第20話 終戦
愛宮さんと一途川さんに殴られ、吹っ飛んだ十六夜君は地面に突っ伏した。
「 はぁ〜。マジ冷めたわ、最悪」
愛宮さんはそう呟くと、不機嫌なまま教室を出ていってしまった。
十六夜君が犠牲となったが、愛宮さんと一途川さんのガチ喧嘩はなんとか収まったようだ。
しかし……。
「 ねぇ、紫電君。あの女に告白されたからって、目移りしたりしてないよね? もちろん私が一番だよね? あんなクソブスより私の事の方が好きだよね?」
一途川さんが僕に問い詰める。
「 も、もちろんだよ……」
「 そうだよね! 良かった!」
僕は適当に答え、一途川さんに笑顔が戻った。
と、思ったのだが……。
「 で? あんた達だれ? なんでここにいんの?」
一途川さんは山君と十六夜君に向けて言葉を発した。
「 え、えっと……それは……」
山君はとても答えにくそうだし、十六夜君に至っては地面に突っ伏したままだ。
どうする?
助け舟を出したいが、なんて言えばいいんだ。
僕が言葉を詰まらせていたその時、十六夜君が立ち上がりながら口を開いた。
「 奈緒ちゃん……俺と山は、紫電と奈緒ちゃんの後をつけてきたんだ」
「 は?」
まずい! 何正直に話してるんだ!
僕はそう思ったが、十六夜君は話を続ける。
「 俺たちが後をつけてきた理由……それは、紫電と奈緒ちゃんを見守るためだ!」
「 は? 見守る? どういう事?」
一途川さんは十六夜君に聞き返した。
「 紫電は俺のダチだ。ダチの恋を見守り、応援するのは当然だろ?」
その言葉を聞いた一途川さんの表情が少し和らいだ。
「 あんた……私と紫電君の事を応援してくれるの?」
「 当たり前だ。俺は2人の恋を応援してる!」
「 あんた……ただの変態カス野郎かと思ったけど、実はいい奴なのね!」
「 あんまほめんな。照れるだろ」
何やら十六夜君と一途川さんが勝手に話を進めているが……。
は?
何言ってんの十六夜君。
応援するって何?
君、一途川奈緒って知ってる?
" 超絶超愛 一途川" って知ってる?
狂人ランキングって知ってる?
僕は十六夜君にそう聞きたかった。
だが、一途川さん本人がいるこの場所では聞く事はできない。
僕は黙って話を聞いていた。
そして、十六夜君が僕の方へ近づいてきた。
「 紫電、お前には勿体無いくらい奈緒ちゃんはいい女の子だぜ。大切にしてやれよ?」
「 え? あ……」
言葉に詰まった僕に、十六夜君はさらに耳元で呟いた。
「 自作の曲を歌ったり、上履き舐めてもお前の事を大事にしてくれるんだ。あんな女、中々いないぜ?」
「 やっぱり、見てたんだよな……」
「 ああ、バッチリな。でもまさかお前にそんな趣味があったなんて驚いたぜ。まあ、他の奴らには内緒にしといてやるし安心しな」
「 あのさ十六夜君、それについては理由があって」
このままだと誤解されたままなので何とか誤解を解こうとしたのだが……。
「 言い訳なんてしなくていいさ紫電。俺たちダチだろ?」
全然人の話聞かねーなこいつ。
「 いや、だから……」
「 ちなみ俺は、しゃぶるなら上履きじゃなくて靴下かな」
「 何言ってんの?」
十六夜君が意味の分からない事を言い、僕に背を向けた。
「 よし、帰るぞ山。俺たちはお邪魔だからな」
「 え? ちょ、ちょっと」
十六夜君は山君の腕を掴み教室を出ていった。
色々めちゃくちゃだったけど、愛宮さんと一途川さんの喧嘩も無事に終わったし結果オーライ……なのか?
僕が一途川さんの方に視線を向けると、一途川さんは笑顔になり、口を開いた。
「 さすが紫電君の友達だね。ちょっとおかしい奴だったけど、私たちの事を応援してくれるいい奴じゃない!」
「 ま、まあ、いい奴ではあるんだろうけど……」
十六夜君はいい奴だ。
確かにいい奴なんだが、色々残念なんだよな。
というか、今になって山君と十六夜君に自作の曲歌ってるところと、上履きしゃぶってるところ見られたの恥ずかしくなってきた……。
思い出して恥ずかしくなっている僕に、一途川さんが声を掛けた。
「 色々あって、お昼休みあと5分もない! お箸も教室から持ってきたし、早くお弁当食べないと!」
恥ずかしい思いをした僕はヤケになっていた。
「 うぉー!! 箸なんていらねぇ!! 素手で食ってやるぜ! ムシャムシャクチャクチャ!」
気が付けば、僕は今後やる予定であった、イカれた行動その③『食べ物を撒き散らしながら素手で食う』を発動していた。
だが、相手は一途川さん……。当然嫌われる事はなく……。
「 紫電君、ワイルドでかっこいい!!!」
僕をひたすら褒めるのだった。
告白中毒のイズナ 〜狂人ランキング上位の美少女 "告白中毒のイズナ" さんに告白されたんだが〜 士流 @supershiryu777
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