番外編 決意 (アルダム視点)
そう告げる私の口元に浮かぶのは、自嘲の笑みだった。
今でもあの日のことは思い出せる。
ドリュード伯爵家の婚姻に支援者を探しに行った時、見つけた泣きじゃくる花嫁の姿を。
「……本当に偉そうなことを言ったものだ」
これでライラが救われたというのも、語弊があるだろう。
何せ、私はただ口を出しただけ。
状況を変えたのはライラ本人で。
そんなライラに救われたのが私なのだから。
今でも、目を閉じれば私はすぐに当主になる前の生活を思い出せる。
ぼろぼろで部下がいながら、明日食べるものさえ確保できていない日々を。
ずっとずっと戦ってきたから私は知っている。
どれだけガズリアという男が恐ろしい存在かを。
魔獣暴走の際、ガズリアの名前は確かに下がって私の名前は有名になった。
ただ、それだけなら私がこうしてガズリアを失脚させることはできなかっただろう。
……そう、ライラの手助けがなければ。
──ねえ、貴方。獣の森を本気で潰してみない?
楽しげに悪巧みを持ちかけてきたライラの顔。
あまりにも美しいその顔を私はまだ覚えている。
あの時の面影を見つける方が難しいほどに美しくなったライラの顔を。
「あれからもう、どれだけ経つんだろうか……」
そう言いながら、私はスリラリアの方へと目をやる。
今も激務の中にいるだろうライラの方へと。
「……貴女はフードの時の私がアルダムだと知る由もないでしょうね」
ガズリアの恐ろしさも知らず、天狗になっていた頃の馬鹿に着飾った自分。
そして、ライラと出会った時のガズリアに追い詰められ、今後がなにも見えなくなっていた時の私。
自分でも、その姿を区別するのは難しいと思ってしまうほどなのだから。
成長していないとは言わない。
特に、ライラが好きだというフードをかぶったときの私、それはあまりにも未熟だった。
けれど、今の方が圧倒的に情けない姿をさらしていることを私は理解していた。
それを思い出しながら、私は改めて決める。
これからの方針を。
「……絶対に私がフードの男性であることは隠しきろう」
──少なくとも、ライラが私のことを好きになってくれる、その時までは。
◇◇◇
更新空いてしまい申し訳ありません……!
少し更新頻度落ちると思います。
ただ、もう少しで完結予定になります!
旦那様、離縁の準備ができました〜才女が限界を迎えたら〜 陰茸 @read-book-563
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