三十八年の十字架

@revinyan

第1話 重い・・・そして、想い

「今まで、本当にありがとう」


  色々な想いが交差する中、ありきたりの言葉しか出てこなかった。

母の通夜を終え、東の空に陽が昇り始めた頃、私は独り、三十八年前に背負った重い十字架を、そっと降ろした。

 三十八年間、誰に話す事もなく、ただ一人、自分の心の中に閉じ込め、固く鍵を掛け、決して開ける事がなかった。

開ける事がなかったのではなく、開ける事が罪深い気がして、開けられなかった。

こうして、十字架を背負う人生が始まってしまった。

その「十字架」を、ようやく降ろす事が出来たのが、今。


三十八年前、母が泣きながら書きなぐった遺書を火にくべ、その煙を見ている。

不思議に、心が、体が、解放されていく感覚に陥った。

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