第6話 お出かけ

今日は朝からミライは機嫌が良かった。

今日、約束していたおでかけをサキとする予定だからだ。

この後、どうやって遊ぶか考えるだけで、ミライの頬は緩んだ。 

ルンルン気分で朝の支度を終わらせ、いつものように肩からカバンを掛けてミライは出かける。

駅に向かったミライは、電車に乗ってサキの部屋へと向かった。 

前と同じように、同じ場所の壁を注視するとサキの部屋に繋がる扉が現れた。

そして、ミライはサキの部屋の前に立つ。

「ピンポーン」とチャイムを鳴らすと前回と同じように、ドタドタと音を鳴らしながらサキが扉に近付いてきた。 

サキは扉を開けると、

 

「お出かけしにいこ!」


と開口一番に言ってくる。

それに対してミライは、


「うん!」


と返事を返した。


サキは一度部屋に帰ると、あの時見せたブレスレット型のロボットとイヌを連れてくる。


サキはブレスレット型のロボットに対して話しかけた。


「本物のイヌを診てくれる場所を教えて」 


と聞いた。 

しばらくすると、そのロボットから返事が来る。


「シンサツデスカ?」 


「? そうだよ」  

 

サキはとりあえず「イエス」の返事を返した。

すると、


「ワカリマシタ、アンナイヲカイシシマス」


と答えがあり、ブレスレットは赤く光って、光の向く方向に向かえば、目的地に着くらしい。


「着いてきて」


と言いながら、サキはイヌを抱えて歩き出す。

ミライはそんなサキの後をついて行った。


ブレスレットに従って進んでいると、電車に乗ることになった。

ガタゴトと二人は電車に揺れながら、流れていく景色をぼんやりと見ている。 


「楽しみだね」


とサキがミライに話しかける。

それにミライは、


「うん!」


と答えた。

そのまま、二人は何気ない会話をして、電車に乗っている間の時間をつぶしていく。

イヌはサキの膝の上に乗って


「ハッハッ」


と息を切らしていた。


しばらくすると目的の駅に着いたのか、ブレスレットの光がまた動き出す。

それに従って、ミライとサキは動き出した。

ブレスレットに誘導されて、とある街中を二人は進んでいく。

進むこと数十分、彼女らは目的地へと着いてブレスレットは光るのをやめた。

そこは少しボロっちい一軒家の前で、看板などは何もない。

とりあえず、ミライたちはその家にピンポンと玄関口アラームを鳴らしてみることにした。

アラームを鳴らして、しばらくするとある女性が玄関から出てきて、二人を見ると


「子供たちでどうしたんだい?」  


と彼女らに聞いてきた。


「本物のイヌを診てくれるって聞いたの」

 

サキはそう答えた。


「暇な時は診療所もやってるが...どの子を見ればいいんだい?」 


そう聞かれるとサキは、手元にいるイヌを手を突き出してアピールした。


「......」


それを見た彼女はしばらく黙ってしまうが、少しすると、


「分かったよ、入ってきな」


と行って、部屋へと案内してくれる。

それに従って、ミライとサキとイヌは、部屋の中へと入っていった。


「イヌはそこに置いて、二人はそこに座んな」


彼女は二人にそう言って、部屋の真ん中にある台座と、その横にあるイスを順番に指差す。

サキが言われた通りにイヌを台座に置くと、ゆっくりとその女性はイヌの様子を見始めた。

ぐるぐると台座の周りを回りながら、イヌの様子を見ている。

しばらくそうしていると、

 

「終わったよ」  


とミライたちに声かけてきた。

それにサキは食い気味に答える。

 

「ホント!?」


「本当だよ、元気たっぷりだ」  


その女性はそう答えた。

そして

 

「はい、じゃあお金」

 

と言いながら手を差し出してくる。

それを見て、


「あ!」「あ!」


と二人して声を上げた。

どうもお金を持ってきてなかったらしい。

その様子を見てその女性は「ハハハ」と笑い、


「冗談だよ」


と言った。

彼女はゆっくりとイスにもたれかかりながら


「次は親に相談して、イヌを診てもらうか決めるんだよ」


と言ってくる。


「普段はどうしてるんだい?」


とその女性はサキに問いかけると、サキは


「パパがいつもイヌの世話をしてくれるから...

私もイヌの世話をしたくて」


と答える。

 

「いい子だね、今回はお金を取らないから、次は親に相談するんだよ」


「はーい」


そこで会話は終わり、彼女は部屋の片付けを始めた。

二人はその女性の部屋を出て、


「イヌを診てくれてありがとう」


と声を掛ける。

それに対してその女性は、

 

「お礼を言うほどのことじゃないよ、何もしてないんだからね」


と返事をする。

そのままミライとサキは手を振りながら、その女性と別れた。

ミライは、


「いい人だったね」


とサキに声かける。

サキは手に「ハッハッ」と鳴いているイヌを抱えながら、


「うん!」


と答えた。

二人は日差しに照らされる中、住宅街を歩いて、サキの部屋へと帰っていく。

電車の中でも話し合って笑っている二人は、とても仲が良いようだった。

サキの部屋に着くとそこで二人は別れて、ミライも自分の家に帰っていく。

次また遊ぶ約束をするのを二人は忘れなかった。

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ミエルミライ @kuroru15858885

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