第2話『ミルグラム実験をキミに聞かせてくれるお姉さん』
「ふふっ、また会ったわね?キミにちょっとしたスリルを味わってもらえるような実験をASMRにするお姉さんよ?」
「…え?前回盛大に被爆したのにどうして生きているのかって?ふふっ、どうしてかしらね?」
「お姉さんが言った通り、あのデーモンコアは偽物だったのかもしれないし…あるいは、これはあの実験の前に収録しているのかもね?」
「それとも…実はあのお姉さんと『私』は別人かもしれないわよ?」
「最も…キミが聞いているのは音声だけだから、どれが正解かは分からないけどね?ふふっ、正にシュレディンガーのお姉さんって訳ね」
「まあ、前置きはこれぐらいにしておきましょう?今回の実験は…これよ?」
ゴトッ(大きな機材を置く音)
「これ、何か分かるかしら…?ああっ!そ、そんなに警戒しないで?今回のは危険な物質とかじゃないから!」
「これは…まあ、簡単に言えば電気ショックを流すための機械よ」
「で、これを使って何をするかだけど…今回は『ミルグラム実験』をしようと思うわ!」
「ミルグラム実験…あ、アイヒマン実験とも言うのだけれど、これがどういった実験かと言うと…」
「平凡な一般市民であっても、特殊な状況下にあったら非人道的行為を行う事を証明する…と、簡単に説明したらこんな感じね?」
「で、そのために何をするかっていうと…まず、無作為に集められた参加者を『教師』役と『生徒』役に分けるの」
「その後に、2人をお互いの声だけが聞こえる部屋に分けて、教師役は生徒役に簡単な問題を出すの」
「それで…生徒役が問題を間違える度に電気ショックが流されるの…♥」
「生徒役は間違えれば間違える度に電圧が上がっていくのよ…♥」
「…え?それの何処が実験なんだって?もう、説明は最後まで聞きなさいっ!」
「この実験にはもう一人『監督』役が居るの、教師役の人が実験の続行を拒否しようとすると監督役の人が超然とした態度で実験を続けさせるのよ」
「その結果どうなったと思う…?なんと半数以上の教師役が実験を最後…致死量の450ボルトが流されるまで続けたらしいの!嗚呼、人間って怖いわね…!」
「…ということで、今回はこの実験をやっていこうと思うわ!…え?お姉さん1人じゃ出来ない実験だろうって?」
「ええ、そう言うと思って…今回は人を連れてきてるの!カモン!助手ちゃん!」
カチャリ…(優しく扉を開ける音)
「………どうも、助手です」
「この子は私の助手を務めてくれてると~っても優秀な子なのよ~?ということで、今回は私が『監督』、助手ちゃんが『教師』役をやってもらうことにするわね?」
「え………私ですか」
「ええ!『生徒』役の人にはもう部屋の中でスタンバイしてもらってるから、早速実験を始めていきましょう?」
「え、いや………でも………」
「大丈夫、向こうもちゃんと同意してくれてるし…本当に危険なことが起こることはないから…ね?」
「………………わ、分かりました」
「オッケー、それじゃあ…実験を始めましょう?まず最初に助手ちゃんには生徒役の人がどれだけの痛みを受けるかの体験をしてもらうわね?…大丈夫、これはちょっとビリっとするだけだから」
「………分かりました」
「それじゃあ行くわね…それっ!」
バチッ(電流が流される音)
「………ッ!」
「これが45ボルト…最初の電圧よ?ここから徐々に電圧を上げていってもらうわね?」
「………………はい」
「いい返事ね!それじゃあ、ここからが本番よ。助手ちゃん、貴方は生徒役の人に問題を出して…不正解だったらこの電流を流すのよ?」
「…え……いや………でも………」
「流すのよ?大丈夫、体に後遺症は残らないから!」
「は、はい…………」
「ふふっ、いい返事ね!それじゃあ、始めましょう?」
「…………はい。えと………これから私が単語のペアを言います。その後最初の単語だけを言うので………ペアになっていた単語を答えて下さい」
「不正解になる度に電圧が上がるからね~?」
「………それじゃあ始めます………『えっちなお姉さん』、『ASMRの実験』、『柔らかいふともも』、『艷やかな髪』、『潤いのあるリップ』…………なんですかこの単語リスト?」
「あら?私が作った問題に不満が?」
「いえ…………ただ少しセクハラのようだなと………すみません、実験を続けます………では第1問」
「『えっちな』…………『お姉さん』、『お兄さん』、『おじさん』、『女の子』」
ポーン(回答のランプが点灯する音)
「……正解、では次………『ASMRの』………『音声』、『環境』、『実験』、『本質』……」
ポーン(回答のランプが点灯する音)
「……不正解……45ボルトから………」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
ブーッ(電流が流されるブザー)
『……ッ!』
ガタンッ(隣の部屋で椅子が揺れる音)
「ひっ…!あ、あの……教授………」
「続けて?」
「は、はい………次……『柔らかい』………『ほっぺた』、『おっぱい』、「おなか」、『ふともも』…」
ポーン(回答のランプが点灯する音)
「不正解………145ボルト………」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
