雨の境界
岸亜里沙
雨の境界
私はよく雨の境界を探す。
それは雨と晴れの境目。
なかなか見つからないけど、
車で走っていたりすると、
たまに見つけられたり。
だから私はその度、車を停めて
雨の降る場所から、
晴れている向こう側を眺めたり、
晴れている場所から、
雨の降っている場所を眺めたり。
それはまるで、
自分が異世界に迷い込んだかのような
奇妙な錯覚に陥ります。
「だから何?」って言われたら
それまでですが、
でも私はこの雨の境界が大好き。
この前、
私は少し不思議な体験をしました。
それは自宅近くで
偶然雨の境界を発見した時です。
私が歩いて雨の境界へ向かうと、
雨の降っている方から
こちらに向かって来る一匹の猫が。
雨に濡れていても分かる鮮やかな毛並み。
その猫と雨の境界で向かい合うと、
猫は「ニャー」と鳴きました。
私は目を疑いましたがその猫は、
数年前に亡くなった私の飼い猫。
「リリ!」
私は叫びました。
だけど私がリリに近づこうと、
雨の境界を跨いだ瞬間、
リリは水蒸気のように
ふわっと消えてしまったんです。
幻かと思いましたが、
でも確かにあれはリリでした。
あの毛色、
あの鳴き声、
あの佇まい。
リリと過ごした記憶が
鮮明に蘇りました。
きっとリリは
雨の境界に護られながら、
世界を旅しているんだな。
私は今日も雨の境界を探します。
またリリに会える日を信じて。
雨の境界 岸亜里沙 @kishiarisa
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