第三十一章 その後

私が目を覚ました時は昼過ぎだった。


ふっと横をみると、紫月様がまだ眠られていて、私は驚いてしまう。


私の小さな悲鳴に紫月様が起きる。


私はなぜここで眠ってしまっているのだろう。


「御狐神様は!ヴィナーヤカは!どうなったのですか」


「御狐神様は一命をとりとめたよ。ヴィナーヤカも消えた」


「倒せたのですね!!」


「一体はな……」


私は前のめりになっていたのだが、一体という言葉に不穏なものを感じて、嫌な予感がする。


「ヴィナーヤカってもしかしていっぱいいます?」


「いや……11体だ。十一面観世音の対だから」


私は、布団の中でゲンナリする。


紫月様は、クスクス笑いながら、


「そんな簡単にいったら何世紀も戦ってねーってー」


と、私の髪で遊ぶように指に絡めたり解いたりしていた。


「神も人も、心は複雑なのよ。まあ、今回月読様のこじれ、どうにかなりそうで、俺は満足だけどな!」


紫月様は、よっと勢いよく起き上がり、私に笑顔で振り返りながら言った。


「ということで、これからもヴィナーヤカ退治協力、あとは、刀持ちよろしくな、神樂。ほら、飯だ飯!」


私は紫月様の調子の良さに笑ってしまう。そうか。まだこの生活は続くんだ、そうだよね。


「紫月様の刀持ちかぁ」


気づけば私は、右手の真ん中の指に光る指輪を嬉しそうにみつめていた。



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幽世の鬼美童 加ヶ美敬子 @kishinnoshizuki

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