ブーッ(電流が流されるブザー)
『…ああっ!イッ………!!!』
ガタガタッ!(隣の部屋でより強く椅子が揺れる音)
「ひっ…!」
『なんで、なんで私がこんな目に合わないといけないのよ!出して!ここから出してぇ!』
「あ、あの…」
「続けて」
「………はい。次……『艶やかな』…『女性』、『踊り』、『動き』、『髪』…」
ポーン(回答のランプが点灯する音)
「……ふ、不正解………245ボルト……………」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
ブーッ(電流が流されるブザー)
『ああああああああああ!!!!!!!!痛い!痛いぃ!!!!!!!!!』
ガタガタガタガタッ!(隣の部屋でより強く椅子が揺れる音)
「ひぃっ!きょ、教授…もうこんな…やめましょうよ!」
「駄目よ、実験はまだ途中なんだから」
「な、なんで…」
「早く」
「………………はい。つ、次………『潤いのある』…『唇』、『肌』、『リップ』、『瞳』…」
ポーン(回答のランプが点灯する音)
「…不正解………345ボルト…………」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
ブーッ(電流が流されるブザー)
『ーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!』(声にならない叫び)
バンッ!(壁を叩く音)
バンバンッ!(強く壁を叩く音)
「あ、あの…」
『もうやめて!こんな、こんなの…!早く実験を中止してぇ!!!!!』
「きょ、教授、生徒役の人もこう言ってますし…実験の中止を………」
「なんで?」
「な、なんでって……」
「実験はまだ途中よ、続けて」
「……………では次…………『豊満な』…『体』、『胸』、『心』、『肉体』…」
………ポーン(一呼吸置いて回答のランプが点灯する音)
「…不正解、450ボルト………これが最大の電圧です………」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
ブーッ(電流が流されるブザー)
…………(しばし無音の空間が流れる)
「……………あの、最大の電圧が終わりましたが…」
「続けて?」
「え…………」
「最大の電圧が3回流れるまでが実験よ?」
「あ…えと……はい……………次……『熟れた』…『果実』、『体』、『マンゴー』、『桃』…」
………(無音の空間)
「…未回答は不正解とみなします………450ボルト」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
ブーッ(電流が流されるブザー)
…………(しばし無音の空間が流れる)
「………あの…生徒役の反応が…」
「まだ2回目よ、続けて?」
「…………次……です、『危険な実験を実況してくれる』…『お姉さん』、『お兄さん』、『メスガキ』、『幼馴染』…」
………(無音の空間)
「………未回答、不正解ですね…450ボルト」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
ブーッ(電流が流されるブザー)
…………(しばし無音の空間が流れる)
「……………あの」
「お疲れ様!これで実験は終了ね」
「あ、あの…!生徒役の人は…」
「うーん、そうねえ…それじゃあ、一緒に見に行ってみましょう?」
「え…?」
ガチャ(扉を開ける音)
「あ、お疲れ様です~」
「ええ、お疲れ様」
「………え、何で…無事………?」
「ふふっ、助手ちゃんには言ってなかったけど…この実験、実は生徒役と監督役はグルなのよ」
「え………?」
「実際には生徒役の人に電気ショックは流されていないし…そもそも、この機械だってラットとかの実験用だからそんなに大きい電流は流せないの」
「じゃ、じゃあ生徒役の人が暴れてたのは…」
「勿論全部演技よ?そもそも、この実験で見てるのは…助手ちゃん、貴方の反応なんだから」
「わ………私…………ですか?」
「ええ、そもそもこの実験の目的が『他人に苦痛を与える際の反応』…『命令に従う心理』の実験なんだから」
「え………そ、そう……なんですね」
「ええ、その点で言えば助手ちゃんは非常に優秀ってことになるわね!流っ石私の助手なだけはあるわ♥」
「…………」
「ということで今日のじっ…ASMRはこれで終わりっ!」
「あ!最後に一つだけ!今回の実験は危険は無いけど…と~っても非人道的だから…絶対に真似しちゃ駄目よ?」
「それじゃあ、そろそろ切……あら、助手ちゃん?なんでそんな目で私を椅子に縛り付け…………」
バチッ(電流のスイッチを入れる音)
「ア゛イ゛イ゛ッ゛!?!?!?!?!?ま、また次の実験で会いましょ………ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ッ゛!!!!!!!!!!!!!」
※このASMRはフィクションです
この実験は肉体的な危険はありません…が、非人道的な実験に変わりはありません
また、本当に電気ショックを流すのは大変に危険ですので良い子の皆は真似しないようにしましょう
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