第3話 二号機
「姉さん、今日も行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
この一週間、二号機経ちの改造と並立しながら、毎日のようにあの場所へ行った。
毎日行ってみて、そこで僕は二号機たちにカメラを付けることにした。毎日毎日同じ場所で見れる光景には限りがある。だからといって僕自身の行動範囲を広げるのには少し躊躇いがあるからだ。
「行くぞ、二号機」
僕はあの場所から再びロボットを発進させた。今回はより遠くを観察したかったから人がいない時を見計らって。
発進させていったが、一階には人がいないっぽい。このことは何となく予想していたから、造った三機すべてには、階段を登れるようにしておいた。今回はカメラがついていることもあり、操作がしやすい。
「ここが二階か」
大体の感覚で二号機を動かしていると、少し明るくなっている部屋があった。僕はその方向に二号機を向かわせる。
「見てみてこのお人形さん、可愛いでしょ」
ラッキーなことにドアが開いていた。遠くへ行っても音声が聞こえるようにしておいて良かった。うっすら聞こえる声をたどりに部屋の中へ入ってみる。丁度、隠れやすそうなところがあったのでそこに二号機を移動させた。
「ほんとだ~、このリボンとかすごくかわいいね」
「確かに。あっ、この服も着せてみよう」
少し聞き取りづらかったからもう少しそばに行こうと思って二号機を動かした。すると、一気に画面が揺らぐ。
どうやらすぐ下は足場が悪かったらしい。二号機は体制を崩し、話をしている人間たちの目の前に転がった。
「いやー!!」
二号機が落ちたと同時に大きい悲鳴が鳴り響いた。その声に驚いている間に、
―ギュチ
二号機が潰された。ショックでしばらく口が開いたままになってしまった。今回もあまりにも呆気なく終わってしまった。
僕は重い足を頑張って動かしながら、家に向かう。二号機が潰されたことはショックだったが、今回は大きな収穫があった。
それは、人間はリボンというものを「可愛い」と思うということだ。次はこれを生かした作戦を練る。
「ただいま、姉さん」
「おかえり、祥太郎。良かった」
「えっ、何が?」
姉さんは安堵した様子で言う。僕は思わず首をかしげた。急にそんなこと言って。何が良かったんだろう。
「祥太郎だって、いつ死ぬのか分からないんだから」
姉さんに言われて僕ははっとした。確かにそうだ。下手に出ていけば一瞬で殺される。そんな世界の上にいるんだ。
忘れかけていたが、絶対に忘れてはいけない。まだまだ僕たちゴキブリは人間に嫌われているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます