第2話 宿命の始まり
「ピシッ!ピシッ!」
記憶には全くないが、私は無呼吸で生まれた。看護師さんにお尻を叩かれ、やっと目覚めた様だった。
きっとこの先の、過酷な自分の人生を案じて、まだ母親のお腹の中で守られていたかったのかも知れない。
私の家族は、父、母、そして、六歳年下の弟と、四人家族である。
母は、自身が小学四年生の時に養女に出され、そこへ父が婿養子として入ったと聞いてはいるが、本当の事は今だにわからないまま。
住まいは、六畳一間、共同トイレ、共同炊事場、風呂無しと、単身世帯が住んでいるところに、家族四人で住んでいた。
とても、とても、貧しかったが、親の愛情はたっぷり注いでもらい、そのおかげで歪んだ性格にもならず、貧乏家の子供とは誰も思わないほど、ごく普通の子供に、私も弟も育った・・・と、勝手に思い込んでいる。
ただ、やっぱり何かが違う。
普段は、「貧しいながらも楽しい我が家」的な家族だが、「ある事」をきっかけに、一変してしまう、家族。
「ある事」がおきると、子供である私と弟は、泣きじゃくりながら、裸足で家を飛び出すしか成すすべがなく、子供だからと言って、助けてくれる人は誰もいない。
時には、近所の人が、警察を呼ぶ。
弟はまだ小さく、何もわからない。
その弟を抱きかかえ、ただ、この時が過ぎるのを泣きながら、震えながら、じっと耐える。
「世の中は無情」
「自分を守る事が出来るのは自分だけ」
こんな日常に耐えながら、無情さを知ってしまった子供時代である。
そして、その発端は常に「父」だった。
三十八年の十字架 @revinyan
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