第三話「だいすきなあなたへ」2
さりとて、行動を起こすのは簡単ではなかった。
折座屋はどこか鬱々とした気持ちで、壺を拾った場所の周辺を歩いていた。
すなわち、ようすけと出会った場所の周辺を。
けれども、ようすけと再会する事は簡単ではなかった。彼の事を何も知らないのだっから当然だ。
見た目はおそらく、八から十歳程度だろうと思われる。もしかしたら、もっと低いのかもしれない。
このあたりに住んでいるのは間違いないのだろうけれど、では具体的にどこに住んでいるのか、何時くらいにうろついていれば会えるのか、全くと言っていいほどわからない。
つまり、ようすけについてはほとんど知らないという事になる。
当然だ。ようすけとは赤の他人で、たまたま出会ったに過ぎないのだから。
お節介、余計なお世話、くだらない横やりを入れるべきではない。
生人ならそう言うだろう。ただし、余計なお世話だろうとなんだろうと助けられる可能性があるのなら助けるべきだ。
それが、折座屋の思う正しさなのだから。
さて、本日は休日。先述の通り朝から壺を拾った場所の近くをうろつく折座屋。
がっしりとした大男が意味もなくさまよっている姿は、第三者の目にはどう映っていた事だろう。
おそらく、だいぶ怪しかったに違いない。
とはいえ、そんな事を気にかけるほど折座屋は神経薄弱な男ではなかった。
というより、頭の中は先ほど述べた通りの事でいっぱいで、周囲を気にする余裕なんてなかったという方がいくらか正確だろう。
「何をしているんだ、俺は……」
折座屋は溜息を吐き、くるりと振り返る。
帰ろうとした、まさにその時だった。
後ろ姿だけだったけれど、ようすけを見付けたのだ。
なぜそう確信を持てたのかわからかなかった。けれど、あれがようすけであるという確たる自信があった。
折座屋はその小さな後ろ姿を追った。
けれど、すぐに見失ってしまった。どこへ行ったのだろう、とあたりを見回す。
しかし、ようすけの姿は見付ける事ができなかった。体が小さいからだろうか。
「ようすけ……どこに行ったんだ?」
折座屋は首を傾げ、考える。が、すぐに匙を投げる。
こういう思考を使った事は、自分がやるべき事ではないと思ったからだ。もっと得意な奴に頼んでみよう。
それはさながら蛇のように 伏谷洞爺 @kasikoikawaiikriitika3
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