第6話


「何とか間に合ったか」

「う、うん」


湊音と話していたら時間が無くなっていて、慌てて戻ってきたのだがギリギリで間に合ったようだ


「遅かったな、もう準備できてるぜ。」


訂正、間に合ってなかった。7時に待ち合わせが30分も過ぎてた。


「すいませんでしたー」


どうよこの見事なスライディング土下座。


「あ、抜け駆けした。」


後ろでほざいている奴がいるが聞こえなかったことにしよう。


「お前らしいがな、別に気にしてないぜ、ちゃんと持ってきているのならな。」

「それは大丈夫だ、たくさんあったぞ。」


そう言って俺と湊音は乾パンやら缶詰やら米などを見せた。


「たくさんあるわね」

「ほんとだ、ってなんで精米してない米あるの?意味ないんじゃ。」


「あっ」「え?」


俺は湊音のほうを見るが湊音のほうは俺を見ていた。


「これは湊音のほうが……。」


「蓮だよ」

<マスターです>


「……」


にしても何でヘカテまで言うんだよ。


「なんか、蓮って抜けてるときあるよな」

「同感だわ」

「それはそうとして、さっさとご飯食べよう。昼食べてないんだから。」

「そうでしたー」


 おぉ飯だ。保存食とはいえど、結構疲れていたのでいつもより飯が美味しく感じた。




 ご飯を食べ終わった後、誰かが外に出ようという提案をした。そんなわけで外に出たのだが、あたりには満遍なく散りばめられた星があった。


「わぁ、奇麗だね」

「凄いな」

「…きれいだわ」

「光がないからこんなに見れるのか。」


やろうと思えば火をつけることもできた。しかし、それだと魔物に発見されかねないということでやめたのだ。これを見ると正解だったことがわかる。


「凄い」


星空を見ていると心が洗われる気がする。そんな気分だったからなのだろうか。悩んでいた話が口から出てしまった。


「こんな時だけどさ、これからのこと話そう」

「いいぜ」


「これからみんなはどうするんだ。おそらく世界の法則が変わっているけど。」

「俺はこの辺りに生き残っている人を集めて文明を復興させたいかな。」

「昼間、私たちも話し合ったけどそんな感じかな。」

「そうか……、湊音は?」

「僕も同じだよ。」


やはり、みんなは地域を復興したいのか。

だが、俺は。


「そういう蓮はどうなんだ?」

「これが俺が悩んでたことでね。俺個人としては旅に出たいんだ、元々高校を卒業したら世界を回るのが夢だったしな。」

「確かにそう言ってたわね。」

「旅をしながら、生き残りと出会えって彼らを助けたい。どうやら俺にはそれだけの力を手に入れることができたようでね。」


炎を小さく出現しながら静かに蓮がいう。

その間、仲間は何一つ物音を立てていなかった。


寝っ転がり、空を見上げる蓮を見ながら仲間は同じことを思う。


「蓮らしいね、いいと思うよ、明日にでも行けばいい。将来の夢だったんでしょう?」


梓が言うと、全員が頷いた。



「だが、地域を復興するのには人が必要だろう?」


蓮がいうが、裕也が笑いながらそれを否定した。


「俺たちだってこんな能力を手に入れたんだ。他にも強い能力を手に入れた人はいるだろうから大丈夫だろ。それに、戦闘職が何人もいたところでタダ飯くらいになるだけだ。」

「そうか…」


突然、はっきりと見えていた星がボヤけて見えなくなってしまった。

それを不思議に思いながらも蓮はその目を擦る。


「それに俺の【押圧者】っていうのは、廃材を固めて資材にもできるらしくてな。どうせ残るんだったら俺の方が百倍役に立てる。」

「裕也のくせにいいこと言うんだな」


どうしようもなく嬉しいはずなのに出てきたのはそんな言葉だけであった。


「くせにとはなんだ、くせにとは」

「まるで裕也じゃないかのようだなww」

「なわけあるかい」


みんなで笑う。だが、俺はその時裕也の笑顔に少しの寂しさを感じてしまった。

思わず2度見するがその時にはそんな面影などなく陽気に笑っていた。

どうやら思い過ごしらしい。


「さて寝ますか、明日に問題が出たら困るしな。」

「ふぁー」

「おやすみ。」


ヘカテのみがそのようすを見守る中で、夜空には赤く染まった大きな月が昇っていた








昨日はよく眠ることが出来た。と言ってもみんな交代制で寝たのだが。寝てる間に殺されたんじゃまずいしな。

と、言いたいところなのだが。全員眠ってしまっていたらしい。

ヘカテがいて本当に助かったようだ。



「よく寝たな。今日は何時に行くつもりなんだ?」

「ああ、裕也か、そろそろ行くよ」


昨日市街地を漁って得たバックに物資を入れながら出発の準備をしていると、いつの間にか起きていた裕也が声を掛けてきた。



裕也が若干寂しそうな顔をしながら言葉をつなぐ。



「そうか、準備はできたのか」


昨日の内に準備した食料も忘れずに入っている。


「OK」

「そうか、ならさっさといけ、他の皆が起きちまう」

「ありがとう、そして行ってきます」


後ろに手を振って蓮が丘を駆け下っていく。


「じゃあな……」


みるみる遠ざかっていく蓮の背中を見ながら、寂しそうに呟いた。

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拝啓 異世界地球へ。 八咫 @yatagarasu_16

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