第12話 番外編 3
瑠生さんとのご飯デートを何度かした後、瑠生さんの誕生日が二か月後だと知った。
瑠生さんの誕生日に何を贈ろう。何処へ行こうか、と考えて、瑠生さんの好きな物や、欲しい物が無いかを聞いてみたが、色よい返事はなかった。
まず、好きな物を聞いてみた。
「俺の好きな物?ユイさんだねえ。え、あ、ダメなの?物?飲み物とか?最近、ずっとお茶系が好きなのよ。抹茶とか、ほうじ茶とか、紅茶も好きねえ。おじさんになってるのかしら。ユイさんはやっぱりコーヒー?最近、ユイさん、お茶も好きじゃない?この間、不思議の国のアリスの飾りつけの店をみたのよ。お茶会って楽しそうだから、ユイさんとお茶会したいかな」
次に好きな食べ物を聞いてみた。
「好きな食べ物?うーん、甘い物。プリンとか?後、パイ。俺、カスタードが好きなのかしら。ユイさん、たまにシュークリームとか無性に食べたくならない?俺だけ?夜中とか急になっちゃうのよ。やっぱりお疲れなのねえ。ユイさんはさっぱりした物が好きでしょ?」
そして欲しい物を聞いてみた。
「欲しい物?うーん。時間かしら。ユイさんと一緒にゴロゴロしたり、のんびりお出かけがしたいのよ。ユイさんがにゃーんって言って甘えてくれたりとかしたら、俺、超幸せ。おうちで、もこもこパジャマみたいなのユイさん着る?俺、買っちゃおうかしら」
「え?時間以外の欲しい物?物で?えー。うーん。ユイさんじゃ駄目?物じゃないかあ」
瑠生さんからの分かりやすい様な、全然分からないような答えを貰い、私は「どうしよう」と考えていた。
瑠生さんは私よりも年上で、趣味はのんびりしたりすることが好きみたいだ。お茶会のやり方は分からないので、携帯でポチポチとお茶会を調べれば、お高いホテルのアフタヌーンティーが出て来た。
アフターヌーンティーか。確かに豪華で特別感がある。うん、良いかもしれない。
ああ、でも、のんびりしたい瑠生さんはホテルよりもピクニックの方が好きだろうか?困った。
そういえば植物を見たり、熱帯魚を見たりするのが好きだと言っていた。植物園や大きな公園に誘ってみようか。天気の心配をしないでいいように水族館がいいのか。
うん、水族館か植物園、そして甘い物だ。
プリンかパイの美味しいカフェに行くか、天気が良いならパイを買って外で食べるのも良いかもしれない。それか、アフターヌーンティーを出すところを調べておこう。
あと、プレゼントだ。プレゼントは何がいいだろう。
私って言われたけど。本当に?リボンを着けて「瑠生さんどうぞ」とか言って引かれたりしないのかな。もこもこパジャマを着れば喜んでくれるのかな。
うーんうーん、と悩んでいると、瑠生さんからメッセージが来た。
『ユイさん、何してた?俺、可愛い、パスケース見つけたの。ユイさん、好きそう。どう?』
写真も一緒に送られてきたのは、パンの絵本のキャラクターのパスケースだった。
「あ。前、この絵本、可愛いって見てたから」
本屋さんに立ち寄ってちょっと眺めただけなのに、そんなちょっとした事を覚えてくれる。この間、ガチャガチャでこのキャラクターの腕時計を見つけ回してしまった。子供向け用なんだろうけど、デスクに飾っている。
『可愛いですね』
そう送って、ニコリと猫が笑うスタンプも送った。
するとすぐに返信が来た。
『でしょ。ユイさんに買っていい?新しいパスケース。子供っぽい?俺は可愛いと思うけど』
『可愛いです。いくらですか?お金は会社でいいですか?』
『ん-。これは俺からのプレゼントね。パスケース、使う時に俺の事、思い出して欲しいから。いやん俺、恥ずかしい』
その返信の後に、チュッと、投げキスのスタンプが送られてくると、メッセージは止まった。
「瑠生さんからプレゼント貰うんじゃなくて、私があげたいのに・・・。しかもそれ、絵は子供向けだけど、値段は子供向けじゃなかった・・・」
ペコリ、と猫がお礼をしているスタンプと、ちょっと恥ずかしかったが、ハートマークを投げているスタンプを送ると、瑠生さんからは、胸を抑えて撃ち抜かれて倒れているスタンプと、『ユイさん、大好き、あー。好き』と送られてきた。
「私も、って。でも、恥ずかしい・・・」
はい、では寂しい。なんて送ろうと、思っていると『また、会社でね。あ、俺の部署、来週から忙しくなりそうなのよ。ユイさん不足になっちゃうかも。メッセージは沢山送っていい?』と追加が来た。
忙しくなるんだ・・・。
『はい。メッセージ、私も送ります。仕事、無理しないで下さいね。瑠生さん、好きです』
ポンっと送った後に恥ずかしくて死にそうになったけど、既読がすぐに付いた。
でもその後、返信はなかったので、携帯を置き、お風呂に行こうと準備をしているとポコンっとメッセージ音が鳴った。
『俺の方が好き、大好き。あ、ユイさん、後で電話していい?一時間位あと』
『はい。一時間後なら、大丈夫です』
『ん。じゃ、また後で』
メッセージを終え、私は、はあ。っと顔を覆うと、赤くなった顔を覚ます様にパタパタと仰いだ。
ゆっくり電話出来るようにと、急いでご飯とお風呂を終わらせて、ベッドの上で瑠生さんの電話を待った。
掛かって来た電話では、瑠生さんの好きな物や欲しい物を聞いてみたが、返事は変わらなかった。
のんびりとした、落ち着いた瑠生さんの声を聞いていると眠たくなってしまい、私の声でそれに気づいた瑠生さんに「疲れてた?ごめんね?眠い?」と謝られたのだが、「瑠生さんの声、聞いていると、落ち着いて眠くなります」と答えると、「俺、喜んでいいのかしら?」と笑われた。
約束に疲れた私に待っていたのは、いつもコーヒーをくれる人でした サトウアラレ @satou-arare
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます