第4話 三号機と人間
二号機が潰されてから一か月後、改良に改良を重ねた三号機が完成した。一号機と二号機の性能が全て含まれている。そして一番のポイントは、リボンをつけたというところだ。
もし、三二郎が生きてリボンをつけたのならこんな見た目だったのかと思い、少し笑みをこぼす。
「それじゃあ、行くとするか」
最後だ。ラストだ。
せっかく造った二体はすぐに潰されてしまったため、三号機もすぐに潰されるかもしれない。だが、これはかなりの自信作である。人間はリボンを可愛いと思っているらしいし、これなら絶対に好きになってもらえるはずだ。
僕は両頬をペチンと叩く。もうあの時とは違う。今度こそ人間に好きになってもらうんだ。
「丁度、人間はいないか」
人間がいないことを確かめ、三号機を発進させた。静かに、少しずつこの部屋の出入り口の方向へと進ませていった。
順調だ。このまま部屋を出て、二階へ上がろう。そう思っていた。
「ただいま~」
現れた。人間だ。真正面に向かい合う。
まさかこんな所で会ってしまうとは。とっさの出来事でコントローラーを落としてしまった。
つまり、視界の開けた部屋のど真ん中で三二郎の動きは停止したのだ。
―グチャ
分かっていたことだろう。壊されることも、あれがロボットだということも。でも、あまりに似すぎていたのだ。
三二郎が死んだあの時の音に。
その場に留まっていれば良かったんだ。それなのに僕は思わず三号機の元へ走っていってしまった。あの時のどうしても重なってしまったんだ。何もできなかった自分の姿も。
「さぶじろぉ!」
―ギュチ
…こうなったのは当然のことだ。
僕は三号機と同じように人間に潰された。全身が痛かった。しかしそれは一時のことであり、段々意識が遠のいていった。「あぁ、自分は死ぬのだ」そう思った。
「祥太郎!」
姉さんの声だ。心配して来てくれていたんだ。
「ごめん…。姉さん」
残っている力を振り絞って、声を出す。聞こえていたのかなんて分からない。ただ、僕の耳には姉さんの叫び声が聞こえた。
あぁ、終わってしまったな。
ごめん、姉さん。一人ぼっちにさせてしまって。
ごめん、三二郎。幸せに生きるなんて、あと少しだったのに。
死ぬ間際で思った。この世界で一番恐ろしく残酷なのは人間なのだ、と。
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