第2章 少しずつ開かれる心 part.2

次の日、真奈は教室に入るとすぐに翔太の姿を探していた。自分でも気づかぬうちに、彼ともっと話したいという思いが芽生えていた。翔太もまた、彼女のことを気にかけており、彼女が教室に入ると、すぐに気づいた。


「おはよう、真奈さん。今日もいい天気だね。」


真奈は彼の声に驚きながらも、小さく笑みを浮かべた。「おはようございます……」


その日、二人は昼休みも一緒に過ごした。屋上での時間が、二人の間に静かな絆を育んでいった。翔太は、真奈が少しずつ心を開いてくれることを感じ取り、彼女の隣で過ごす時間が特別なものになっていくのを感じていた。


真奈もまた、翔太の優しさに触れるたびに、自分が少しずつ変わっていくのを感じていた。彼の存在が、彼女にとって欠かせないものになりつつあった。


しかし、その優しい時間が続く中で、真奈の心には一つの不安が芽生えていた。翔太との距離が近づくにつれ、彼女は自分の過去が彼に知られることを恐れ始めていた。もし彼が、自分の傷を知ってしまったら……。


その思いが彼女を躊躇させ、心を完全に開くことをためらわせた。それでも、翔太の存在は確かに彼女を変え始めていた。彼に対して感じる温かさが、真奈の中で静かに芽吹いていた。


そして、彼女がその思いに向き合う覚悟を決める時が、静かに近づいていた。


次の日、翔太は真奈に小さな紙片を渡した。そこには、「放課後、少し話がしたい」とだけ書かれていた。真奈はその文字を見つめ、一瞬戸惑ったが、やがて頷いた。


放課後、二人は再び図書室で顔を合わせた。だが、今回は本を探すのではなく、翔太が真奈に話しかけるための場だった。彼は、真奈の目をまっすぐに見つめながら、ゆっくりと話し始めた。


「桜井さん、僕は君のことをもっと知りたいんだ。君が何を考えて、何を感じているのか……でも、無理に聞き出そうとは思ってない。だから、君が話したいと思った時でいいんだ。」


真奈はその言葉に驚き、そして少しの間黙っていた。彼の優しさと真剣な瞳が、彼女の心を揺さぶった。だが、同時に心の中にしまい込んでいた不安が再び顔を出した。


「……私は、話せるようなことは何もないんです。」


真奈はそう言って、視線を落とした。過去の記憶が、心の中で重くのしかかっていた。それでも、彼女の中に少しずつ芽生えていた感情が、翔太の前で自分をさらけ出したいという思いをかき立てた。


翔太はその言葉に対して、強く否定することもせず、ただ彼女の言葉を受け入れた。


「無理に話す必要はないよ。ただ、君が少しでも楽になれるなら、それでいいんだ。」


その言葉に、真奈は少しだけ肩の力を抜いた。翔太が自分を理解しようとしてくれていることが、彼女にとってどれだけ救いになったかを、言葉では表せないほどだった。


その日の帰り道、真奈は家に帰る足取りがいつもより軽く感じられた。彼との対話が、彼女の中で新たな希望の光を灯していた。


真奈が自分の気持ちを整理している間に、翔太もまた、自分自身と向き合っていた。彼もまた、誰にも話していない過去を抱えていた。そして、その過去が、真奈に心を開かせようとする中で、彼自身もまた勇気を持って向き合わなければならないことを感じていた。



𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭...

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心に咲く花 りぃ @rii_

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