第五話 探すのは大変っ!

「えっ、これじゃあ無理じゃない?俺、頭悪すぎて分からんよ」

「秋さん、僕も分からないよ…。『season dictionary』のページが破れているから…」

「そうなんだピョン……これはピヨ達のおばあちゃんのおばあちゃんの、おばあちゃんの……」

「いや、もう言わなくていいよっ!?」


 私はすかさずピョンピヨちゃんにツッコむ。

 『season dictionary』の紙は、もう黄色になっちゃっている。だから年数が経っているのは分かるんだけど……。そこじゃな――い!


「倒さないといけないんでしょ?なら、倒す方法を考えなきゃっ」

「んだっ…」


 偲杏ちゃんが同意するようにうなずいた。『んだっ』は………東北弁?もしかしたら偲杏ちゃんは東北出身なのかもしれない。さっきから暑そうに手をパタパタしている。

 ワンピヨちゃん達が申し訳なさそうに私達を見た。

 う~ん、ワンピヨちゃん達は悪くないからなぁ……。何か申し訳無いよぉ。

 

「と、取りあえず……今日は解散しよう?明日またここに集めてもらっても良いかなぁ、ニャンピヨさん達」

「そうですニャッ…」

「なら、また明日なっ!」


 私は皆と分かれて、家に戻った。

 


❀☀☽☃❀☀☽☃



 ミリから借りた本を読みながら、ワンピヨちゃんに言われた場所に来た。

 あの日から一日。一日寝て、籠に捕まえるまでやれば良いかなぁと思ったんだ。

 この本、ミリから借りたのは半年前。ミリの圧が怖………すごかったから勢いで借りちゃったんだよね…っ。 

 私はファンタジー小説『魔法が使えないけど、魔法使い』を読む。ザッと目を通しておかないと、ミリに感想を言えない。


『私は魔法が使えない。でも、私達には勇気と知恵という魔法ちからがある。』


 その言葉が私の心に突き刺さった。

 勇気、かぁ。悪季の倒す方法が分からなくても、考えれば良いんだ!『season dictionary』に頼らないで、私達で考えなきゃ!

 すると、コツコツと靴の音がする。


「あっ……火花先輩っ」

「お~っ、偲杏ちゃん!」


 私は偲杏ちゃんに駆け寄る。すると少しだけ肩を震わせた。あっ、怖がわせちゃったかな?

 『先輩』と呼ばれたのは初めてだから、ちょっとくすぐったい。


「先輩って呼ばなくて良いよ~、えへへっ」

「あっ………分かりましたっ…」

「お~いっ、早く作戦を立てよう—―」


 秋君も雪君も来たみたい。ワンピヨちゃん達を連れて、私達の方へやって来た。

 私達の前に、ワンピヨちゃんは一冊の本を置く。昨日見た『season dictionary』。その中を見ても、何か手がかりらしいものは無かった。


「これから、どうする?」

「そうそう籠に悪季を入れてから考えよう!じゃないと考えているだけでも時間かかっちゃうし、季節の宝石を早く取り戻さないといけないよっ」


 私がこぶしを握り締めると、三人はコクリと首を縦に振ってくれた。ワンピヨちゃん達も何も言わずに私達の会話を聞いている。

 なら、悪季探しを始めないと!


「悪季は、植物の本体を噛んで、植物を枯らすんだワンッ。最近、この近くでひどく植物が枯れているから、近くの木などをよく見るワンッ」


 そう言われて私は近くにある木を見てみた。これは……あっ近くに種類が書いてある。杉の木だ!木に横向きで傷が付いているだけで、何か変わりは無さそう。

 でも……こんな傷跡、あったかな?家の近くだからあんまり気にしてないだけかも。ちょっと考え過ぎちゃったよ、エヘヘッ。

 

「あっ、何か巣みたいなものがある!俺ゲームやりすぎて目が悪いからぜーんぜん見えないけど、カラスの巣?」

「そうみたいだね……僕は分からないなぁ。偲杏さん、これカラスの巣?」

「えっ………あ….」


 雪君に尋ねられて、偲杏ちゃんはオロオロ。

 天使みたいな笑顔を浮かべていた雪君も、一緒にオロオロし始めちゃった。あ、アハハッ……私ならもっと大失敗してるから雪君が一番年下に話かけやすいね。

 偲杏ちゃんだけ小学六年生だもん。


「わ、分からないです…」


 偲杏ちゃんは、ショボンと落ち込むように答えた。

 

「ま、まあ、そんなこともあるよな!でも、季節が無くなって結構経ってるから、きっとこれは悪季の巣じゃないかっ!?」

「そう、かも………しれませんっ…ね」

「そうだね、僕もそう思うよ」

 

 偲杏ちゃんは自分の意見を言おうとしないけど、しっかりとうなずいたくれる。それを見て、雪君はニッコリ笑った。

 悪季の巣、かもしれないっ。

 そう思った時、秋君が木に手をかけた、と思ったら手に力を入れ木に飛び移った。ヒョイヒョイと身軽に巣の所まであっという間に上っている!すごいっ、速い!


「危ないですよっ、秋君は僕より運動神経は良さそうだけどダメですよ~」

「大丈夫、大丈夫、俺は小さいから~っ。卵は無さそう!」


 秋君、すごい!私も出来るように頑張らないと~、帰ってランニングでもしようかなぁ。

 私は木から下りて来る秋君を見つめる。


「次はここからどんな動物か当てて、籠に入れるワン」


 はぁ、道のりは遠いなぁ……。

 次はどんな動物かを考えないと。うーん、巣はあるのに卵は無い?巣はちょっと小さい。木には傷がいっぱい。うーん、難しいよぉ!だよっ……!

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四季の宝石を取り戻せ!~季節がこの世界から消えたなら~ 石川 円花 @ishikawamadoka-ishikawaasuka

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