ今矢野先生がこんなことを改めて言ってきたのか良く理解ができなかった。それに何で矢野先生がこの職業を選んだのかも。今日はもう時間が20時近くまで来ていたので帰ることにした。


 「じゃあ矢野先生また来週来ます」

 「うん。また来週会えるの楽しみにしてるね!今日はあまり聞けなかったけど学校であった話とかいっぱい聞かせてね」

 「話せる面白い出来事があるかは分かりませんがあったら話します」

 「楽しみ!夜道は危ないから気をつけて帰ってね。車とかにも気をつけてね」

 「はい。じゃあさようなら」


 こうして俺はカウンセリングの施設を後にした。

 夜道を歩いている時俺は少し考えていた。何で先生はカウンセリングの先生になったのかを秘密にしているのか。そして矢野先生は事件という形ではないけれど家族を失っているのか。でも事件が起きてから2ヶ月間矢野先生と話してきて今思い返してみれば矢野先生から、矢野先生自身の家族の話を聞いたことがなかった。先生は家族を失い家族を失う気持ちを知って同じ気持ちの子達を少しでもメンタルが壊れないように支えになりたくてなったのか、、、?俺はまだわからずにいた。俺は考えながら交差点の信号が赤だったので止まって待っていた。その時ーーー


 ーーーードンっ!!!

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