知れる答えと知らない答え

一人旅から帰ってくるとスーツケースを開き衣類を全て洗濯機の中に投げ入れた。

スマホの充電器などの必要最低限必要なものを取り出すとソファに座り込んだ。

旅行中に天気がいいのは嬉しいがこうも炎天下での移動が多いとやはり疲れが溜まったようで、片付けの続きをする気が起きなかった。

それでも明日の準備だけでもと思い、買ってきた職場へのお土産を通勤用のバッグに移そうとスーツケースを再度開くとなにやら見慣れないものがそこにはあった。

「こんなもの買ったかな…いや、そもそもこれなんだ?」

そんな独り言を呟きつつ頭の中で旅行を振り返るが全く思い出せない。

お酒を飲んだ時にでも露天商から買ったのだろうか。

それは四角い正方形の箱の形をしていて軽い木のような材質でできていた。

どうやら中に何かが入っているようで振るとカタカタと音がする。鍵穴と蝶番がついており、おそらく開けられるようではあるのだが、力を入れて引っ張ろうがうんともすんとも言わなかった。鍵のようなものも荷物の中には見当たらない。

中身がどうにも気になり開ける手段を考えたがどうやっても開けられなかった為、倉庫からマイナスドライバーで壊してみることにした。

蓋との境目にある溝にドライバーを差し込み、上から金槌で少しずつ打ちつけて行った。

数回叩いたところでバキッ!っと木が割れる音がした。続けて金槌を何度か叩いたところ、箱は完全に真っ二つになり、勢いで中から何かが飛び出して行った。

机の下に転がっていったそれを手にとるとどうやらそれは何かの鍵のようだった。

完全に破壊された箱にも鍵穴があったことを思い出し、差し込もうとしてみた…がどうやらそれとも違う鍵のようだった。ホテルの備品でも持って帰ってしまったかと一瞬疑ったがホテルの部屋はカードキーで思い当たるようなものはなかった。

何の鍵かもわからずもはや手詰まりとなった。

開けられない箱の中身を知ってしまったことでこの先答えを知ることが出来ないであろう問題が発生し、私はなにか取り返しのつかないことをしてしまった気持ちになってしまった。

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フィクション日記 津和崎タオ @tuwazakitao

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