第5話 ゴキブリと人間

 「お母さん、これどこにしまうの?あっ、祥。ちょっとこれ持ってて」

「え~。なんでよ、姉さん。まぁいいけど」

 姉さんは持っていた瓶を僕に渡す。中身はジャムだ。甘くて美味しそうだな。

「兄さん、兄さん」

「どうした?」

 弟が僕の服を引っ張る。

「ゴキブリ」

 弟が指さした方向には真っ黒なゴキブリがいた。

「えっ、ちょっと待って。姉さん、姉さん」

 僕は慌てて姉さんを呼ぶ。

「も~、だらしないわね」

 そう言って姉さんは何も躊躇うことなくゴキブリを叩き潰した。

「あ~、気持ち悪い。ちょっと捨ててくるから祥、二三の面倒みておいて」

「は~い」

 二三は僕の手をギュッと握る。そんなにゴキブリが怖かったのだろうか。

「なんでゴキブリを殺しちゃうの?」

 二三は不思議そうな顔で聞いてくる。別にゴキブリが怖いとか嫌だとかそういうものではないのか。

「なんで、って…。確かになんでなんだ」

 僕は思った。人間はなぜゴキブリを嫌うのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Gの戦略 @fur_kiyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