第5話 不思議な出会い
「チチチ、チチチ」
アラームが鳴る音でミライは目覚めた。
枕元に開いてある置き時計をメガネをかけて見ると、昼の十二時を過ぎている。
昨日はサキと一日中話していたためか、疲れていつもより長く寝ていた。
昨日は楽しい一日だったため、ぐっすり眠れたのも理由の一つかもしれない。
置き時計を押してアラームを止めようとするが、押してもアラームは止まらなかった。
そもそもそれの設定をしていない事をミライは思い出す。
ならどこからアラームが鳴っているのかと確認すると、カバンの中から音がした。
開けて見てミライは見てみると、カバンの中にいるタマさんから音が鳴っていた。
タマさんの頭のボタンを押すと、アラームは鳴り止む。
ミライはタマさんが「そろそろ起きなさい」という意味でアラームを鳴らしたのかと思うことにした。
そのおかげで目覚めたが、もう昼を過ぎている。
今日は、遠くにお出かけするのはやめようとミライは思った。
ちょうど昼過ぎでお腹も空いている。
いつもの坂で、自販機からご飯を買うつもりでミライは出かけた。
肩にカバンを掛けて、目的地に向かうためにミライは走っていく。
目的地の坂に着くと、ミライは自販機から揚げパンとシュワシュワする飲み物を買った。
そのまま揚げパンを食べながら、ミライはいつものように家に帰っていく。
その帰り道の途中、ミライは奇妙なモノを見た。
これまで見たことがない変わった見た目のロボットが道の真ん中にいたのだ。
そのロボットはミライを見つけると近づいてきた。
ミライはその奇妙なロボットが近付いてくるのを黙って待っている。
そのロボットはミライの目の前に来ると話し始めた。
「あなたはミライさんですか?」
そのロボットは流暢に言葉を喋った。
「そうだよ、あなたは?」
「JN147684168型です」
「え...もう一回言って」
「JN147684168型です」
そのロボットの名前は数字の羅列が続いており、ミライにとって覚えづらい名前だった。
「JN...なんとかさん、どうしてここにいるの?」
ミライは真っ先に疑問に思ったことを問いかける。
「それはミライさんにお聞きしたいことがあるからです」
JN147684168型は丁寧にそう説明する。
そして、質問をミライに投げかけた。
「戸籍登録特別許可証をお持ちですか?」
「こせ...とうろく...分かんない...」
ミライは突然の質問の意味が分からない様子だ。
「そうですか...」
JN147684168型はミライの答えを聞いて、少し考える様子を見せた。
彼は質問の内容を変えた。
「では、最近変わったモノが見えたりしませんか?
何もないところになにかが見えたり」
ミライはその質問に素早く答えた。
「ある!
J...なんとかさん、どうしてか知ってる?」
ミライのその質問にJN147684168型は困ったような表情を見せた。
「その質問にお答えすることはできません」
「そうなの?」
「はい、申し訳ありません」
JN147684168型はそう答えると、本当に申し訳なさそうな格好をしている。それを見て、ミライはそれ以上聞くことはやめる事にした。
「このようなこと、我々としても初めてのことです」
JN147684168型はミライの目を見ながらそう説明する。
「今、説明することはできません」
「いつか、説明できる日が来るでしょう」
彼はそう締めくくった。
丁寧に頭を下げて、JN147684168型は別れの挨拶をしてくる。
それに対してミライは
「さようなら」
と言葉で答えた。
去っていく彼の姿を見ながらミライは手を振っている。
完全に見えなくなると、ミライは少し考えた後に家の方へと向かって行った。
家に帰るとまだ、十四時ごろで時間がある。
ここ数日、何かと色々あってさまざまな人達と触れ合ってきた。
ミライは急に孤独が寂しくなってきた。
明日はサキの部屋にいって一緒に本物のイヌを診てくれる所に行こうと心に決める。
ミライは棚から引っ張り出してきたビデオゲームで遊びながら、残りの時間を消化していった。
そんなミライを勇気付けるかのように、ビデオゲームのアクションに合わせて、ビデオ画面がチカチカと点滅する。
ミライもその事に気が付いていたが、気のせいだと思う事にした。
そのことに怒るかのように画面のチカチカと点滅する速度は増していった。
流石にミライもそのことに気付き、
「誰かいるの?」
と声を掛かる。
それに応えるように「カチリ」と一回、画面が点滅した。
ミライは質問に答えたことで、何かがいることに気付き、とても驚いている。
「誰?」
と問いかけても画面が一回、「カチリ」と点滅するだけだった。
ミライは何かに取り憑かれていることを知った。
「幽霊さん?」
ミライがそう答えると、否定するかのように「カチカチ」と音が鳴る。
幽霊ではない何かがミライの近くにいる。
その何かと、一日中ビデオゲームをしながら話し合い、不思議なミライの一日は過ぎていった。
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