第4話 再会

朝、カーテンの隙間から注ぐ光が目にあたり、ミライは眠りから目覚める。

今日は昨日色んな事があったからか、または疲れからか、いつもよりよく眠れた朝だった。

ミライは、サキとまた遊ぶ約束をしていたため、今日はサキの家に行って遊ぶつもりだった。

昨日訪れたばかりで、今日遊びに行くのは少し気が引けたが、どうしても新しく出来た友達のところに遊びに行きたいミライであった。


いつものように、身支度をしてミライは出掛ける。

行き先は前にサキに会ったあの部屋だ。

ただ、昨日見えなくなった扉がまた見つかるか分からない不安はある。

ミライはとりあえず昨日扉を見た場所まで行く事にした。

昨日行ったばかりなので、行き道はまだ覚えている。

電車に乗ってあの駅で降り、歩いてその部屋の前までミライは来た。

相変わらず、扉があった場所にはそれが見えない。


ミライは見えている時と、見えていない時の違いを考えてみた。

その時、見えた時は目新しいものばかり見える景色に興奮して、よく注視をして壁を見つめていたことを思い出す。

なので、ミライはその壁をよくよく見て観察する事にした。

すると、ぼんやりと扉のようなものが浮かんで見えてきた。

さらに、注意深く観察すると、くっきりと扉が見えてくる。

ちゃんと目で注意深く見ると、扉が見えてくることをミライは知った。

今日は見えた扉にノックをして、サキが返事をするのを待つことにする。

ドタドタと音がした後、「ガチャリ」と扉が開き、サキが扉から出てくる。


「また、会ったね!」


サキは元気にそう言った。


「うん、約束だから」


ミライはそう返す。


「入ってきて」


サキは手招きしながらそう言った。

それに従って、ミライは部屋の中に入っていった。


「これはタイガーロボット」  


部屋の中では昨日の続きと言わんばかりに、サキが持っているロボットの紹介が始まった。


「このロボット、手が動くの」

 

「へー」

 

「他にも動くロボットがいるから探すね」



そう言うと、後ろの棚をガサゴソと漁っている。

その部屋には棚がいくつもあり、その中には色々なロボットや雑貨が入っているようだった。


「このロボットは首が動いて...」


そうして、ミライはサキから色んなロボットを紹介してもらった。

何かの生き物を模したロボットだったり、何かの乗り物のミニチュアだったり、色々だ。

ミライは膝にイヌを乗せながら、その話を聞いていた。


気付けばとても時間が経っている。

イヌを乗せていたミライの足が痺れてきた。

サキも喋り疲れたのか、もうロボットの話はせず、他のことをしようとしている。


「色々話したね」


「うん、色んなロボットの話が聞けた」


「そうだね!」


サキはそう言うと「ハハハ」と声を出して笑う。


「今度はミライの話を聞かせて」


「どんな話?」


「うーん、例えば...あ!」


サキは突然思い出したかのように声を上げた。


「そういえばどうやって部屋まで入ってきたの?」


「あの、扉が見えたの」


「扉?」


「そう、グーンって壁をよく見てみると、扉が見えるの」

 

ミライはそう身振り手振りにつけて説明するが、サキにはピンときていないようだ。

サキはなぜ疑問に思っているか説明した。


「パパに聞いたんだけどね、この部屋には入ってきていいって決まっている人しか、入ることが出来ないんだって。パパと僕しか入れないって言ってたよ」


「うーん、そうなの?」


「そう」


二人して首を傾げ出た。


「なら、なぜ入って来れたの?」


「...わかんない」


結局、真相は分からずじまいで話は終わり、二人は別の話に移る。


「今度はいつ遊ぼっか」

 

「いつでもいいよ」  


「それじゃあね...あっ!」


サキはイヌを見ながら話す。


「本物のイヌを見てくれる場所があるってパパが言ってるのを昔聞いたの」


「本物?」


「そう、本物」


サキはそう答える。


「本物って何?」


「本物って、多分すごいって事だと思うよ」


「パパがこのイスは本物だっていってたよ」


サキは自分が座っているイスを見てそう言う。

サキは笑顔で話の続きを話し始めた。


「今度、そこに遊びに行こう」  


ミライは思った疑問を口に出す。

 

「どこにあるか知ってるの?」


「大丈夫、この子が教えてくれるから」


そう言うと、棚からブレスレット型のロボットを取り出した。


「イキサキハドコニシマスカ」


とそのロボットは喋りだす。


「まだ、だめ。別の日にする」


「ワカリマシタ」

 

そう会話すると、サキはそのロボットをまた同じ場所に戻した。


「次は、本物のイヌを見てくれるところに行こうね」


「分かった!」


「約束」


「約束」  


二人は見つめ合いながらそう口にした。


「またね」


と手を振りながら、ミライはその部屋を後にする。


ルンルンと鼻歌を鳴らしながらミライは帰路についた。

今日はいっぱい友達と話せて楽しかった、とミライは思った。

ミライの帰る足取りは軽やかだ。

嬉しげに、近くの光る掲示板がカチカチと点滅した。

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