バイトの奴が出勤しねぇ

白川津 中々

◾️

バイトの阿形君が今日も休んだ。


今月5度目の無断欠勤。電話には出ない。タスク範囲は狭いが少ない人員で回している小さな会社だ。いなければ困る。それを知らないわけでもないのに、責任感はないのだろうか。ないのだろうな。あれば毎日出社する。

これが高校生くらいなら「仕事をなめているな」で済む話だが阿形君はもう34になる。人生どうするつもりなのだろう。嫌な事から逃げ続け、それで何を得るつもりだ。これまで生きてきて彼に光が当たった瞬間が少しでもあったのか。恐らく、皆無。だらしない顔立ちと体躯。服装、立ち振舞いに半生が描かれている。惨めなものだ。


あぁしかし、彼のように休めたら、無責任に、自由に生きられたなら、俺も肩の荷が下りるかもしれないと考えなくはない。明日の事など知らずに酒を飲み、いざとなったら死ぬ。そんな破滅も悪くないなと思ってしまうのだ。何故働き面白くもない日々を過ごすというのだ。何が楽しいわけでも、目的があるわけでもないというのに。




「辞めるか」




声に出す。

しかし、きっと俺は仕事を辞めはしない。常識が、世間体が、退屈な毎日が、俺を掴んで離さない。


苦しみだけが我が人生。


きっと誰もがそうなのだろう。


阿形君は電話に出ない。


皮肉でもなんでもなく、俺は彼が羨ましい。

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