神の夢

 目を覚ましたらそこには神様がいました。


「あなたの夢はなに?」


「この世界を平和にすることですよ。」


「そう。」


***


 ある日、世界を破壊して回る神に出会いました。


「なぜ世界を破壊するの?」


「やり直すためですよ。」


「この世界を平和にすることが夢なんじゃなかったの?」


「……私と平和は相容れない存在なんです。だから、私という存在を忘れてもらうために全てを破壊するほかない。この世界は、知性を持った生物にとっては神秘的すぎる。どれだけの賢人であろうと、最後には神の存在に縋ってしまうほどに神秘に満ちている。……私はこの世界が好きです。けれど、それと同時に残酷だとも思います。だから、せめて私が終わらせるのです。誰も同族を憎まずに、私だけを憎みながら終われるように。」


「……あなたはそれでいいの?」


「……神としてでなく、平和そのものとして生まれてきたかった。生きとし生ける者達が、自分がそこにいるだけで生きている意味があるのだと、そして、他者も同様にそうであると思える存在になりたかった。」


「……そう。」

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