第3話『ロボトミー手術をキミに聞かせてくれるお姉さん』

「ふふっ、おはよう。キミにスリルを味わってもらえる実験をするお姉さんよ」


「…え?前回盛大に致死量の電気ショックを食らっていたって?ふふ、そうね」


「けどミルグラム実験で使われた電気ショックは全部偽物…つまりお姉さんが食らった電気ショックも偽物かもしれないわよ?」


「…え?偽物にしては迫真の演技だった?ええまあ、確かにそういう所もあるかもしれないわね」


「あるいは…お姉さんはパラレルワールドにアクセスする方法を発見していて、前回の出来事は無かったことになっているかも…なんて」


「最も…キミが聞いているのは音声だけだから、どれが正解かは分からないけどね?ふふっ。そもそも並行世界だなんて理論上だけの話だものね」


「まあ、こういった与太話は実験と違って答えがないのが良いのよね」


「ということで前置きはこれぐらいにして…早速今回の実験を始めましょう?」


ンムー!ンムー!(猿轡を噛まされた何者かが叫ぶ声)

ガタンッガタンッ!(椅子に縛られた何者かが暴れる音)


「もー、暴れないの!大丈夫よ、手術はすぐに終わるから♥」


「ということで今回の実験は…ロボトミーよ!」


「え?ロボトミーは実験じゃなくて手術だろうって?もう、細かいことを気にしてたらいい男になれないぞ?」


「ロボトミー…前頭葉白質切截術、ロイコトミーとも言うわねこれがどういう術式かと言うと…」


「簡単に言えば脳の前頭前野の神経線維を切断する…そういった手術ね」


「方法としては…頭蓋骨に穴を開けてアルコールを注入したり、前頭葉に管を注入したり…まあ色々方法はあるけれど、最終的に一番行われていたのはアイスピックを使う方法ね!」


「眼窩…お目々が入ってる空間ね?の上部にアイスピックを差し込んで…そこから前頭葉まで到達させて、脳を切り取るの。ね?簡単でしょう?」


「実際お手軽で簡単っていう言葉に偽りは無くて、この術式ならなんと手術が10分前後で終わっちゃうの!すごーい!」


「そんな手術だから、『ドライブスルー』なんて呼ばれたりもしていたそうよ!素敵ね!」


「結果、約2万件近くものロボトミー手術が実際に行われたらしいわよ?」


「それで…今回はそんなロボトミー手術を…助手ちゃんに施術していきたいと思いま~す!」


ンーッ!ンーッ!(猿轡を噛まされた助手ちゃんが叫ぶ声)

フルフルフルフル(助手ちゃんが激しく首をふる音)


「んも~、そんなに怯えなくても大丈夫よ!手術はすぐに終わるんだから!」


「それに…私、こう見えて医学の心得も多少はあるのよ?」


「…ちょっと、医学の心得があるならなんでロボトミーなんてやるのか、なんて言いたげじゃない」


「実験と同じよ!医学の発展には失敗と犠牲がつきもの…いつも言ってるでしょ?」


「ということで…大人しくしなさ~い?動いたらお目々か脳みそグチャグチャになっちゃうかもね?」


ヒッ(助手ちゃんが怯える声)


「ふふっ、良い子良い子…それじゃあ、手術を始めるわね?」


「ということで…まずは意識を失わせるための麻酔よ」


カチッ(何かの電源を入れる音)

バチッ!(電撃が走る音)

ガタンッ!(助手ちゃんが大きく跳ねる音)


「当時意識を失わせるためには電気ショックが使われていたそうよ?ってことで、それに倣ってみたわ」


「さて…助手ちゃんが意識を失った所で…早速始めていきましょ」


「ということで…まずはアイスピックを突き刺すわね?」


クチャ…(まぶたを持ち上げ、アイスピックを突き刺す音)


「次にハンマーでアイスピックを叩いて…眼窩の骨に穴を開ける」


コッコッコッ(アイスピックをハンマーで叩く音)


「そしてアイスピックを脳組織にまで差し込んで…上下左右に動かす」


クチュ…クチュ…(アイスピックを動かす音)

クチャ…(アイスピックを引き抜く音)


「そしてこれをもう片目でもやれば施術は完了よ!」


クチャ…(まぶたを持ち上げ、アイスピックを突き刺す音)


「うふふ、助手ちゃん、目覚めたら驚いちゃうかな~?」


コッコッコッ(アイスピックをハンマーで叩く音)


「なんてったって、自分が生まれ変わったような気分になっちゃうんだろうな~」


クチュ…クチュ…(アイスピックを動かす音)


「ふふっ、感謝されちゃったらどうしましょ?…なんて話をしていたらもう手術が終わっちゃったわね!」


クチャ…(アイスピックを引き抜く音)


「うーん、目の周りにはあざが出来ちゃってるけど…まあ、手術が手術だから仕方ないわよね!」


「それじゃあ、助手ちゃんが起きるまで待ちましょう?」


……

………


『………う、あ』


「おはよう助手ちゃん、気分はどう?」


『あ………………はい』


「うんうん、大人しい性格になったわね、これは手術は成功と言って良いわね!」


『……………』


「まあ…よく考えたら手術をしなくても助手ちゃんは大人しい性格だったわね。ま、けどそれはそれ、これはこれよね!」


『………………』


「ということで今日のASMRはこれで終わ……あら?助手ちゃん、貴方何を持って…」


ガッ(助手ちゃんが教授に掴みかかる音)


「ちょ、やめ、何して…」


ガシャン!(教授が手術台に叩きつけられる音)

ガシャン!ガシャン!(教授が手術台に拘束される音)


「おーい、助手ちゃん?ねえってば?ねえ!」


『…………ロボトミー手術を受けた患者は、一見穏やかになったように見えました』


『…ですがそれは、脳の大切な部分を失って人格が崩壊しただけに過ぎません、手術を受けた患者のその後は、多くが悲惨なものだったと言います』


『それに、ロボトミー手術は………不可逆な手術です、一度失った人格は、もう元には戻らない』


『もっと安全な向精神薬が開発されたことで、非人道的なロボトミー手術は淘汰されていったんです』


「え、ちょっと何…助手ちゃん、急にどうしちゃっ…」


ザシュ(教授の眼窩にアイスピックを突き刺す音)


「いっ…が、あああああああああ!!!!!!!!!!!!」


『ということで、もっと前頭葉を失ったらどうなるか、教授で試してみたいと思います。大丈夫、死にはしませんよ、多分』


「あ、ん、ぐ……いっ…」


『新しい世界が見れるかもしれませんよ、良かったですね』


ガッ!ガッ!ガッ!(乱暴にアイスピックをハンマーで叩く音)


「んん!あがっ!おご…!も、もうやめ…」


『やめて?私にはやめなかったじゃないですか』


「いや、そ、それは…」


『じゃあ、いきますね』


グチャグチャグチャグチャ(アイスピックで激しく脳をかき回す音)


「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ♥」


『…あ、そうだ。これを聞いているキミは絶対にそんな事はしないと思いますが…今回の実験は非人道的、かつ危険を伴う手術なので絶対に、絶対に真似をしないで下さいね』


グチュ(アイスピックを動かす音)


「お゛っ♥」


『ということで今日のASMRはこれでおしまいです。では、次の実験でまたお会いしましょう。…教授が生きていれば、ですが』


※このASMRはフィクションです

…が、ロボトミー手術の危険性は本当です、良い子の皆は絶対に真似しないようにしましょう

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キミに危険な実験を実況してくれるお姉さん @yumebon

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